第六十話 強襲
レレ様とのお茶会も終わり、私はせっせとセインさんのために作ったお菓子をバスケットに詰めて、屋敷を出る。
正直に言えば、レレ様から得られたアドバイスは一つだけで、とても不安だ。それでも、頑張ることを約束した私は、後には引けない。
セインさんが話していた宿は、私の屋敷から馬車で二十分ほどの場所にある。しかし、早くセインさんに会いたい私としては、馬車でのんびり行くよりも、自分の足で歩いた方が良いとばかりに、そのまま外に出た。
今日も今日とて、可愛いと思えるワンピースを身に纏って、急ぎ足で歩く。
この時の私は、本当に浮かれていた。何せ、尾行してくる存在に気づいていなかったのだから。
もうすぐ、キツツキの止まり木という名の宿が見えてくる。私は、ちょっと近道のために、細い路地に入って、そこを通り抜けようとして……。
「っ……」
突如として上から降ってきた誰かの存在に、私は咄嗟に後ずさり、すぐにもう一人が背後に居ることに気づく。
挟み撃ち!?
覆面で顔を隠す彼らが何者かは分からないが、そんなことを考える間もなく、彼らは手に持った物を放つ。
「くっ、誰!」
かろうじてそれを避けるものの、そのまま小刀を片手に襲われる。
「うっ」
武器を持たない状態で、手練だろう敵に襲われて、どうにか逃げるか、相手の武器を奪うかしないと、と立ち回っていたものの、細い路地の中では上手く動けず、少しずつ細かい傷を増やしていく。そして……。
「な、に……?」
グラリ、と視界が大きく揺らぐ。その直後、お腹に大きな衝撃を受けて、息が詰まった。
「がっ……」
意識も飛びかけていることを自覚して、体勢を立て直そうと必死に腕に力を入れようとして、力が入らないことに気づく。
「ぁ……」
その瞬間、トラウマが、前世の記憶が、鮮明に浮かぶ。
外に出たいのに、動きたいのに、何も出来ないままに、苦しみ抜いて死んだその時を。そして……。
「ぐぁっ!」
その恐怖を最後に、バチッという音とともに、私の意識は強制的に暗闇に閉ざされた。




