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悪役令嬢は、前世怠惰な魔法使い。  作者: 皐月乃 彩月
続章 そして、世界は大罪に染まる。
31/31

7話 ゲームはやるより見る派

超久々更新。

お待たせしてますm(_ _)m

 

『ダダダダダッ』


この世界には存在しない銃声が鳴り響くのは、いつもは静寂につつまれた寝室。

眠っているのが常であるマリアも、眠そうな眼を開いて色鮮やかに動く世界を眺めていた。


「これがげーむ。マリアお姉様達の居た世界は凄いですね。こんなものが魔法を使わずに作れるなんて……1度見てみたいものです」


義姉に関する事には興味津々のアリシュタは、この世界にない技術に目を輝かせて言った。


《……もう消滅してしまったから無理だな》


眠そうな眼をしたマリアは、口を動かす事なく直接相手の意識へと語りかけた。

まるで他人事のような口振りで語っているが、その世界を消滅させたのはマリア本人だ。

前の世界の方が文明が進み、便利ではあったがマリアにとってはそれだけだ。

マリアにとっては既にどうでもいい事になっていた。

僕を背もたれにしつつ、マリアはプロジェクターのような魔導具を携帯ゲーム機と繋いで大画面で鑑賞している。

銃を武器に戦うRPGのゲームソフトの出来はシナリオや操作性共に良かったが、携帯ゲーム機は既にマリアの手から離れ僕の手の内にあった。

いつもの事だ。

僕が主人公であるキャラクターを操作し、マリアはそれをぼんやりと眺めては寝たり起きたりを繰り返す。

ゲームを望んだのはマリアだけれど、操作は早々に僕へと移ったのであった。


「……すぐにこの世界の文明も発達するさ。あの守銭奴もいるからね。アレの能力なら、進んだ科学技術を幾らでもこの世界に持ち込める……何より、7人全員揃っている」


あの守銭奴は金さえあれば、ある程度何でも出来る。

このゲームだけでなく、この世界にない銃火器や食べ物なども用意出来る筈だ。


「相変わらず、お兄様は例の6人(・・)とやらがお嫌いですね。前に居た世界で何かあったんですか?」


僕の棘のある言い方に、アリシュタが首を傾げた。

アリシュタには詳しい事は知らせていない。

何も知らせなくとも、マリアの害敵であればアリシュタは排除するのだ。

こいつも大概に狂っている。


「……女王はマリアの命を、聖女はマリアの心を、悪霊はマリアの肉体を狙っている。他の3人はこの3人程ではないけれど、関われば厄介事に巻き込まれる。奴等は台風のようなものだ。周囲をかき回し壊し尽くす。嫌いになるなと言う方が無理な話だ」


吐き捨てるようにして、僕はアリシュタに教えた。


女王はその身の傲慢故に自らより上の存在を許容出来ない。

聖女はその身の色欲故に愛されないという事が我慢ならない。

悪霊はその身の嫉妬故に自らにない物を他人から補おうとする。


誰も彼もが罪深い。


誰も彼もが自分を中心に生きている。


奴等は世界にとって害悪なのだと。


「なるほど、確かにそれは目障りな連中ですね。お兄様がそれだけ嫌悪する理由が分かりました」


理解したと頷くアリシュタを見て、僕は心の中で自嘲の笑みを浮かべた。

話した情報は間違いではないが、僕が奴等を嫌悪する理由はそんな事ではない。

もっと醜くて馬鹿らしい理由だ。


奴等が目障りな存在ではあるがそれだけだ。

奴等がマリアを害する事なんて出来はしない。

誰もマリアを傷付ける事なんて出来ない。

奴等が世界にとって害悪であるように、それはマリアにも当てはまる。


マリアは何れこの世界も滅ぼす。

それが近い未来なのか遠い未来なのかは分からない。

けれど、間違いなくマリアはこの世界を滅ぼす事になる。


……好きだよ、マリア。

世界なんてどうなろうが構わない。

君の為なら何だって出来る。

何だって犠牲に出来る。


けれど、マリアと並び立つことが出来るのはあの6人だ。

僕じゃない。

僕にはその力も資格(・・)もない。


「……だから、誰よりも忌々しくて憎らしいんだ」


アリシュタに聞こえないような小さい声で、僕は呟いた。


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