第二十八話 待ち合わせ時刻(セイン視点)
リコとプリンの美味しいお店に行こうと約束をしてから三日。今日が、その日だった。
「……お待たせ、しました」
「い、いえ、俺の方が早くに来すぎてしまっただけですし……その、約束の時間にはまだありますからね」
モビア王国という国は、獣人の国であるため、自然が多い国でもある。そして、待ち合わせとして指定した場所は、そんなモビアの中心地。街中に存在する噴水広場だ。
大人が入って泳げる程度の水深と広さを誇る噴水……いや、むしろ噴水付きのお洒落なプールと表現すべきそのものが堂々と存在するその場所は、モビア王国の名所でもある。実際、この場所はお祭りになると観賞用の噴水という用途から、はしゃぐためのプールという用途に変更され、住民にとっても慣れ親しんだものだろう。
時刻は明け方。当然、こんな時間に待ち合わせ時間を設定しているはずもなく、本来ならば四時間後に会うはずだった。
「その……まだ、店も空いていませんが、せっかくなので、一緒に散歩でもしますか? あ、朝ご飯は食べてきましたか?」
「ん……。食べて、きました。散歩、しましょう」
視線をさまよわせて気まずそうにするリコに、俺も同じく気まずくなりながらも提案する。
まさか、楽しみにし過ぎて眠れなくて、適当に朝ごはんを摘んでからそのまま出てきた、などということを言うわけにはいかないし、リコがそんな俺とあまり変わらない時間に来てくれた真意を問うこともできない。それでも……。
楽しみに、してくれていたんでしょうか……?
もし、そうであるならば嬉しい限りだ。
リコの服装は、最初に見た制服とは違い、パステルピンクの小さなリボンが胸元にあしらわれた白いワンピースだった。
……か、可愛い……。
黒目黒髪のリコの肌の色は、とても白い。特に好きな色などは考えたこともなかったが、これからは、白も黒も大好きになりそうだ。
「リコさん、どこか、行きたい場所はありますか? 時間もありますし、色々と動けると思いますよ」
「…………ごめん、なさい。私、ここら辺、詳しくなくて、分からない、です」
「いえ、大丈夫ですよ。何となくの希望でもあれば、それに沿った場所に行きますし、なければ俺がオススメの場所に行こうかなと」
へニャリと垂れてしまった黒い猫耳(?)に、内心悶絶しながら提案すれば、すぐにその耳はピンと立ち上がる。
「それ、なら。オススメを、お願いします」
「分かりました! では、こっちに行きましょう!」
期待するような瞳を向けられれば、ドキドキと心臓が暴れ出す。それでも、精一杯紳士の皮を被って、俺はそっとリコの手を取り、歩き出した。




