表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/41

09 スタートダッシュ組(主人公とは別人)

 パワーソードスキルで自分の身の丈と同じくらいクモを切り伏せるとポリゴンになって消えた。空いたスペースには新たなクモが入ってくる、もうどれだけ倒したかなんて数えていない。幸いなのは後ろが行き止まりなので挟み撃ちに成らない事、最悪なのはコイツラを倒さないと外に出れ無い事だ。

 ダンジョンの奥に宝箱があり、それを拾ったらクモが多数湧いた、トラップだったのかも知れない。今日は開錠スキルを入れたメンバーを含めてなかったので仕方がない。


「バフ更新します。ファイヤーエンチャント、ウインドシールド、軽足」

 バフ(支援魔法)を唱えるのは、緑色のローブに身を包んだ金髪長髪のスレンダー、どっからみてもエルフの魔法使いだ。


「同じく、ポイズンガード、ストレングスアップ、精神集中」

 人間魔法使いも同様に、PTメンバーに魔法をかけていく。ポイズンガードは毒に掛かる確率を減らし、ストレングスアップが力を強くし、精神集中でSPの回復速度が速くなって命中率が若干上がる。


 アイコンを確認すると、バフ残り時間がカウントダウンされていた。バフを更新するのは確か三回目だから、既に五十分位はここで戦っているんだろう。リアルだったら絶対死んでいるわ。どんなに戦っても肉体が疲れないのはありがたい。



「各自満腹度チェック。敵を一旦追い払うからその隙にSP、MP含めて補給して、いくよー、三連突き!」

 リーダーが槍を素早く突き出し、正面にいた三体のクモがポリゴンに変わる。若干クモとの距離が開いたので、その隙にSP回復ポーションを飲み、空瓶をしまい、串焼きを取り出して一口で食べると串が自動で消える。今度は俺の番だな。


「スラッシュ! パワーソード! スラッシュ! パワーソード!」

 刃の斬撃が弧となって飛んでいき、近づこうとしていたクモがポリゴンになって消えていく。正面までやってきたクモには強烈な一撃を加えて倒し、同様の事を繰り返す。横を見るとリーダーや魔法使いも補給が済んだようだ。


「お待たせー行くよーー、パワーッショット!」

 ゴリラのように筋骨隆々の獣人ゴリラの狩人が弓を構えている。普通の矢じりとは異なり、バレーボールサイズ位の大きな矢じりが付いた矢がセットされている、そして約三分間溜め撃ちのスキルを発動。

 矢を放つ前から光線が周囲に飛び散り、放つ瞬間に光が収束し、矢が飛び出すと同時に大きな光の矢となって相手に向かって飛んでいく。

 複数のクモが串刺しに、いや大きく凹み圧縮されたような状態で押し潰されて、遠くの壁にぶち当たるまで飛んでいき、壁にあたると同時に消えていく。


「あれ、追加のモンスターは居ないみたいだね。一気にいっくよー」

「りょ」「k」「ふぁい」「らじゃ」


       :

       :


 ダンジョンを出ると空には月が出ていた。出口から少しずれたところで、横になったり座ったりしている。肉体的には疲れないけど精神的には凄く疲れた。先行で下見するつもりで中に入ったら、良い感じで進めたので、ついつい奥まで行ってしまった。


 俺たちは別のゲームからの転籍組だ。前のMMORPGでは開始してから三年経過してから始めたので、最初からやっている人達とは差がありすぎたし、血盟の拠点を持ちたくても全て埋まっており新規に獲得するのは無理な状況だった。

 血盟というのは知り合いが集まって一つのチームを形成する事で、血盟に参加する事で血盟チャットや血盟倉庫、血盟ボーナスなどのメリットがあるが、一番なのは気の合った仲間でワイワイ出来るところかな。早くこのゲームにも血盟のような仕組みが出来て欲しいものだ。


 という事で、血盟員の殆どがこのゲームでスタートダッシュをかけている。私も三日でLV十になって、四日目で剣士に転職した。結構なメンバーが既に転職を行っている。当然全員課金装備で課金アイテムもバンバン使っている。

 そのおかげでユニーク称号“先駆者”を血盟員の殆どが持っている。最初に転職した人から二十四時間以内に転職したプレイヤーに与えられる称号で、経験値+一(プラスイチ)%、熟練度+一(プラスイチ)多く入る。きっと課金をガンガンしてもっと上のプレイヤーを目指して追加の称号を手に入れろという事なのだろう。



「そういえば、この宝箱何がはいっているのかね?」

 全身が鱗に包まれたドラゴニュートのリーダーが宝箱を持ち上げ、私を含めた周りのメンバーも何が入ってのいるのか楽しみにしている。



「あら? 良いもの持ってるわね。その宝箱をこちらに渡してくれるかしら」

 声がした方角を見ると、黒い布で顔を隠し、黒いマントに皮のチョッキに皮ズボン、腰には少し曲がった短剣が装備されている。頭の上には猫耳がぴょこぴょこと動き、腰の右横には重力に逆らったように長い尻尾がくねくねと動いている。

 その容姿は、きっと十人中六人が盗賊と答え、三人が猫、四人が黒い、二人が女子、と答えるだろう(複数回答可)。更にその背後からは二十人近い武装した集団がこちらに向かっているのが見える。ちなみに、名前が頭の上に出ているから顔隠しても意味がない。


「盟主、開錠よろしくお願いします」

 そうこの盗賊こそ前のゲームの血盟盟主である、そして後ろのメンバー全員血盟員だ。皆集まって挨拶したり踊ったり、下着姿でお辞儀したりしている。


「あら結構いいもの出たじゃない。邪眼の銀の指輪:闇魔法スキルLV+一(プラスイチ)、隻眼のブビンガの腕輪:縫製スキルLV+一(プラスイチ)、心眼の鉄のネックレス:剣術スキルLV+二(プラスニ)

 最後のアイテムを聞いて焦る。


「ちょっと、ちょっと待ってくれ。何で最後だけ輪じゃないんだ、この流れなら首輪だろ」


「そこかよ! 突っ込むなら何で全部目に関係するものばっかりか、だろ!」


「お前ら、どうでもいいわ!」

 やっぱりこうやってワイワイやるのが楽しいよな。今回は剣術スキルLV+二のネックレスを頂いた、アイテムは皆でシェアしながらやっている、皆で目指せトップ集団。


「じゃあ、PT再編成するわよー。プリンちゃんと洗濯槽クリーナーPTL(パーティリーダー)よろー」


 さて、もうひと潜りだな。

 そうだ! 声に出してツッコメ! そして周りから白い目で見られろ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ