第四十話 失敗?(セイン視点)
俺は、何かを失敗してしまったのでしょうか?
そう思ってしまうのは、病院からリコを家に送る道中、彼女が全く話すことなく、難しい表情で黙り込んでいるからだ。
馬車に乗る前、リコは確かに、何かを伝えようとしてくれていた。ただ、あまりにも伝えづらそうだったため、大人の余裕を見せるチャンスとばかりに、『ゆっくりで良い』なんてことを言ったが、それが不味かったのかもしれない。
真剣に考え込んでいる様子のリコを邪魔するのは忍びない。ただし、その内容次第でもあるのは確かで……。
もし、トラブルに見舞われたことで、リコが俺と居たくないと思っているとしたら……?
この場合、恐らくはトラブルに巻き込みたくない、という理由だろうことは想像に難くないが、そうだとしても、俺は嬉しくはない。
もしも、そうこうしている間に、リコに運命の番が現れたりしたらっ……。
獣人は、運命の番に出会うと、その相手しか見えなくなるし、その相手にしか欲情できない状態になる。
リコの様子からして、俺がその運命の番ではなさそうだ、ということが、大きな問題だ。
運命の番だろうと、想いで負けることはないと思っていますが、それとこれとは別問題。リコが運命の番に出会わないに越したことはないのですから。
運命の番とリコが出会わないようにするためには、素早く求婚して、リコを捕まえておかなければならない。リコが他の男を目に映さないように、徹底的にリコの周囲を管理してしまえば、ようやく安心できる。
とにかく、口実は何でも良いので、次の約束を取り付けなければ。
どんな口実でも良い。リコと会えなくなるなんて、もはや考えられないのだから。
そう思って、口実を頭の中で精査して、リコが断り難く、なおかつ、無理矢理でもないであろうものを選出する。
絶対に、逃しませんよ?
もしかしたら、この時の俺は、リコを獲物を見るような目で見つめていたかもしれない。それほどまでに、俺の頭の中は危機感に包まれていた。
そうして、馬車が停まったその瞬間、俺は声を出していた。




