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出来ること、出来ないこと

 セロンの話は大変為になった。だから、情報料としてセロン達に何かを残していきたかった。

 今、魔物が少ないのは私の結界のせいだし、この先どうなるかわからない。

 ならば、お礼代わりに魔物避けを作ることにした。

 まだ午前中だし、急げば午後の鐘の前に帰ってこれる。


 軽量化と体力増加魔法をかけて、その上に音消しの生活魔法をかけて柵を飛び越えて村を出る。

 木の上を飛ぶように移動して、ゴブリン達の集落に近付いていく。

 探知魔法を使うと見回りらしきゴブリンを捉えた。

 ゴブリン達が狩っているからか、この辺りは魔物が少ないので見分けはつきやすい。

 でも、見回りをしているということはゴブリン達が警戒しているということ。

 しかも、知恵があるということを証明している。

 本当に厄介なんだな。

 それを実感しつつ、見回りを回避して奥へと進む。

 薬草のあるところへとたどり着いてから、結界を誰も入ってこれないように強めてから、採集出来る限界まで採る。


 よし!あとは帰るだけ。


 緊張感を切らさないようにして、昼過ぎにこっそりと村へと戻ってくると借りた家の前に村人がいた。

 家の中を伺うように見ていたのでこちらから声をかける。


「何かご用ですか?」


後ろから声をかけられた村人はビックリしたようだが、私を上から下まで舐め回すように見てから口を開く。


「貴方は治癒魔法の使い手だと聞きました」


 隠すまでもないことなので、頷くと「治癒魔法を教えてください!」と大きな声で言う。


「えっと…あの?」

「今回のことで俺、思ったんです。村に治癒魔法の使い手か薬師がいないのはよくないって」


 言いたいことはわかるが、治癒魔法師も薬師もそう簡単になれるものではない。

 それに気づかず村人は興奮しながら喋る。


「俺、ちゃんと考えたんです!薬師は薬草がなきゃダメだけど、治癒魔法なら、なんにもいらないって!俺、一応魔力はそれなりにあるんです。だから、俺に治癒魔法教えてください!」


 今度は掴みかからんばかり距離を詰めてくる。

 それが怖くて、飛び退いた。

 村人が追い縋る。私が飛び退くを繰り返していると、サリが通りがかった。


「何してるんだい?」


 聞かれてもなんとも答えようがなくて、サリの後ろに逃げるようにすると村人が叫んだ。


「俺は治癒魔法を教えてほしいって頼んだだけなのに、その人が逃げるから」


 そうなの?と聞かれたので頷いたが、だから、話をさせろ!という村人の前からサリは退かない。


「治癒魔法を習いたい理由はなんとなくはわかるけど、魔力があっても最低でも半年はかかるよ。この人はそんなにこの村にいないけど、そこはどうするつもりなの?」


 え?と呆ける村人。

 多分、簡単に使えるようになると思っていたのだろう。

 そこを指摘されて勢いがなくなる。

 治癒魔法を最初から使えた私にはなんと言って断ればよかったのかがわからなかったが、お陰で助かった。


「な、なら、俺が覚えるまで村にいてくれれば!」

「その間の依頼料は払えるのかい?それにこの人を雇ってるのは村じゃない。私達だ」


 それも知らなかったのだろう。村人は言葉をなくした。


「治癒魔法を覚えたい気持ちがあるなら街に出てちゃんと習うんだな。それから帰ってきた方が村としても助かるだろう」


 どうやら、パパっと力を手に入れて英雄になりたかっただけの村人はサリを睨む。

 それから、無言でその場を去った。

 村人の背中が見えなくなってから私はサリに頭を下げた。


「ありがとうございます」

「ああいった手合いはどこにでもいるから。私らだってよく剣や槍を教えろって言われるし、依頼を達成した途端、武器を向けられることもある。あんたは若いし、力もなさそうだから狙われやすい。気を付けた方がいいよ」


 元々、荒事に関わるつもりは殆どなかったが、セロンから聞いた話が確かなら、気を付けた方がいいのはわかる。


「気を付けます」

「こういうことはさ、経験してみないとわからないからね」


 サリは声を潜めて続けた。


「それに明日出ていくんだろ?知ったら村の連中は引き止めようとしてくるだろうから気を付けなよ」


 それでわかった。きっとさりげなく気にしてくれていた。だから、丁度いいタイミングで助けてくれたのだろう。

 この人達を置いていくのは心苦しいけれど、私に出来ることはない。

 ここは割り切るしかないのだ。


 家に入って、早速魔物避けの薬を作る。

 行程は多いが、時間がかかる薬ではないので夕方には作業が終わる。


 あー、疲れた。

 背伸びして詰め終った魔物避けと作り置いて収納魔法の中にしまってあった治癒薬、体力回復薬、魔力回復薬をお菓子を入れていた木箱を取り出した。

 木箱は2つ。その中に薬を詰める。

 ひとつはセロンに。もうひとつはサリに渡すつもりで準備した。

 全部をセロンに渡すと村や兵に渡してしまうとがあるかもしれないので、同じパーティーのサリにも渡しておくことにした。

 セロンに渡す木箱は縮小化はかけるけれど、1日たてば解けるようにして、サリに渡す方は縮小化だけでなく、軽量化と保存の魔法もかける。

 その上で長期化の魔法もかけた。

 こうしておけば半年から1年魔法の持続時間が延せるが魔力の消費が物凄いので普段はかけたりしない魔法である。


 うー、怠い。これ、かけると怠くなるから嫌だ。

 常人ならば倒れてもおかしくないのだが、私はその事を知らないので、怠いな、で終わりだ。


 ご飯…いいや、面倒だ。

 とりあえず寝て魔力回復してから考えよう。

 用心のため収納魔法の中に木箱をしまってから、鞄を枕にベンチの上でマントを羽織って横になるとあっという間に眠りに落ちた。

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