10 ついに明かされる、って程でもない
砂場の採集ポイントに着いて早速採集をすると砂が三個取れて、経験値十二採集熟練度九入った。鑑定をすると砂で、ガラスの材料や建材に利用可能と書いてある。一回取ったポイントなのにまだ青く光っている、これ凄く美味しい場所じゃないの? 無我夢中で採集しまくる。
『わたしはSPが切れたから休憩するわね。あんまり無理しないでね』
シャルロッテさんは崖で採集をしていたが、今は女の子座りして休んでいる。ギルド内での焦り具合と今の休んでいる姿は同じ感じなんだけど、普段の言葉遣いとか戦闘スタイルとか、実際には強烈姉さんだよな。ちなみに、私は妖精が無限にSPやMPを回復してくれるから全然休まなくても大丈夫なんです。
砂十個でガラス一個又は二個になり、ガラス二個でガラス瓶が一個又は二個になるらしい。確実性を持たせるなら砂を四千個だな。これくらいなら余裕でいける、いつもと違って何度もチュートリアルを繰り返さなくても無尽蔵といえるような数を採集出来て効率がすこぶる良い。
二時間程採集しているとLVが八に上がった、それに合わせて新たな称号“断食マスター”を得た。
『“断食マスター”:ユニーク称号。何にも食べずに長時間ゲーム内で過ごしたプレイヤーに贈る称号。何にも食べないってどんな縛りプレイなの? 食べないと普通は力を発揮できないしHPが減って死んじゃう筈なんだけどな。 効果は満腹度が零になっても一時間は、HPが減らない及びパラメータの減衰無し。満腹度が百%の状態で攻撃力百%増し、満腹度五十%以上の場合五十%増しになる』
そういえばお腹が減っても妖精が回復してくれるから、わざわざ何かを食べる必要性が無かった。五十%は結構な確率で維持できるから、これは中々のあたり称号だわ。
シャルロッテさんは崖の下で、つるはしのようなもので鉱石を掘り出している。どれどれちょっと見学させてもらおう。
『鉱石を掘り出すには“つるはし”が必要よ。冒険者ギルドか鍛冶屋で販売しているわ、価格は四、五万Gくらいかしら? ちょっと休憩するから試しに掘ってみる?』
つるはしを借りて採集スキルを発動すると、つるはしを崖に向かって打ち込むアクションが自動で発動した。ナニコレ普通の採集とは違うんだね。珪石が二個手に入って、経験値八採集熟練度六が入った。珪石一個でもガラスの作成が可能だって。
『SPどんだけあるの? ここに着いてから休憩せずに採集しているけど化け物レベルよそれ』
つるはしを利用してガンガン掘り出していると、シャルロッテさんが呆れながら話しかけて来た。そういえば借りっぱなしだった。
『思ったより早く揃ったわね。これくらいあれば十分な量になるはずだし、折角だから途中でヒポ草が生えているところに寄ってから帰りましょ』
この場所で三、四時間位採集していた気がする。疲れたけど親切で言ってくれているし、ここでログアウトしたらシャルロッテさんに迷惑だろうし、PTプレイってのは楽しいけど少しだけ気を配らないといけないな。しかし、大分取ったけどここの砂や崖が無くなる感じがしない、不思議だ。
森の中をヒポ草を採集しながら移動する。複数の光るポイントが見つかったので、思わず早足で近寄ると
『気を付けてフロッガよ!』
光るポイントだと思っていたら、蛙の化け物が擬態していた。蛙の口からピンク色の舌が伸びてきて足に絡まる。引っ張られた足を踏ん張って耐える。杖を思いっきり舌に向かって突き刺すと、舌が杖ごと地面に軽くめりこむ、そしてフロッガの舌から解放された。
しかし、もう一匹のフロッガからも舌が伸びて右手に絡みつき、杖が振るえなくなった。もう一体のフロッガに対してファイヤーボールとウインドカッターを唱えるが、舌は絡みついたままだ。
シャルロッテさんが鉈を振り下ろして舌を切断し、そのまま鉈を一心不乱に打ち込んでいる。フロッガも負けじと口を開けてシャルロッテのさんの腕ごと鉈を飲み込む。腕が固定された攻撃が出来なくなったようだ。
『うぉおおおーー、どっこいしょー、どりゃー』
フロッガに飲み込まれた腕を持ち上げると、フロッガが宙に浮いた。そのままその場で横にクルクルと回転してから、軽くジャンプして地面に叩きつけるのと合わせて全体重を上から押しつけた。鉈がフロッガの腹から飛び出してポリゴンになって消えた。凄いんだけど、ちょっとひくわ。もう一体もシャルロッテさんのおかげで倒せた。
『森の中で走ったら危ないわ。視界が遮られているからその先に何がいるのか確認し辛いし、茂みの奥にモンスターや獣がいる可能性だってあるのよ』
すみません、ちょっと浮かれてました。この後はシャルロッテさんの後ろを大人しく付いていくようにした。少し開けた場所まで移動すると、今まで以上に光るポイントが密集している。
『ここが採集ポイントよ。全部取っても暫くすれば再度生えるから遠慮せずに採集していいわよ』
そんなに強い植物なんですね。ありがたくいただきます。ヒポ草だけでなく、上ヒポ草やポク草スポ草も手に入った。
『必要な数がそろったようね、そろそろ帰りましょう』
シャルロッテさんが町に向かって歩き出したので、駆けよって近づいたところで、紐に引っかかって転んだ。そして柔らかい感触、手をモミモミするとムニュムニュとした弾力が返って来た。これってもしかして……。
『気を付けてそれイモリンよ。ノンアクティブだから落ち着いて』
倒れた際に大きな芋虫の背中に乗って、背中のあたりをモミモミしてしまった。
『攻撃したり、背中のあたりをモミモミしない限り大丈夫だから』
それ既に遅いです。というか背中限定かよ!
『安心して、仮に背中をモミモミをしてもタイプじゃなかったら糸を吐かれないから』
イモリンはゆっくりと振り返り私の顔を見ている。顔を正面に戻してそのまま遠ざかっていく、どうやらタイプじゃなかったようだ。それはそれでちょっとショックだったりする。
おや、イモリンがピタっと止まって一番後ろのお尻? を上にあげたと思うと、糸を大量に吐き出して来た。
『それに絡まれて一緒に繭の中に入ると、子作りを始めるわ』
マジカヨ。でもちょっと気になる、どんどん糸に絡まりながら質問をする。
「あの種族が違っても結婚したり、子供って出来るのですか?」
『出来るわよ。獣人なんかは人と獣のつがいから進化したものだし』
そうか、私もついに結婚かあ、ゲーム内だけど。
『イモリンは相手の体に卵を産み付けるの、子供が孵化して体の中から食い破られて死ぬわよ』
それ早く言って下さい! 結局シャルロッテさんに助けて貰って窮地を脱した。しかし、情けないな私。
町に戻って来たが既に夜も遅い時間だったので、明日またシャルロッテさんが働く雑貨屋に行く約束をして別れた。
ゲームからログインアウトし、SNSでLVが八に上がったことを報告した。でもユニーク称号の件は何かチートっぽかったのでとりあえず伏せておこう。閲覧数とブックマーク(お気に入り)が若干だけど増えている、これは中々嬉しい。とりあえずLV十までは頑張ってみるかなと。
翌日、シャルロッテさんの働く雑貨屋ヴァルツヴァルデに向かう。入り口の扉を開けると鐘が鳴り、店の中か声が聞こえる。
『いらっしゃいませ。ヴァルツヴァルデ雑貨店にようこそ』
可愛い声だけど姿が見えない。声の主はシャルロッテさんではないな、もっと若くて幼い感じだ。ファンタジーの世界観だから透明化の魔法を掛けてて忘れてましたテヘペロ展開か、あるいは音声自動案内で、実はゴツイオッサンでしたみたいな感じだろうか。
見えないけど、シャルロッテさんに会いたいから話さないと始まらない。店内に入って声をかけてみる。
「こんにちは、すみませんシャルロッテさんはいらっしゃいますか?」
『ああー話は聞いているわ、シャルー 彼氏さんがお見えよー』
声の発生元はカウンターの奥だ、でも姿が見えない。でもカウンターの先に何か細いものがチラチラと横に動いていたのが見えた、あの細い線のような物体が店主なんだろうか。
『彼氏じゃないです! 変な言い方止めてください。こちらが店主のマルグリットさんです』
慌ててシャルロッテさんが飛び出してきて、線の細い物体を店主として紹介してくれた。これ何の生き物なんだろう。
「すみませんお忙しいところにお邪魔してしまって。私は腹出る加藤と申します。よろしくお願いします」
『はいカトウさんね、こちらこそよろしく』
小さな線が横にひょこひょこと動き、カウンターを回ると、線の下には髪と体が、というか線がアホ毛でその下には小さな女の子がいた。年は十歳位だろうか、緑色の髪の毛に顔だちは欧米人の女の子って感じか、シャルロッテさんと同じ町娘の恰好だけど胸は全然強調されていない。いや逆にされていたらそれはおかしい。小さな女の子が店主という事で戸惑っていると、
『ああ、私はこう見えても二百歳を超えてるわよ』
なるほどねー、幼女体系落ちだったか。
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それと「定年退職したからVRMMOをはじめてみた2.0」を読んでくれた方ありがとうございます。
ちなみにそれのスピンオフのホラー作品があります。
「ヤンデレAIと過ごした一ヶ月」です。
本編とスピンオフの会話が、あーそんな感じで繋がっているのかと、
思ってもらえたらいいなと思います。
短編だけどちょっと長いです。よろしかったらそちらもお願いします。




