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腐男子御曹司の彼  作者: 一条由吏
第2章 現場にて
13/40

3.腐女子の想像力が凄すぎる

 嫌だ!


 見たくない。


 あの素直で可憐な後輩が嫉妬に狂っている姿なんか見たくない!!


 私の思いが天に届いたのか視界が暗転する。


 視界にキヒロ先生がスマートフォンを持った姿が映った気がする。












「栗本先輩! あっ起きた。先輩。大丈夫ですか?」


 目が覚めたときに目の前に後輩の心配そうな顔があった。


 そして誰かの手が鼻を押さえてくれている。興奮し過ぎて鼻血を出してしまったみたい。高さがあるし頭と背中に弾力を感じるから、誰かの膝を借りているらしい。


 お礼を言うつもりで視線をズラすと、そこには『西九条れいな』の姿があった。


 どういうこと?


「ダメよ。朝ごはんなんか抜いちゃ。ちゃんと食べている?」


 凄く優しく諭してくれる。


 私は身体を起こそうとするが少しでも頭をあげようとすると頭がクラックラする。貧血を起こしているみたいだ。


「ダメ。当分寝てなさい。こんなに血を出してしまったんだから。」


 視界に赤いものが映る。しかも私の鼻を押さえている『西九条れいな』の手どころか服の袖口も真っ赤に染まっている。


「ほらほら、あきえちゃんも座り込んでいない。冷えるわよ。妊娠中の身体には冷えが一番悪いんだから……。」


 そこでやっと自分の勘違いの正体が分かる。妊娠していたのは後輩だったらしい。












「ごめんなさいね。」


 ようやく鼻血が止まり、私が勝手に勘違いして頭がぐるぐるしたのが原因なのに『西九条』さんが頭を下げてくれる。


 後輩は未成年で『中田』さんと付き合うには「青少年育成条例」という壁があったらしい。『中田』さんが後輩に手を出せば警察に捕まってしまう。捕まらなくともアイドルの『中田』さんにとっては致命的なスキャンダル。


 しかも2人の仲を疑っている週刊誌の記者が常に張り付いていて当時は逢うのもままならなかったそうだ。そこで『西九条れいな』さんが一芝居を打って、後輩を連れた『お菓子屋十万石』さんと『中田雅美』さんを部屋に連れ込むことで2人を逢わせていたらしい。


「そんな何も『西九条』さんは悪くないじゃないですか、私が勝手にぐるぐるしていただけなんですから。それよりもお洋服弁償しなきゃ。」


「いいの大丈夫よ。こんなの簡単に落ちるわ。でもそうよね。あきえちゃんを心配する人間からすれば、私がしたことは鬼畜そのものだわ。あきえちゃんが結婚したときに世間に対して公表すべきだったのよ。」


「『れいな』お姉さまは結婚式で知人たちに全て話してくれたじゃないですか。それで十分です。こんなことを公表したら、これまで以上に叩かれてしまう。私のために叩かれるところを見たくないんです。お願い公表しないで。」


 片方は妊婦だが、まるで百合を見ているみたいだった。2人がそれぞれ相手を思いやっていて世界を作っている。


 私なんか勝手に後輩に癒しを求めて、勝手に怒って、勝手にぐるぐるしただけ。なんて恥ずかしいのよ。


「あのぅ。店長と『中田』さんはなんで、そこで正座をしているんですか?」


 キヒロ先生と『中田』さんが神妙な顔付きで剥きだしのコンクリートの上に正座させられている。


「昨日、『ガラスヤ』に行ったんですって?」


 『西九条』さんの話が突然方向転換する。


「ええ。それが?」


「そこの店長さんは『中田』さんから予約が入った前日に従業員を『ガラスヤ』に連れて行き。稲子(いねこ)さんのMCを聞かせることで笑うことを我慢しつつ接客ができるように教育していたらしいの。そのことを『中田』さんも知っていて了承していたらしいわ。」


 なるほど、だから私がマニュアル通りに席を外そうとしたときに止めたわけね。


「しかもそのネタで2人で飲みに行く約束までしていたらしいわよ。」


 はあ。キヒロ先生なら、やりそう。


「店長? 今日の鼻血のシーンも撮ったでしょ。」


「撮ってないぞ。」


 私の見間違いか。


「店長さんは倒れた貴女を見てスマートフォンを放り出していたから多分本当だと思うわ。」


 キヒロ先生が取り出したスマートフォンは無残にもガラスが割れてしまっていた。撮ろうとして狙っていたみたいだけど。


「すまない。まさか倒れることになるとは思わなかったんだ。」


 キヒロ先生は両手をついて謝ってくれる。


「本当に慌てていたわよ。右往左往するだけでお産のときの男性のように役立たずだったけど。」


 私よりも『西九条』さんのほうが怒っているみたい。このままでは収まりそうになさそう。


「私の変顔コレクションを全て削除してくれたら許してあげます。」


 あの鼻血のシーンだけでなく、ことごとく変な顔の写真を撮られている。それを時々スマートフォンで見て笑う。どんな顔をすればいいのか困ってしまう。


「嫌だ。」


 キュゥーン。


 本当は怒るところなのだろうが、胸がキュンとする。


 あれもこれも私の顔には違いないわけで本気で怒れないのよね。


妄想しすぎて変な誤解をしてしまったことは無いですか?

私は言葉にする前に思い直すことのほうが多いです(笑)


私も娘の変顔コレクター。

愛しているからこそいろんな表情が見たいものよ。多分。


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