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チュートリアル無双  作者: ぐわじん


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35/41

35 戦い

 しまった、どうやら四体に囲まれている。なぜこんな事に成っているんだ。もしかして、包囲するための時間稼ぎだった? 声を小さくしたのも、俺達が近づいてくるのを見越した作戦だったのか?


『フフフフ、怒り過ぎて逆に面白くなってきましたよ。貴方はザーコを倒して調子に乗っているのかも知れませんが、ザーコは悪魔軍最弱の存在。ここで後悔するがいい』

 声が四方から聞こえる。まるで全方位にスピーカーがあるような感じだ。ザーコの件は確かに最弱だろうよ、だって一番木っ端だったじゃん。兵隊で言えば一番下な奴だよね? こいつは親衛隊だというし、しかも木っ端の一個上位だから、うーん。ザーコよりは若干強いんだろうけど、何となく大差ない気もする。


 よく見ると、マーシーの姿が少し透けているというか、しかも全方向から声が聞こえるという事は、分身の術を使っている? 何か実体が無い感じなんだよな。段々と砂煙のようなものが出始めて、視界も悪く成って来た。


「あの? もしかして分身の術を使われていますか? 本体は一つだったりして?」


『ほほー、良く気が付いたな。しかし気が付いたところで何がどうなるというんだ。分身であり実体でもある。ただの幻影だと思うなら攻撃されてみるがいい。そろそろおしゃべりの時間は終わりだ。いくぞ』


『視界も悪いのに、更に分身して攻撃してくるなんて』

 シャルが珍しく、状況に対して愚痴っている。戦闘を避けたがったが、もう会話でどうにかなる状態じゃ無いのだろう、私も覚悟して青銅の剣+1を装備する。


『ん? なぜ先ほどの武器を使わない、それは格下の武器だろう舐めているのか? 後悔するぞ』

 先手必勝だ、マーシーに向かって突撃する。ドカッ、バキッ、ゴロゴロゴロゴロ、ズサササー、ピヨピヨ。私のHPゲージが残り七まで減った、たった一回で、しかもピヨちゃっている。余りの衝撃で何が起きたか分からなくなるくらいだ、そう衝撃で吹っ飛ばされて地面をゴロゴロと転がったんだった。

 どうやら終わりのようだな…。マーシーは地面にうつ伏せに倒れており、その上にマウントしたシャルが鉈でフルボッコしている。経験値やG、魔石などが手に入ったので、あれは死体処理中という事になる。


 マーシーの分身方法は、多分早く動いて数を多く見せているのではないかと推測し、奴の移動ルートと思われる地面に剣を突き刺した。思った通り、直ぐに剣につまずいて吹っ飛んで地面に倒れたようだ。想定外だったのは、私もこんなにダメージを受けるとは思っていなかった。

 剣を鑑定すると、青銅の剣-5になっている。武器に与えるダメージも半端なかったようだ、借りものだから壊しちゃまずいと思って持ち替えたのは正解だったな。


『フフフ。私を倒したところで悪魔軍には何の影響もないぞ。今度、第二、第三のマーシーが表れてお前を倒すだろう』

 なっなんだと、死んでいるのに喋っている不思議だな。いや、それはどうでもいい、もっと重要な事を確認しないと。


「なっ、それは本当なのか? 襲ってくる奴はマーシー限定なのか?」


『……、他にもいると思う。すまないが最後に話しておくことがあるので、いったん攻撃を止めてくれないか』

 その発言でシャルが鉈を止めてこちらを見たので、頷く。シャルは頷き、鉈を何度も叩き込み続ける。


「いやちょっと待って! 手を止めて! 何か話したいというから、ちょっと話を聴いてあげようよ」

 びっくりした、既に倒されているんだし、ちょっとは相手の話を聞いてあげようよ。


『フフフフ、楽しいクリスマスが過ごせると良いな』


「ん? それはどういう意味だ?」

 楽しく過ごせないための何かがあるという事か?


『いや、文字通り楽しく過ごせれば良いと思っているだけだ。メリークリスマス』

 何でこんな事を言うんだ? 絶対裏があるだろう……、まさか、そんな。


「もしかして、チュートリアに悪魔軍が攻撃を行っているという事か!」

 私の発言にシャルも驚き、落ち着きを無くしている。


『フフフ、全然違うよ。文字通りさ、楽しいクリスマスを過ごせればいいと思っているだけさ。ん? 本当に? うん本当さ』


「紛らわしいよ!」

 マーシーは私の心にモヤモヤを残したまま消えていった。流石悪魔だけあるわ、人を惑わせるのが上手い。HP回復ポーションを飲んで休憩していると、シャルが戻って来て話しかける。鉈を手にしたまま、その顔で近づいて来ないで欲しい、凄く不安になる。



『さっき、どさくさに紛れて胸に触れましたよね?』

 ごっごめんない。平謝りをして許しを請う。全然気にしていたようだ、もうしません。


『べっ別に、そんなに怒っていませんよ、もう』

 いやこっちは座っているし、鉈を手にした目がいっちゃっているシャルに言われたら、もう死を覚悟せざるを得ない状況ですよ。採集行い、チュートリアに戻って来たが何にも起きていなかった。まったく。


 一旦ログアウトして、SNSを見ると祝福のコメントが沢山書かれていた。アホ過ぎて笑ったとか、最高の誉め言葉だよな。ザーコ戦の全戦闘動画もアップロードしたので、文句が言いたい奴はそれを全部見てから言って欲しい。

 これで目的も果たせたし、そろそろ普通にゲームをすることを宣言する。やっぱりプレイヤー同士で協力してPTプレイとかしてみたいもんな。同じくらいのレベルの人と遊べると良いんだけどな。



 クリスマスイブの夜、チュートリアの森の恵み亭でクリスマスを祝う会兼私のお別れ会を行っている。私もクリスマスクッキーを使って門松の恰好になったり、星の恰好になってはしゃぐ。


『カトウさん、いつでも戻ってきても良いんですよ。私待ってますから。はい、これどうぞ』

 シャルが鶏の骨付きもも肉を取ってくれた。自動では食べずに、ちょっとずついただく。


『カトウさん、私は貴方と一緒に行きますわ。こちらもどうぞ』

 カクテルのような物を、ビジンがグラスを持ったまま口元まで持ってきたので、そのまま頂く。私の両端で、にこやかに笑いながら互いに互いをけん制している。いや、嬉しいんですけど、気まずくもある。


『修羅場ね』『修羅場じゃな』

 先生と師匠は、からかいながらこの状況を楽しんでいる様だ、まったく。あー楽しいけど寂しい。でもそろそろ離れないとな。楽しい時間は過ぎていく。



 クリスマス当日、今日で本当の最後だ。デイリークエストをしながら、知り合いのNPCに挨拶をしていく。皆とのお別れは辛くなってきて、目から涙が零れる。そうか、泣くシステムってあるんだな、リアルと違って感情が隠せないのかも知れない。


 明日は臨時メンテナンス日なので、それまでの間はチュートリアで過ごすことにした。夜になり、クリスマスツリーが綺麗に輝いている、そう、私の持ってきた沢山の飾りがキラキラと輝いている。凄いな、十六万個も飾り付けるなんて、一個一秒だとして十六万秒、約四十五時間だぞ。でも、ゲームだから全然気にならなかった。


『カトウさん、寂しいですけど、また会いに来て下さいね』

 シャルが涙を拭っている。可愛いなあ、私も本当に寂しい。師匠と先生が軽く体を叩く、それだけでも感情が伝わってくるようだ。私も涙が零れる。

 ゲーム中にも何度か運営からガイドが出ているイベント時間になったようだ。クリスマスに何かが起こるらしい。


『うわー綺麗! カトウさんカトウさん、クリスマスツリーがあんなに輝いて…』

 クリスマスツリーの輝きが信じられないほどに輝き、そして爆発した。そこから、モンスターが沢山湧いて来ている、はあ?

 直ぐに近くのモンスターに斧を叩き込むがダメージが零だ。イベントNPCのようで攻撃してもダメージを与えられない、そしてすぐそばの教会を壊している。あっという間に教会が火に包まれて、皆も茫然としている。イベントNPC達はどこかに去ったようだ。


『ウハハハハ、我が名はサタン。これから全世界に対して侵略を開始する。こちらが侵攻するまで、せいぜい短い余生を楽しむことだ』

 全世界チャットにサタンの声が響く。そして運営からのガイドダンスが出る。


『年末年始イベント、サタンの侵攻が始まりました。明日のメンテナンス後から本格的なイベントが始まります。詳細はホームページ及びゲーム内掲示板をご覧ください』

 そっそんな、ゲーム内掲示板を確認するとイベントの詳細が書いてある。



・クリスマスツリーがあった各町や村は安全地帯ではなくなる。イベントモンスターは町の中に入ってきてNPCの家や店を壊すし、街中で戦闘も行われる


・メンテナンス後に自動で付与される加護の腕輪をつけている限り、今まで通り町や村は安全地帯として機能する。ただし、加護の腕輪を付けていた場合、イベントモンスターへのダメージは与えられない


・安全地帯でのログアウト時には、自動で加護の腕輪が機能する


・モンスターの大軍が町や村を襲う


・各町や村を襲う敵のLVや数は各町や村毎に異なる。LVはクリスマスの飾りを納品するイベントに参加したプレイヤーの平均値+-3の範囲、敵の数はクリスマスの飾り納品数の平均値


・最初は数匹づつの固まりで村に襲ってきたり、町や村の周辺に敵が存在しているだけだが、一月五日、六日と、十二日、十三日には大軍での侵攻が行われる予定


・この期間中PT内でレベル差があっても、デメリットは発動しない


・町や村の施設が破壊されると、しばらくは、その町や村で施設が利用出来なくなる


・倒した敵の撃破数に応じて特典あり、上位者には特別報酬有り


 とりあえず一通り目を通してみたが、これってチュートリア不味くない? 最低でも十六万越えの敵が来るって事だよね? しかも参加出来るのって私だけじゃないの?


『カトウ、貴方はここを離れると決めたのだから、残る必要は無いわ』


『そうじゃぞ、ここは気にせず、本来の進むべき道を進むが良い』

 先生と師匠は残る必要は無いと言っているが、流石にこの大軍は防げないだろう。いや、でも先生と師匠ならレベル差もあるだろうし、十六万位ならガンガン倒せるかも知れない。

 大軍が迫ってくる前に、範囲魔法をバンバン打ち込んだら、一度に数千単位で倒せるんじゃない? 大丈夫なのかな?


『この村から出て、今回の敵を倒すことは禁止されているわ』


「はっ? 意味が理解出来ません、もう一度いいですか?」


『今回の敵は旅人が倒す事になっているの。村に入って来た敵は倒すことが出来るけど、外に倒しに出るのは禁止されているわ』

 そっそんな、それじゃあ後手に回り過ぎて村の施設などが破壊されてしまうのでは…。メンテナンス時間が来たので、強制ログアウトされる。

 ネタの部分が多すぎて、話が進まないよー。更新頻度は遅いので、あまり期待せずお待ちください。引き続きよろしくお願いします。

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