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──ここに連れてこられてから、どれくらいがたっただろうか?
5年か、3年か……いやもしかしたら、1年であるかもしれないし、もっと短いのかもしれない。
私の体内時計は最早正常な機能を失い、私の精神は一種の破綻を迎えた。
だから、私は身体は生きてはいるが、精神は既に死んでいるのだろう。
ぼんやりと永遠にも続くかのような時の中で、ふとそんな風に考えた。
「家畜風情がっ……! 覚えておれ、いつか必ず妾がっ……!」
大人達が出ていった部屋で、ぶつぶつと少女達の憎悪に充ちた声が聞こえる。
子供達の悲鳴が聞こえるこの部屋で、怒りを維持し続けられる子供はそう居ない。
私が知っている中だと、この少女を除いて5人だけだ。
最近、新しく連れられてきた少女。
この少女は、いつまで絶望せずにいられるだろうか?
私は沢山の管に繋がれた自分の身体に一瞬目を向けると、ゆっくり目を閉じ意識を沈めた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「──貴様は何時までそこで寝ているつもりなのだ?」
かけられた声に目を開けると、室内の顔ぶれは大きく変わっていた。
どうやら、少し眠り過ぎたらしい。
知った顔は、6人しかいなかった。
「む?……どうやら、目を覚ましたようだな」
私に声をかけたのは、前に理不尽に怒りを燃やしていた少女だった。
少女はまだ絶望に堕ちていないようだ。
だからこそ、他の多くが壊れ死にゆくなかで生き残っているのだろう。
「おい、“寝るな”。妾が話し掛けているというのに、無礼であろうが」
再び沈みそうになった意識が、少女の声によって繋ぎ止められる。
抗う事も出来たが、何となく意識を浮上させた。
……これが少女の能力であろうか?
ここに集められた子供達は、何かしら特別な能力を持っていた。
私は包帯だらけの少女に、目を向けた。
「貴様は何故ここにいるのだ? 貴様ならあの家畜共を始末して、此処から出ていけるのだろう?」
少女は私に問うた。
私は今生き残っている中では、恐らく最も古株だ。
故に、他の誰よりも壊れてはいるが完成されている。
少女の予想通り、私は何時でも出て行ける。
けれど、それに何の意味があるのか?
私は久しく動かしていなかった表情筋で、少女に笑みを向けた。
私の嘲りや憐れみが入り交じった笑みに気付いた少女は、眉をしかめて此方を蔑んだ目で睨み付けてきた。
「何もせぬなら、家畜よりも劣る。妾は唯一にして頂点、いつまでもこのような場所に留まるつもりはない」
それだけ言うと、少女は興味が失せたのか私に背を向けて離れていった。
強い少女だ。
確かに他とは一線を画するだろう。
けれど──
少女は此処を出て何処へ行くと言うのだろうか?
此処を出て行ったところで、私達に帰る場所は何処にもないというのに。




