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トラブル?

 夜明け前に準備をして出ていく人が多い中、私はゆっくりと起きた。

 食事をして、開いたばかりの市場で果物や食料を買う。

 桃に似た果実は瑞々しくてあっさりとした甘さだ。


 これ、クゥが好きそう。


 篭いっぱい買い占めると「おまけ」だとすももサイズの実がブドウの房になっている果実をくれた。

 こちらはとても甘い。

 でも、美味しい。

 ついでに、とこちらも数房買う。

 あとはお昼用の炊き込みご飯のようなものと煮物を買って、果実水も買ったら凄い荷物になった。

 でも、軽量化の魔法もあるし、人目につくところでは縮小化の魔法を使ってもいい。

 そうすれば、容量以上の荷物を持っていても疑われたりはしない。

 私の場合は収納魔法もあるのでどれだけ買っても苦ではないし。


 そんなことを考えつつ歩いていると昨日はなかった露店が目にはいった。

 サリーのような薄くて色々な色に染められている布を売っている。

 その中でも白と金がメインで染められている布に目が吸い寄せられた。


 きれい…。


 着るには派手だし、寝具やクッションにするには薄い。しかも旅で持つようなものではない。

 それでも、欲しいと思わせる何かがこの布にはあった。


「お嬢さん、この布が気に入ったのかい?」

「はい」

「これはね、海を越えてやってきたんだよ。ほら、この辺りでは見ないだろ?」


 確かに見たことがない。

 それに普段着にするなら丈夫なものだ。


「生地としちゃ上等さ。巾も長さもたっぷりある。ドレスを作るのもいいよ」


 これから長く旅をするし、収納魔法の中には布地も沢山入っている。それでもこれが欲しかった。


「幾らですか?」

「高いよ。金貨20枚だ」


 200万。いくら布地が高いといっても高過ぎるような気がした。

 それでも諦めきれなくて布を触る。

 多分、これは絹だ。

 それにこの染めにも手がかかっている。

 しかも海を越えて来ているならば、そのくらいでも仕方がないのかもしれない。


「わかりました。買います」


 値切りもせず買おうとする私を見て、露店商はおまけだ、と別の布もくれた。

 それを鞄にしまうふりで収納魔法の中に入れる。


 無駄使いなんだろうなぁ。でも、欲しかった。

 殆ど必要なものしか買わずに生活してるんだし、たまにはいいよね。


 自分に言い訳をしつつ、モンスターの肉を焼いた串焼きを食べながら、脚屋へと向かう。

 脚屋につくとクゥは運動場にいると言われたので向かうと嬉しそうに走ってきた。

 早速、桃に似た果実を差し出すと美味しそうに食べる。


「美味しい?こっちも食べる?」


 すももサイズの実もクゥは食べたが、桃に似た方がお気に入りらしい。


「甘やかされてんなぁ」


 脚屋が苦笑しながら、クゥに装具をつけてくれたので、篭に収納するふりで収納魔法でしまう。

 クゥが首から下げてる鞄に入っている携帯飼料もしまってから追加で幾つか携帯飼料を買ってから「お世話になりました」と挨拶して出発した。


 今回もクゥが走りたいように走ってもらう。

 どうやらクゥが目指しているのは遠くに見えている山のようだ。

 でも、まっすぐにその山に向かっているわけではない。

 興味のあるものを見つけたらあちらこちら見て回りながらだ。

 昨日の夜は村に泊まって久々にお風呂にはいった。

 脚屋はなかったが、乗合馬車に留まる村だったのでプロに手入れをしてもらってご機嫌なクゥと共にを出る。


「気持ちよかった?この先、村は減るし街道からは離れるみたいだけど平気?」


 何を心配してるの?というように鳴くクゥの首を撫でる。


「そっか。なら任せるから、よろしくね」


 任せて!というようクゥは鳴いてから走り出す。

 暫く村はないと聞いたし、こちらの方面に向かう行商人も少ない。

 クゥが向かっている山も豊かではあるが迷宮があるわけでも、手強い魔物がいるわけでもない。


 何かクゥが行きたい理由があるのかしら?

 ま、でも、いいや。


 急いでいるわけでもないし、行きたい場所があるわけでもない。

 クゥがわざわざ危険に飛び込ん行くとは思えないし、私を危険にさらすとは思えない。

 実際、クゥと旅をはじめてから危険はない。

 それにクゥは頭がいい。だからこれもきっと意味がある。

 そんな風に旅をして数日たった。

 街道も大分細くなり誰ともすれ違わない日もある。


「ここまで人が少ないところに来るのは初めてだなぁ」


 ずっと王都で生活していたし、乗合馬車が通るのは大きな街道なので小さな村といってもそれなりの規模なのだ。

 しかも、主要な街道なので人通りも多い。

 荷馬車も殆ど通らないような道は本当に初めてなのだ。


「もう少し行くと小さな村があるって言ってたけど、何か食べるものわけてもらえるかしら?」


 小さな村だとお金では食糧が買えないこともある。

 薬も調味料もあるから物々交換に困ることはない。

 もっと言えば、食糧を補給しなくてもいいのだが、まだ密偵がついていることと、人と交流して情報を集めておきたいという気持ちがあるのだ。


 どのくらい人が来るのか?とか、山の中で暮らすことは可能か?とか聞いたらおかしいかなぁ。


 そんなことを考えながらのんびり揺られていると右の森から争うような音がした。

 手綱を引くことでクゥに止まってもらい耳を澄ませる。

 武器の打ち合う音がしたので、そちらに向かって探知魔法をかける。


 動物達はその場から逃げるか、息を潜めている。

 戦っているのは人型の何かだ。


 私より小さいのが6体に、がっしりした男性が1人かな?


 6対1なのでかなり押されている。

 人同士なら関わらずに立ち去ろうかと思ったが、魔物と戦ってるならそうはいかない。


「クゥ、誰かが戦ってるの。助けたいから協力してくれる?」


 そう聞けば、くるりと振り返って、すりと頬を寄せる。


「ありがとう。目一杯軽量化と体力増強するね。あと、回復魔法もかけとく」


 とはいえどうしよう。

 戦うのは無理だけど、治癒魔法の眠りの魔法は絶対にかかるとは言えないし、起きてるのが魔物なら今、戦っている人もだけど、私もクゥもまずいことになる。

 雷魔法や土魔法もあるけれど、実戦で使ったことは殆どない。

 となると、…うーん、戦闘に乱入して、人を掴んで逃げる。

 これが一番かな?

 作戦とも言えないが軽量化の魔法があればきっとなんとかなる。


 一応、クゥにも作戦を説明すると、わかった。というように頷かれた。

 自分の体力も増やして目一杯軽量化して、軽量化魔法を待機した状態にしてクゥに走ってもらう。

 森の中ではあるが、クゥは飛ぶように走る。

 すぐに戦いの気配が大きくなる。


「見えた!」


 戦っているのは男性で、相手はゴブリン。


 緑色の肌を持った私よりの背の低い生き物。戦闘力は弱いが繁殖力は強く、その繁殖力で人の生存圏を脅かす。まれに突然変異で強い個体が生まれ、その場合、数もあり侮れない魔物である。瘴気の影響を受けやすいので危険度も高い。


 魔物図鑑に書いてあった説明が頭の中を流れていく。

 ゴブリンは剣。男性は斧で戦っている。

 ゴブリン達は戦い慣れているのかきっちり連携しているので男性は戦いにくそうだ。 

 しかも、本で読んだより強そうだ。

 軽量化の魔法は触らないとかけられない。

 身を乗り出して男性に触れやすくして、クゥに走ってもらう。


 突然乱入してきた私とクゥに一瞬戦いが止まる。

 その隙に待機していた軽量化魔法をかけて、そのまま掴んでクゥの上に引き上げた。


 う…重い。

 目一杯軽量化駆けてこの重さってなんなの。


 フルプレートの騎士よりは重くはないとはいえ、片手で持ち上げるのはキツい重さだ。

 それに気付いたのかクゥが男性を蹴りあげてくれたのでなんとか鞍の上に男性を引き上げることが出来た。といっても荷物のようにお腹を中心にふたつ折りな状態だが。


「よし!走って!」


 クゥが走り出すと、ゴブリン達が追いかけくる。

 それを土魔法と植物魔法で邪魔をする。

 最初ポカンとしていた男性もクゥにしがみついてくれているので走りやすそうだ。

 邪魔をしながらクゥが走りやすいように土魔法と植物魔法で足元を整えながら走る。

 ある程度して、ゴブリン達の気配を感じなくなってから、探知魔法を使ってみると、近くにはゴブリン達の気配がなかった。


「クゥ、もう大丈夫そうだから、どこか安全そうなところで止まってくれる?」


 ひと鳴きするとクゥは速度を落として、ちょうどよさそうな岩場を見つけて私と男性をおろしてくれた。



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