第六十二話 告白
暗闇の中、私は、必死に走っていた。ナニカに追われて、ナニカから逃げるために、必死に、足を動かす。
いや、いやっ。
捕まったらいけない。それだけは、絶対に駄目なのだと、心が叫ぶ。
いやっ、助けてっ!
それと同時に心に浮かんだのは、家族ではなく、愛しい、愛しい、番。
セインさんっ!
そう、叫んだ瞬間、闇が一気に晴れる。
「ぅ……」
「っ、リコさんっ! 気づきましたかっ!!」
闇が晴れた。そう思った直後に、目を開けると、愛しい愛しいセインさんが、目の前に居た。
「セイン、さん……?」
「はい、そうです! リコさん、どこか痛かったり苦しかったりするところはありませんか?」
とても心配そうなセインさんの姿に、なぜ、そんな顔をしているのだろうと考えて……何があったのかを思い出す。
「ぁ……わ、たし……」
セインさんに差し入れを持っていく途中で、覆面の二人組に襲われ意識を失った。その事実を思い出して、フルリ、と体が震える。
「大丈夫です。もう、怖いものは何もありませんから」
しかし、そんな私を、セインさんはしっかりと抱き締めてくれる。正直、意識を失った後のことは分からない。何が目的だったかも分からない以上、何をされたのかの予想もつかない。
「俺が駆けつけた時、覆面の二人組がリコさんを連れ去ろうとしていました。ですが、しっかりとそいつらは退けて、この国の騎士に引き渡しましたので、安心してください」
しかし、セインさんのその言葉で、私はすぐに助けてもらえたのだと理解できて、分からないことから来ていた不安が解消される。
「俺が、差し入れなんて頼まなければ、あんなことにはなりませんでした。本当に、すみません」
「大、丈夫、です。セインさん、は、悪くない、です」
月並みなことしか言えない自分が腹立たしい。それでも、セインさんに非がないことは、誰が見ても明らかだ。むしろ、助けてもらったのだから、セインさんが正義だ。
「助けて、くれて、ありがとう、ございました」
まだ、起こった出来事全てを受け入れられるだけの余裕はない。それでも、お礼だけは伝えたかった。すると、途端に私を抱き締めるセインさんの腕に力が入る。
「リコさんを、失うかと思いました」
声が震えている。そんなことに気づいた私は、セインさん自身が震えていることにもその流れで気づいてしまう。
「セインさ「すみません。ですが、俺は、リコさんを離すことなんてできません」」
初めて、会話を遮られた。しかし、それ以上に気になるのは、その内容だ。
「リコさんが死ぬのであれば、俺も死ぬでしょう。リコさんは、俺の、大切な片翼ですから」
片翼。その言葉を聞いて、私の時は止まった。




