第二十七話 愛しい片翼(セイン視点)
ヴァイラン魔国の近衛騎士。それが、俺の立ち位置であり、誇りだ。そして、魔族の大半が願う片翼への想いだって、ちゃんとある。
片翼とは、魔族にとってかけがえのない存在であり、獣人で言うところの番に良く似ている。違うのは、片翼は生まれ変わるとされていることと、一人以上の魔族にとっての片翼が存在することもあること、片翼を失った魔族は、絶望に苛まれて死んだり狂ったりすることもあれど、そのまま生き残る者も居るということ。
さて、俺もそろそろ片翼を見つけたいところですが……いったい、どこに……?
ついでに、片翼を中々見つけられない魔族は、一定の年齢を迎えると、無翼とされる。つまりは、そもそも片翼を見つける本能なり何なりに欠陥を抱えているか、自分に相応しい片翼が存在しないのだと結論付けられるというわけだ。
その無翼に片足を突っ込みかけてるなんて、昔は考えもしませんでしたね……。
片翼への憧れは、当然存在する。しかし、ここまできてしまうと、もう無理なのではないか、という思考の方が強い。
俺の、片翼……。ひと目でも良いから、見たかったですね……。
片翼を見つけられないまま、ひたすら、まだ見ぬ片翼のための自分磨きに精を出した結果、俺は近衛騎士の騎士団長なんていう地位にまで辿り着いていた。
仕事は充実しているし、生活そのものも問題ない。ただただ、片翼が、俺の唯一が見つからないということ以外は、全てが順調だった。
「特別講師、ですか?」
そんな時だった。我らヴァイラン魔国の魔王、ジークフリート陛下がそんな提案を持ちかけてこられたのは。
片翼捜しのために、様々な国に赴く魔族は多い。俺も昔は様々な国を巡った口ではあるものの、ここ百年くらいは自国の中でしか生活していなかった。きっと、陛下のその言葉は、俺を思ってのことだったのだろう。
モビア獣国での会談のついでに引き受けた、騎士科に通う生徒への特別な授業。まさか、そこで、本当に片翼に出会えるなどとは、思ってもみなかった。
「リコ……俺の、片翼……」
愛しい彼女の姿を思い浮かべるだけで、心が浮き立つ。羽など生えてはいないのに、今ならば空に飛び立つくらい簡単にできそうだ。
「彼女の運命の番が、俺であれば良いのに……」
さすがに、そこまでの運が自分にあるとは思えない。きっと、リコにとっては、一応名前を知っている魔族、くらいの認識でしかないだろう。
「……運命の番になんて、渡すつもりはさらさらありませんけど、ね?」
どんな手を使ってでも、リコを手に入れる。一番は、リコが自分の意志で俺を選んでくれることだが、それがどうしても叶わないのであれば、手段など選んでいられない。俺には、リコだけしか、見えないのだから。初めて片翼を見つけた俺は、きっと、リコとの未来が描けなくなれば、生きてはいられないのだから。
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