41 エピローグ
翌日以降もドロ猫ちゃん達とPTプレイをしている。段々と実力もついて来たので、多少島の奥まで進む。
「あの岩山、炭鉱のようになってますけど、中はどうなっているんですかね?」
アメリカの荒野にありそうな岩山に、炭鉱のような入り口がある。しかし、悪魔に魅入られたNPC(という設定の敵)が数千位は居そうだな、そんなのがうろついていて中に入るのは苦労しそうな雰囲気だな。
『中に入ったことは無いですね。あんなに沢山の敵が居るし、しかもあいつらリンクの範囲が広いのよ。だから下手に手を出すと直ぐに多数に囲まれるし、あのNPCの中に混ざっているショミンジェネラルは仲間を呼ぶから、いや呼ぶというよりもその場で召喚するから数のコントロールがやりにくいのよ。
ここだと敵を迎え撃つにしても範囲狩りに適した敵をまとめるための障害物などが無いし、例の岩上り作戦も使えないわ』
「なるほど、確かにちょっと……」
『そうそう、ちょっと』『うん、ちょっと』『そう、ちょっと』
『『『無理ですよね』』』
「手間が掛りますね」
『『『「え? 敵の数は数千ですよね? ですよねー。びっくりした」』』』
『『『厳しいですよね』』』
「いけそうですよね」
『『『「え?」』』』
あれ? 私の発想がおかしかったのかな?
『カトウさんは、手間が掛るけど倒せるって言ってますか?』
「はい。え? 何で倒せないんですか? たかが数千ですよね? 範囲狩りするなら敵が多い方が効率良いですし」
『パネーわ』『レベルじゃないんだな』『別次元で生きてるよね』
『カトウさん、ちなみにどうやって狩りますか?』
「そうですね。(ザクッ)うん。穴掘る感じですかね? これで深さ三m、幅五m位の穴を周囲に掘ったら敵を百体位は落として攻撃出来るんじゃないでしょうか」
スコップを一掘りしたら、風呂場の浴槽二杯分位の穴が開いたので、掘り作戦は行けそうな気がする。皆の顔を見るとあんぐりしている、あれ?
『凄いスコップね、それ。 え? 三MGもするの!? でも、それだけ高性能ならお買い得かしら』
そうか、ザーコを倒した結果しか知らないのか、あるいは倒した回しか見てないのかな、そうだとしたらスコップの事は分からいのは理解できる。スコップでどんどんと穴を掘る、とりあえずこんなもんでいいか、三十分位掛けて堀を作ったムシャムシャ。
ビジンが走り、ヘイトを稼ぐと物凄い数の敵がリンクして怒涛の如く押し寄せてくる。流石にこれは想定外の数だわ。一言でいうと目に見える敵全て、数千がリンクしてやってきた。
「えええーー、あんなにリンクするんですか!? 範囲でいったら数kmくらいですよね? ね?」
『いえ、あそこまでリンクするとは思ってませんよ! 仕様が変わったのかしら』
ビジンの後ろから雲霞の如く敵が押し寄せてくる。ビジンに向かってナパームを放つと、ヘイトが私に移り、どんどんと堀の中に落ちていく。最初は落ちていくだけだったが、中にジャンプしてこちらの場所に乗り移ろうとしているものもいた。流石に五mの範囲を飛び越えられる敵は居なかったのでそのまま掘りに落ちていく。
『こわっ、敵がジャンプして襲ってくるなんて見た記憶が無いわ』
前衛職、獣人ライオンの百獣の僕さんが、驚きつつ、ぎりぎり届きそうなものは叩き落してくれている。
が、中には遠距離攻撃が出来るものもいて、堀の向こうや、堀の中から攻撃してくる。また堀の中に敵が溜まると敵の上を歩いて乗り越えてくるようになり、どんどんと肉薄され処理できずに全滅した。
『流石にあれは無理ね』
『惜しかったよな、でも数km範囲でリンクするとか有り得ねーだろ』
しかし滅茶苦茶楽しかった、笑いが我慢できずにゲラゲラと笑ったら、皆も吹き出すように笑っている。楽しい、これがPTプレイなんだな。
「ビジン元いた場所辺りに敵を捨てて来てくれる?」
『了解。でも、その後私はどうすれば良いですか? 敵に囲まれちゃいますけど』
「死んで」
『ぐはっ、相変わらずサディストですね。でもそれが良いんです』
残りの敵がビジンを追いかけているので、元居た鉱山の入り口付近まで引き連れてもらった。あんなの放置したらMPK(モンスターを利用したプレイヤーキラー)になっちゃうよな。いつかは、何か攻略法を考えて中に入ってやろう。
私もドロ猫ちゃんの血盟に参加させてもらう事になった。新参者なのに皆が温かく迎えてくれてとても有り難いし、嬉しい。PTプレイは楽しいし、範囲狩りでは役に立っているようでやりがいも出てる。毎回誰が俺と組むのか順番待ちだ、まあ盟主のドロ猫ちゃんは常に一緒にいるけど。
ゲーム内でも攻撃力の高い範囲攻撃魔法使いなので有名人になってしまって、いや魔法云々じゃなくてもイベントの好成績という面でも有名になってしまった。おかげで血盟バトルでは一番狙われやすい。皆が向かってくるから怖くてついインフェルノ(火魔法LV6)とかナパームとか唱えちゃいます。
しかもゲーム内で二つ名がついてしまった。満腹王子とか、エルブ(エルフデブ)、食事無双、ヒカシボウ、他にも百種類位あるらしい、どうでもいいけど統一してほしいわ。
最近の悩みはゲームをし過ぎて体形が変わってしまって、今の服だとサイズが合わなくなってきた事だ。無理に着るから服が変な風に見える。うそうそごめん悩みという程の事でも無かったわ、まあ服を変えないと只でさえイケてないのに、より一層イケてないので今日は買い物に来ている。服だけじゃなくて久しぶりに高いお菓子も食べたいから、横浜まで来ちゃった。
買い物に行ってる旨をドロ猫ちゃんにコネクト(ラインのようなチャット)を使って連絡する。ドロ猫ちゃんとはゲーム外でもやり取りをすることが多くなった。人としかも女性とこんな風にやり取りするような事って思ってもみなかった。別に彼氏彼女という関係では無いんだけど、人と繋がっているってこんなにも楽しい事なんだな。
『私も買い物の最中です。もしかして同じ場所で買い物してたりして』
まさかね。家の場所とか住んでいる場所なんてのはやり取りしてないから分からないけど、そんな偶然は無いだろうな。さて服を買うならブブレだ、他の場所なんて知らないし、ユニシロや、古本屋もあるから大変便利。
メンズ向けのズボンやTシャツ、Yシャツなどを買う。折角なので買ったものに着替えちゃう、体形が大分変ったから今の体形に合う服にしないと、見た目が凄く変になるからね。横浜に来るのも恥ずかしかったくらいだよ、まあそれは自意識過剰か。
スイーツの美味しいお店をスマホで検索する、どこが美味しい店かよくわかんないなぁ。そういえば先日ドロ猫ちゃんがSNSにアップしていたモンブランがとても美味しそうだった。よし、スマホで検索するか、横浜、モンブラン、美味しい、食べれる、食べ放題、っと。
うん、スイーツバイキングや食べ放題の店ばっかり出て来ちゃった。食べ放題を外して再度検索し、美味しそうなお店に向かって移動する。場所が分からないのでスマホをチラチラ見ながら移動する(歩きスマホは危ないからやめましょう)。
店の前まで来て気が付く、なんて事だこれは無理だわ、店の中は女性ばかりで入り難いと。思わずため息が出てしまい、そのため店の前で待っている人から視線を向けられてしまった。ドロ猫ちゃんからコネクトが来たので場所を移動して、返事を返そうっとドン。
「あっすみません」
『こちらこそすみませんでした』
歩きスマホしていたら、同じく歩きスマホをしていた少しふくよかな女性とぶつかってしまった。お互いスマホを地面に落としてしまった。あれ、同じ機種の同じ色だから、どっちがどっちか分からないぞ。手前のスマホを拾い上げると、先ほどまでやり取りしていたコネクトが映っているから、これが私のだな。相手も拾ったスマホを確認している、お互いに再度謝って歩き出す。
あれ? ドロ猫ちゃんに返事を出そうと思ったら、ドロ猫ちゃん側のコメントとして表示されちゃっている。落とした際に壊しちゃったのかな? あれあれ? しかも、自分側のコメントには、俺が書いていないコメントが書かれているぞ??
お互いおかしいですねと返信をして、スタンプを押そうと思ったら、明らかに自分では持っていないスタンプが数多く表示されている。これってもしかして、振り返ると先ほどの女性もこちらを見ている。そして歩き出し、相手もこちらに向かって歩いてくる。
「あのドロ猫ちゃんですか?」『加藤さんですか?』
『「ええーー」』
どうやらドロ猫ちゃんとぶつかってしまい、スマホを取り違えてしまったようだ。こんな偶然あるんだな。でも折角会えたのだから、思い切ってスイーツに誘ってみたら、丁度食べに来たところだという。イエス!
なんだろう、普段からドロ猫ちゃんとは会話を多くしているから自然と会話が出来るし、いっちゃあ悪いけど、ちょっとふくよかなのも何か安心できる。
『加藤さんゲームで聞いていた印象と大分違うんですけど、詐称してました? お腹周りは一mとか言ってましたよね? ちょっとショックです』
「いやいや違うんです。ゲームのし過ぎで体形が変わってしまって…」
いやいや、そんなジト目で見ないで下さいよ。本当ですって嘘じゃないですよー。
「VRしている最中は、エコノミークラス症候群の予防と筋力低下予防のため、EMS(Electrical Muscle Stimulation)付きの専用チェアに座ってやっているんですけど、筋肉が付きすぎちゃって。そしたら脂肪燃焼がアップして大分痩せちゃいました」
そう今の私はお腹周りが若干スマートになり、全身に筋肉が付いた体つきになっている。更にジト目で見ているドロ猫ちゃんに、昔の自分の写真と専用チェアの写真をスマホを使って見せる。
『本当に前は太ってたんですね。でもこの専用チェア百万位する奴じゃないですか? お金持ちなんですね。私も使ったら痩せられるかしら』
「いやいや、そうでもないですよ。ただゲームを長時間するから自分の命を守るためというか必要最低限の投資かなと。私でも痩せれたので多分ある程度は効果があると思います。でもお高いですから、そう簡単には難しいとは思いますけど、試しに使ってみます?」
『え?』
「あっいやっ、そのあの、すみません」
仲が良いからと、ちょっと調子に乗ってしまった。馬鹿だな俺って。
『良いんですか?』
「え? あっはい大丈夫ですよ」
まさか乗り気になるとは思ってもみなかった。お店を後にして、会話をしながらお互いの理解を深めていく。
『えーと私は料理研究家とバーチャルユーチューバーしてて』
「リアルじゃん! 現実世界にいるじゃん!」
そうか、バーチャルユーチューバーは現実に存在する人なんですね。モーションキャプチャーで動きを再現しているそうです。そして料理関係の動画をアップしているらしい。
『じゃあ今日は腕によりをかけてご馳走してあげますね』
一緒にスーパーによって食材を買う。白菜や長ネギ、シイタケ、鶏肉、豆腐、まだ寒いから鍋だね鍋。今はまだあれだけど、もう少し仲良くなれたら、ドロ猫ちゃんもそう思ってくれてると良いな。
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どうも最後まで読んでいただきありがとうございました。こんなに長い文章にするつもりはなかったんです。しかも最後の方はギャグを詰め込み過ぎちゃいました、これじゃあVRものじゃなくてコメディーですよね。
いつも書き始めてしばらくして思うんです、何で始めちゃったのかなと。とにかく終わらせる、書き終わらせること、エターナル放置にしない事をモットーに頑張ってます。
作品には愛着があり、折角書いたのですから多くの人の目に触れて欲しいので、是非ともブックマークや評価のほどよろしくお願い致します。でも目に触れたら痛いですよね。




