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第22話 絶体絶命

 マリーゼは、フランソワと並んでアレグレット侯爵夫人(フランソワの母)が休まれている部屋へ向かった。


「侯爵夫人、失礼します」


部屋へ入るとアレグレット夫人が、侍女クロエがいれたお茶を飲んでくつろいでいる。


「まあ、2人とも来て下さったのね。座ってお話ししましょ」


「あらららら、お母様、着替えたのではなかったのですか?」


フランソワは、侯爵邸を出た時と同じドレスの侯爵夫人を見て首をかしげた。


「もしかして」


「はい、マリーゼ様の思っている通りです」


侯爵夫人がにっこり笑って、座ったままでドレスの裾をふんわりと持ち上げた。


「パールコートドレスを着て下さったんですね」


侯爵夫人のドレスは、上品な深い緑色の絹タフタ。


縁飾りと2段のパゴダ型の袖で、高位貴族の為に作られた伝統的なモチーフをほどこしたパールコートのドレスだった。


「それなら、ワインで濡れなかったのでは」


「ふふふふ」


フランソワの言葉に、侯爵夫人は楽しそうに笑っている。


「ローザ嬢が、マリーゼ様に悪戯をしたようですので話を合わせましたのよ」


「侯爵夫人、さすがですわ」


「でも少しおかしくないですか?あのお2人とマリーゼ様に関わりなんて、ありませんわよね?」


フランソワは、2人がマリーゼに悪戯をしてきた理由が分からないと言う。


「そうね。男爵令嬢と騎士爵令嬢が、子爵令嬢に堂々と嫌がらせなんてしますかしら?」


侯爵夫人の言葉に、マリーゼはうなずく。


「つまりまだ黒幕がいて、あのお2人よりも高位貴族の可能性が高いって事ですわね」


マリーゼは冷静に状況を分析してみせた。


「護衛を付けますか」


「危険を避けても、護衛のいない時に狙われるくらいなら、皆様がいる今日が理想的ですわ」


「マリーゼ様、悪役令嬢の活躍ですわね」


「勿論ですわ。私、やられたらやり返すをモットーとしておりますの」


「私も一緒に行きますか?」


ああ、フランソワも悪役令嬢軍団として活躍したいのですわね。


「ここは私の屋敷ですし、そんな暴力をふるわれたりはしないでしょう。だったら1人の方が、敵もおびきやすいですわ」


「マリーゼ嬢、何か困った事があれば相談にいらしてね。私もフランソワもあなたの味方ですからね」


母親と同じ年代の女性に、心から心配されたのは始めてだったので、嬉しい。


マリーゼは、何だか胸の奥がジーンと温かくなるのを感じていた。


「ありがとうございます」


マリーゼは、貴族令嬢らしくドレスを摘まんでお辞儀をした。


「では行って参ります」


◇◆◇


「少し風に当たろうかしら」


マリーゼがわざと庭に出てきたところで、リナ▪カヴァリエ伯爵令嬢が立ちふさがる。


そしてリナ嬢が、親しげに声を掛けてきた。


「まあマリーゼ様、今日はご招待頂きましてありがとうございます」


いえ、あなたの事を招待した記憶はございません。


「こちらこそ、来て頂けて嬉しいです。では」


直ぐにその場を立ち去ろうとすると、腕を組まれて庭に誘われる。


「確かここら辺に友人が待っているはずなので、一緒にお話し致しましょう」


リナ嬢はキョロキョロ辺りを見渡して、友人を探しているようだ。


「リナ様、分かりましたから、腕を離して下さいませ」


マリーゼは、リナ嬢が行く後に付いていきながら、周りにどれ程の招待客がどこにいるか確認しながら歩く。


「あの子達、どこに行ったのよ」


一周して、庭の開けた所に明かりの灯された噴水があり、マリーゼは立ち止まる。


「リナ様、私にお話がないのであれば、ホストなので広間に戻りたいのですが」


マリーゼは丁寧な口調で断りをいれた。


「もう、いいわ。他の子達もあなたに話があったのだけど、私が代弁するわ」


他の子と言うのは、エレーヌ嬢とローザ嬢の事だろう。


リナ嬢は計画していた事が上手くいかずに、焦っている口振りだった。


「私にお話がある方がいらっしゃらないのに、代わりの方がお話しされても、解決しないのではございませんか」


丁寧な口調とは裏腹に、マリーゼは斜め45度から皮肉たっぷりにリナ嬢を見返した。


「ちょっと、子爵令嬢になったからって、生意気よ。私は伯爵令嬢なんですからね」


「えっ?私が何を言ったと言うのですか?」


マリーゼは、身に覚えのない事を言われても困りますと、すっとぼけた。


「ヨーク様やマーティン様が、あなたに優しいのは妹だからよ」


「はあ」


それが何か?


「いつまでもあなたがベッタリくっついていたら、お2人とも迷惑なのよ」


「お二人と赤の他人のリナ嬢に、何か関係があるのでしょうか?」


「あなたが邪魔しなければ、私達にだってチャンスがあった筈よ」


その時、淡々と話すマリーゼに、リナ嬢が我を忘れて手を出してしまう。


肩にリナ嬢の手がかすめた瞬間、マリーゼは目線だけで辺りを見渡す。


そしてリナ嬢の声に人が集まったことを確認して、後ろの噴水に倒れ込んだ。


「きゃあ、誰か」


それを見ていた招待客の誰かが声を張り上げた。


「何があったんだ」


近くにいた者、声を聞いて駆け付けた者が、固まっているリナ嬢に視線を移す。


「リナ嬢、大丈夫ですか」


リナ嬢に言われて飲み物を取りに行っていた婚約者のアダン▪エロール卿が駆け付けた。


「私は何もしていません。それなのにマリーゼ嬢がいきなり倒れたんです。本当です」


「分かってます。あなたはそんな事をする方じゃない。相手はあのマリーゼ嬢でしょう。怪我はないですか」


アダン卿は、やみくもに婚約者のリナ嬢を気遣って見せた。


まさか真っ先に現れるのが、リナ嬢の婚約者だとはマリーゼも思わなかった。

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