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チュートリアル無双  作者: ぐわじん


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28/41

28 初体験

『おい、ここをタダで通れると思っているのか? ああーーん』

 もうすぐイスト村ってところで、追剥(おいはぎ)追与(おいあたえ)のどちらかに絡まれた。話しかけてきたオッサンは曲刀の峰を手でポンポンしたり、手首で曲刀をくるくる回しながら脅してくる。他の三人はへらへらしている、まあ数が多いから勝てると思っているんだろう。

 折角シャルと楽しく過ごしてたのにな。料理の委託生産はシャルの料理スキル上げも兼ねているのだが、いまの素材とレシピでは効率が悪いので、他の村まで遠征する事になって、楽しく二人でデートっぽい感じだったのに絡まれた。空気読んで欲しいよマッタク。


『おっ何だ嬢ちゃん、素直に出す気になったのか?』

 シャルが曲刀をポンポンしながら煽っている男に近づき、持っている鉈を左手に持ち替えて、右手でポシェットをまさぐっている。こんなところで金を失うのかチクショウ。


『そっちのおデブちゃんより、嬢ちゃんの方が賢いなあ。へっへっへ。何なら他の物も差し出しても良いんだぜ、お前らもそう思うよなあ、ちょおっま……』

 ヘラヘラしている取り巻きに向かって顔をそむけた刹那、追剥の首に二本の鉈がめりこんでいる。シャルが両手を上げた、その手には鉈が、そしてモンゴリアンチョップのような一撃を与えていた。一瞬全員が茫然となり行動出来なかった、追剥はその場で崩れ、地面に倒れる。


『うぉりゃああああー』

 直ぐに次の追剥に向かって、鉈を振り下ろしている。私も他の追剥二人に対して斧を振り回してけん制する。シャルは器用に両手の鉈を使って切り刻んで更に一人を倒し、最終的に私が一人、シャルが三人を倒した。


 いきなり行動したからかなりびっくりした。ひと段落したしシャルに話しかけようと思ったら、目を見開きながら地面に転がった一人に蹴りを入れて、更に鉈で何度も何度も攻撃をしている。こわっ、死体蹴りだよ。


『死体が消えない場合は、復活したり、アンデット化する恐れがあるから、ちゃんととどめを刺す必要があるのよ』

 なるほど、しばらくするとポリゴンになって消えた。私も真似してとどめを刺す。いやー死体が消えないから変だなとは思ったんだけど、復活する場合があるとは勉強になったな。


 追剥からは合計八千Gと“牛乳”“チーズ”“回復ポーション”など、多数のアイテムや素材が手に入った。今まで比べると凄く稼ぎの良い敵だった。いやー追剥から剥ぐのは楽しいね~、また絡まれたいです。



 イスト村はチュートリアに比べると大分小さな村だ。それと若干臭い、牧畜を生業(なりわい)としているので、それを再現しているのかも。てか、臭さはいらねーだろ。

 牧場は若干離れたところにあるので村の見どころは少ない。冒険者ギルドは無く、店も一つしかない。宿屋、食堂、売店を兼ねている。


 薬学と鍛冶のレシピは無く、武器や防具も売っておらず、代わりに料理や素材が多めに取り扱っている。なので料理の素材を買うのが良いかなっと、チーズが三万G、牛乳が四万G! 高かいよ! 高すぎ! これじゃ買って渡すなんて無理じゃん。


『あの、チーズ一個と牛乳十本下さい』


「こんなに高いのに買うの!?」

 シャルがスゲー値段の素材を在庫がある分だけ大人買いしてた。あの値段で平気で買えちゃうお金を持っているのも驚きだよ。


『ホールチーズは一個で四十個分のチーズになるのと、牛乳【大】も一本で百本分の牛乳【小】になるから……』

 なるほど、“酪農雑貨レシピ”で加工が出来るらしい。雑貨なのに牛乳を小瓶に分けたり、チーズをカット、牛乳からヨーグルトやバター、チーズなんかも作れる。雑貨で加工するとか意味が分かんないけど、まあいいや。

 小分けにした素材は“酪農料理レシピ”で料理出来る。生産は複数のスキルがあった方が効率が良くなるんだね、薬学と鍛冶は組み合わせ的に美味しくなかったかも。


 その後牧場に行ってミニゲームじゃなかった、乳しぼりクエストをして絞った牛乳の一割を貰った。あんな値段の素材を買うのは財布に厳しいし、敵からのドロップもたかが知れているもんね。

 ちなみにウエスマウンテンにいるバッファローから牛乳や牛肉が出るんだけど、前回は先生(マルグリット)師匠(ドワージン)と一緒だったからドロップしなかった、シャルとならレベル差もそれほどないし、サスの港に行った後に狩りにいっても良いかも知れない。




 で、ここがサスの港だけど、潮の臭いが若干する。ゲーム開発者のこだわりのポイントが良く分からないな。まあ細かい事は全然気に成らないから良いんだけれども。

 サスの港は漁港であって、ここから何処かに行けるわけでは無いらしい。チュートリアルと普通のマップが繋がってたら、それはそれでおかしいからね。


『カトウさん折角だから釣りをしてみませんか?』

 シャルの提案に同意し、初めての釣りを体験。竿の種類は全部で三種類、シャルはレンタル竿で、ゲーム内の(ゴールド)で買える初心者竿、私は課金ショップで買える釣り名人の竿を選択した。

 課金竿の良いところは、ヒットした時の釣果が多い、魚以外も釣れる、取得経験値が多い、放置釣りが出来る、等の優れものだ。魚以外が釣れるってのが凄く理解出来ないけど、ゲームだから、うんゲームだし、ゲームだもんね、全然気にしなかった。


『やった、やった、釣れましたよ!!』

 釣りを始めて二分もしない内に、シャルが魚を釣り上げていた。ゲームだけの事はある、この位簡単じゃないとつまらないだろうしな。私の竿もビクンビクンとあたりが来て竿が凄くしなる。


『すっごい、すごい引いてますよ、頑張って』

 これは大物だぞ、ちょっと良いところが見せれるかも知れない。


「任せて! いくぞ!」

 竿をあげると、な、なんと、金色に輝く物が!


『すっごい、カトウさん凄いですよ!』

 シャルが口元を抑え、屈んだ姿勢で笑いを堪えながら、結局堪えられず吹き出している。ヤカンを釣り上げて惚けている私の顔を見て。私もそれに釣られてゲラゲラと笑う。


 シャルは先にチュートリアに帰ったが、私はもう少しこの場所で素材集めと、周囲の探索をする事にした。釣った魚が料理の材料になるし、漁港は安全地帯なので、ログアウトした状態で放置釣りすれば、安全に経験値が稼げるからだ。魚以外のヤカン、長靴、桶、ガラス瓶、宝箱、等の釣果も馬鹿にならない。まだ宝箱は出ていないけど、ネットの情報では出るらしい。


 漁港のそばには村があり、やっぱり冒険者ギルドは無く、兼務しているお店がひとつあるだけ。武器や防具は販売しておらず、“海の鍛冶レシピ”が五千Gでだったので買ってみた。

 素材となる材料が貝殻とかあんまり手に入らなそうな感じがするし、出来るものも微妙なものばかりだけど、値段の安さが魅力的だったし、コレクションとして欲しいからね。

 でも貝殻ビキニの防具なんてちょっと自分では着たくないな、どうみても変態だし、シャルに着せる以外に活用方法が思いつかない。そっそれだ! ぐへへ。いかんいかん、常に紳士でないと。何故か貝から生石灰も作れるんだけど、活用方法が分かんない。


 PTプレイやプレイヤー間での取引が出来れば、もっと効率良く稼げるんだろうけど、現状だとこれが最善みたいだしな、早くGと経験値が欲しい。さらに村のNPCから釣りスキルを教わって、釣果のアップを狙う。それに折角熟練度が上がるのにスキルが無いと無駄になってしまうのは勿体ない、貧乏性だよなあ。

 あれ? もしかして、もしかしてだけど、タイトル見て何か期待しちゃった? しちゃったの? いや、まさかね、まさかですよね。信じてる、皆の事は信じているから、きっと紛らわしいタイトルで結果は違うんだろうと思ってましたよね。その通りでした。


 短編のお笑いも投稿しているので、そちらもどうぞ。


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