7話 ゲームはやるより見る派
超久々更新。
お待たせしてますm(_ _)m
『ダダダダダッ』
この世界には存在しない銃声が鳴り響くのは、いつもは静寂につつまれた寝室。
眠っているのが常であるマリアも、眠そうな眼を開いて色鮮やかに動く世界を眺めていた。
「これがげーむ。マリアお姉様達の居た世界は凄いですね。こんなものが魔法を使わずに作れるなんて……1度見てみたいものです」
義姉に関する事には興味津々のアリシュタは、この世界にない技術に目を輝かせて言った。
《……もう消滅してしまったから無理だな》
眠そうな眼をしたマリアは、口を動かす事なく直接相手の意識へと語りかけた。
まるで他人事のような口振りで語っているが、その世界を消滅させたのはマリア本人だ。
前の世界の方が文明が進み、便利ではあったがマリアにとってはそれだけだ。
マリアにとっては既にどうでもいい事になっていた。
僕を背もたれにしつつ、マリアはプロジェクターのような魔導具を携帯ゲーム機と繋いで大画面で鑑賞している。
銃を武器に戦うRPGのゲームソフトの出来はシナリオや操作性共に良かったが、携帯ゲーム機は既にマリアの手から離れ僕の手の内にあった。
いつもの事だ。
僕が主人公であるキャラクターを操作し、マリアはそれをぼんやりと眺めては寝たり起きたりを繰り返す。
ゲームを望んだのはマリアだけれど、操作は早々に僕へと移ったのであった。
「……すぐにこの世界の文明も発達するさ。あの守銭奴もいるからね。アレの能力なら、進んだ科学技術を幾らでもこの世界に持ち込める……何より、7人全員揃っている」
あの守銭奴は金さえあれば、ある程度何でも出来る。
このゲームだけでなく、この世界にない銃火器や食べ物なども用意出来る筈だ。
「相変わらず、お兄様は例の6人とやらがお嫌いですね。前に居た世界で何かあったんですか?」
僕の棘のある言い方に、アリシュタが首を傾げた。
アリシュタには詳しい事は知らせていない。
何も知らせなくとも、マリアの害敵であればアリシュタは排除するのだ。
こいつも大概に狂っている。
「……女王はマリアの命を、聖女はマリアの心を、悪霊はマリアの肉体を狙っている。他の3人はこの3人程ではないけれど、関われば厄介事に巻き込まれる。奴等は台風のようなものだ。周囲をかき回し壊し尽くす。嫌いになるなと言う方が無理な話だ」
吐き捨てるようにして、僕はアリシュタに教えた。
女王はその身の傲慢故に自らより上の存在を許容出来ない。
聖女はその身の色欲故に愛されないという事が我慢ならない。
悪霊はその身の嫉妬故に自らにない物を他人から補おうとする。
誰も彼もが罪深い。
誰も彼もが自分を中心に生きている。
奴等は世界にとって害悪なのだと。
「なるほど、確かにそれは目障りな連中ですね。お兄様がそれだけ嫌悪する理由が分かりました」
理解したと頷くアリシュタを見て、僕は心の中で自嘲の笑みを浮かべた。
話した情報は間違いではないが、僕が奴等を嫌悪する理由はそんな事ではない。
もっと醜くて馬鹿らしい理由だ。
奴等が目障りな存在ではあるがそれだけだ。
奴等がマリアを害する事なんて出来はしない。
誰もマリアを傷付ける事なんて出来ない。
奴等が世界にとって害悪であるように、それはマリアにも当てはまる。
マリアは何れこの世界も滅ぼす。
それが近い未来なのか遠い未来なのかは分からない。
けれど、間違いなくマリアはこの世界を滅ぼす事になる。
……好きだよ、マリア。
世界なんてどうなろうが構わない。
君の為なら何だって出来る。
何だって犠牲に出来る。
けれど、マリアと並び立つことが出来るのはあの6人だ。
僕じゃない。
僕にはその力も資格もない。
「……だから、誰よりも忌々しくて憎らしいんだ」
アリシュタに聞こえないような小さい声で、僕は呟いた。




