67/赤い太陽
この数年、ステラには魔人が現れることはなかった。魔物は時折り街に姿を現すものの、魔人が出現することはもうない。
それは、新たな王であるモルガーナさまのおかげなのである、というのがヒトビトの口癖だった。
厳しく冷酷な王。けれども彼女のおかげで、ステラには平穏が取り戻された。ヒトビトはその存在を恐れてはいるものの、感謝も十分にしていた。
たとえ毎日が、変わらないものなのだとしても。それでも明日が平和であることは、確定しているのだから。それでいい。それでいいのだと、言い聞かせているだけなのだとしても、その日々は確かに幸福なものであった。
ヒトビトはモルガーナを恐れている。それは彼女がアステールと変わらず学問や文字を厳しく取り締まっていることが原因の一つとなっていて、それだけではなく、ステラに問題が起これば放たれる赤い太陽と呼ばれる存在のせいでもあった。
赤い太陽と呼ばれる少女は時折り城から放たれて、魔物たちを狩り尽くす。警備隊の助けにもなっているそれは、けれども容赦のないその在り方から警備隊たちからも恐れられていた。
城の奥。ダレもいない部屋に少女は閉じ込められている。そうしてステラを救うため、ステラの平和を守るためだけに、時折り外に出ることを許されていた。
セミロングの白髪に、燃えるような赤い瞳。
コツリコツリと、足音が彼女の部屋へと近づいてくる。彼女は足音が近づいてくることに気がつくと、仕事が与えられることに、自身の慕う王が来ることに喜び胸を躍らせる。
足音が、部屋の前で止まる。
そうして、ぎい、と重たい扉が開けられた。
「——仕事だ、紅鏡」
ゆっくりと、紅鏡と呼ばれた少女は声の主をたしかめる。
そこには、冷たい瞳をした空色の髪の王がいた。




