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王女殿下の補佐官は、ため息をつきたい。  作者: 桜の浜


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補佐官は、手を結ぶ。

「ステラ、楽しんできたか?」


 声をかけてきたのは、レストレード監査官だった。


 私は無言だった。

 もちろん、上司に対して失礼だと思う。

 けど、レストレード監査官は私の状況を知っていて言うのだ。

 悪気もなく。

 ちょっと腹が立つ。


 これがエセリン監査官だったら、


「大変だったわね。お菓子でも食べる?」


 とか言ってくれる。

 お菓子が食べたいわけじゃないんです。

 優しさが欲しいのです。

 さらにお菓子があれば、なお良いです。


 レストレード監査官には、その両方がない。

 そういうところが大事なのです。

 そんなことだと、シャーロットさんに嫌われますよ。

 まあ、シャーロットさんはそんなことを気にする性格ではないですけど。

 二人の関係もよくわからないけど。


 私は買ってきたお土産を無言でレストレード監査官に渡し、自分の席に座る。

 いつも隣にいるエドガー先輩がいない。

 今日から休暇に入られたようだ。


 隣の机の上が綺麗だ。

 私の机には書類が溜まっている。

 エドガー先輩からのメモが机に貼ってあった。

 やっておいた書類と、もし来たらお願いする書類とかだった。

 了解しました。

 レストレード監査官の書類よりも最優先で行います。


 ここに来て、私は書類の片付け方、処理の仕方のコツがわかってきた。

 レストレード監査官、シャーロットさん、魔導学園関係は後回しにする。

 たまに最優先でやらなければならないものもあるが、その時は周りの雰囲気でわかる。

 それ以外は慌てない。


 まず、レストレード監査官の書類はレストレード監査官の仕事なのだ。

 私のではない。

 やらないわけではない。

 私に余裕がある時に行うことにした。

 たとえ周りに言われようが、私のせいではない。

 しかも、あの人の管轄する事件は事が大きいので、さらに時間がかかる。


 だから、仕方がないのだ。

 事件の解決を有耶無耶にすることが多くて、さらに心が落ち着かなくなる。

 報告書を書いていて腹が立つことが多い。

 ほんと、疲れる。

 レストレード監査官が書きたくない気持ちもわからなくはない。


 シャーロットさんに関しては、報告書と始末書が合わせて来る場合が多い。

 みんなわかっている。

 だから、もうこの人の関わったことは書かなくていいのではと、私は思い始めている。

 シャーロットさんにはあまり催促しない。

 それでもワトソンさんが定期的に書類を持ってきてくれるから助かる。

 そして、美味しいお菓子まで持ってきてくれる。


 ワトソンさんは、私の精神安定剤です。

 学園に行くのは嫌いじゃないので、定期的には行く。


 すみません。

 愚痴っていました。

 休暇明けの仕事で、まだ頭が慣れていません。

 もちろん、やります。

 そう、仕事です。


 昨日あったことも、一応報告書に書いている。

 ほぼ無関係だと思うのですけど。

 立ち会ってしまったからしょうがない。

 外務調査局が関わっているので厄介だった。


 セドリック・ホーソーン。

 外務調査局、第二調査課主任調査官。


 私はあまり他局とのつながりはない。

 今後ともよろしくとも言われたけど、関わりたくない。


 魔法省の闇。


 魔法都市ロンドンの治安と安定を保つために存在する組織。

 別に正義の組織でもない。

 働けば働くほど見えてくる。

 外からは見えない実情が。

 それは闇だ。

 夜まで明るくする技術があるのに、闇は広がり続ける。

 この魔法省全体にもある。


 お昼。


 いつものカフェに行く。

 今日は新作を食べる。

 これは、また変わった味だ。

 次はないかもしれない。

 全部食べて何なんだけど。


「おいしそうに食べるな」


 私の席の向かいに男が座った。

 セドリックだった。


「何の用ですか? 報告書には書いていませんよ」


「ああ、助かったよ。ありがとう。いろいろ手続きが面倒だしな」


 私は昨日の事件のことで、外務調査局のことを省いて書いた。

 どうせ上で消されるのだ。

 シャーロットさんだったら、詳細に書きそうだけど。


「密輸を行っていたのは、ある組織だ」


「その組織は、この街のもう一つの闇だ。残念ながら、まだ全体像が掴めない。しっぽは捕まえられる。それ以上はまるっきりわからない。まるで、そこだけで犯罪が完結しているようだ」


「国内の組織なのですか?」


「最初は国外の調査で見つけた。調べていくうちに、国内に拠点があると考えている」


 セドリックは店員さんにコーヒーを頼んでいる。


「だから、貴方がこちらで調べているのですね」


「ああ、そうだ。外務調査局だからといって、国外だけ対応するわけじゃない。国内の調査もする」


 私の心に軽い痛みが現れる。

 いつまでも忘れることができない。

 たまに思い出す。

 痛みだ。

 私はきっと、それをずっと抱える。

 でも。

 それこそが私の仕事だから。


「それで、わざわざ会いに来られた理由は何ですか?」


「君と仲良くなるのは悪くないと考えた。君の周りには、君が思っている以上に重要人物がいる。だからさ」


「外務調査局の人なのに、正直に言うのですね」


「外務調査局の人間だからといって、嘘ばかりついているわけじゃない。まあ、そういう奴らがいることはいる」


 私はセドリックのことは嫌いではない。

 怪しいところや、何かを隠しているところはある。

 ただ、きっと根が誠実なのだろう。

 私の周りの変わり者たちから見れば、まだ可愛い方だろう。


「わかりました。では、今後ともよろしく」


「お、よろしくな。ステリーって呼んでいいか?」


 何、その変な言い方。


「ダメです」


 即答すると、セドリックさんは寂しそうな顔をした。

 私に怒られた時のモフモフに似ている。


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