第五十一話 いちゃもん
アスレチック広場で遊ぶのは、とても楽しかった。
それというのも、セインさんは魔法を併用することで、私の身体能力にもついてこれるだけの実力を持っていたのだ。だから、セインさんと様々な遊びをする中で、私の中に渦巻く狂気は、少しだけ、鎮火してくれた。
「楽しかったですね。リコさん」
「は、い……」
汗を流しながら爽やかな笑顔を浮かべるセインさん。その姿にドキリとしながら、また、狂気が渦巻くのを感じる。
誰にも、渡したくない……。
とはいえ、運動である程度発散したからか、まだ、独占欲の範囲内だろう。
「そろそろお腹も空いた頃でしょうし、汗を流した後は、早めの昼食にしましょうか」
「はい……。えっと……セインさん、は、何が、好きです、か?」
今は、お昼ご飯を考えなければと、強制的に思考を誘導して、そんな質問をしてみる。
「そうですね……肉料理も魚料理も好きですが、肉料理の方が好んで食べますね」
「わ、たしも、肉料理、好き、です。その……お肉なら、美味しいお店が、この、近くにあり、ます」
「リコさんのおすすめですか! それはぜひ、行きましょう!」
セインさんの笑顔は、心臓に悪い。ついつい、この場で襲いかかりたくなるような威力がある。
「……リコさん、その……いえ、やはり、後にしましょう。では、汗を流したら、ここにもう一度集合、ということでお願いします」
「? は、い」
セインさんが何を言いかけたのか気になりはしたものの、後で話してくれるようだったので、追求せずに一度、セインさんと分かれて預けておいた服を受け取り、シャワールームへと向かう。その際、化粧をもう一度してもらえるサービスも頼んでおいて、ゆっくり汗を流してから、化粧ルームへと向かう。その途中で……。
「ちょっとあんた、顔貸しなっ」
狼獣人らしい少女が一人と、人間の少女が三人、私の目の前に立ちはだかった。
誰、だろう……?
四人の少女は、明らかに私へ敵意を向けてきている。実力からすれば、私一人でも簡単に対処できる程度の小物ではあるものの、今は、時間を取られることそのものが嫌だった。
「知らない人に、着いていこうと思わない。お引き取りを」
セインさんとのお出かけを邪魔するならただじゃおかない。そう思って睨めば、狼獣人らしい少女だけは実力差を理解できたのか青ざめる。しかし……。
「何よっ、貴族でもないくせに、お高くとまっちゃって!」
いや、私、貴族……。
「それに、黒髪って不吉の象徴なんでしょー? ありえなーいっ」
いや、黒髪は、他の国では分からないけど、ここでは吉兆の象徴……。
「アン、こんな小娘、さっさと伸しちゃってよっ!」
いや、その子、もう戦意喪失してるけど……?
突っ込みどころ満載の人間の少女達の言葉。そして、アンと呼ばれた狼獣人の少女は、どうやら彼女達のリーダーらしかった。
「も、もも、もちろん、よっ!」
震えながらでも、対抗しようとするその姿勢は、普段ならば評価できた。ただし……。
「「失せろ」」
今は無理、と思って声を出したところ、それは、もう一つの声と重なった。




