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38/学者たち、その答え

「——これが、私たちの見つけた答えです」


 その言葉を最後に、玉座の前に集まった学者たちはしんと静まり返った。もうこれ以上語るべき言葉は持ち合わせていないのだろう。

 自分たちの見つけた事実ははたして真実なのか。それだけを聞くために、カレらは各地からわざわざこの場にやって来た。

 カレらの見つけた事実。

 ステラの外には別の世界が存在していること。その世界は星と呼ばれる球体の上に成り立っていること。星がなければ世界は存在できないこと。このステラも星の上に広がっているであろうこと。けれどもその星は外の世界のものと同一のものではないであろうこと。なぜならステラそのものは、外の世界の土台となっている星の内側に存在しているであろうと考えられるから。

 そしてなぜステラが他の世界とは違う場所に存在するのかというと、それは。

 代表としてわたしに研究を発表していた学者が、黙り込んだままのわたしに向かって恐る恐る口を開いた。


「……アステールさま。この世界は、本当に仮初のものなのでしょうか」


 青い顔をしたまま、学者はカレらが最も確認したいであろう事柄を口にした。

 ステラは他の世界とは違う。この世界は、おそらくは他の世界の模倣品でしかない。なぜそんなものがあるのか。外の世界のための実験空間なのではないか。

 それが、学者たちの考え出した結論であった。

 ニンゲンとは恐ろしいものだ。大した情報も与えていなかったのに、自分たちで知識を積み上げて恐るべき場所へと到達する。それは素晴らしいことではあるが、だが、知りたくもなかったことを知ってしまうことになる場合もある。今、この時のように。

 ここで、それは違うと答えればカレらは安心して自分たちの職務に戻るのだろう。だが戻って再び研究を始めれば、いずれまた同じところに辿り着く。そうしてわたしが嘘をついていることに気がついて、カレらは深く絶望するのだろう。


「……ああ、それは、真実だ」


 わたしの答えに、学者たちはああ、と落胆とも納得とも取れる声を漏らした。

 心の底では、認めたくなかったのだろう。

 当然だ。自分たちの住む世界が偽物、模倣品でしかない。ならばそこに住む自分たちはなんなのだ。所詮は偽物で、作り物なのか。この生命になんの意味があるのだ。

 そう、思わずにはいられないはずだ。


「……これからの対応はわたしが考える。その真実を発表はするな。明日には結論を出す。それまで、城の部屋を貸す。そこでしばらく待て。帰ることは許さぬ。分かったな」


 わたしの言葉に、学者たちは頷いて王の間から去っていった。

 さて、どうしたものか。

 黙っていろ、と言えば従いはするだろう。だからといって、ずっと隠し通すことはできまい。これまで積み重ねてきたものがあるのだ。いずれまた、真実に到達するモノが出てくる。

 知られるべきではない。知らせるべきではない。

 真実を知れば、民たちはどうなる。少なくともこのまま、平穏なままではいられない。いられなくなる。

 ならば。ならばいっそ。


「仕方のないことだ。こうするしかないのだ。ああ、もっと早くに学問など禁じておくべきだった」


 土地につなげた魔力器官を起動して、各地に声を届ける。学者たちは速やかにステラの城へ来るように。一人残らず、全員この城へとやって来るように、と。

 各地にいた学者たちが全員集まるのに、一週間ほどがかかった。

 真実を明かした翌日には結論を出すと述べておきながら、結局対応をするまでには七日ほどかかってしまった。城に滞在していた学者たちは文句の一つも言わず、大人しく待っていてくれた。

 そうして王の間に、溢れそうなほどの学者たちが集まった。扉を閉めさせ、結界を張って逃げ場をなくした。

 そうして。


「——慈悲だ。苦しみは与えぬ。痛みも与えぬ。真実に到達したことは褒めよう。だが、それは知ってはならないことだった。お前たちもわたしも、ただ運が悪かったのだ」


 集まった全員の首を、腕の一振りで刎ねた。

 学者たちの遺体はカレらの故郷へと帰らせた。学者たちの遺物は全て処分するように命令した。研究施設は破壊させ、書物は全て燃やすように告げた。

 そうして、文字を不必要に使わせることを禁じた。学問をすることを禁じた。日常に不必要な、生活に不必要なこれまで積み重ねてきた知識を捨てさせた。

 ステラが誕生して、九百年程が経った頃の出来事だった。

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