ランズインダストリクス
豪奢な部屋で少女ーーランズインダストリクスの令嬢であるミュウ・ランズは水晶を見ながら微笑んでいた。
水晶には寿命が尽きて事切れた強化騎士の青年と泣き崩れる母親だろう女性が写っている。
「いいね。青年の母親を守ろうと善意で、母親に最愛の息子の損失と改造技術で生じた莫大な借金を背負わされることができている。ここまででもまあまあの胸糞だ」
自分が父親をそそのかして実行させた民の強化騎士化計画が上手く行っていることに満足すると、水晶に母親がナイフを握っていることが写っているのを確認して、ミュウは凝視し始めた。
「ヤるのか!? まさかヤってしまうのか!!」
興奮してミュウが水晶にへばりつくと、母親はナイフで喉を引き裂き、命を絶った。
「あっ。 あっ。 あっ。 あっ」
ミュウは唐突に訪れた極上の胸糞で、興奮が絶頂に達し、白目を剥いて痙攣する。
余韻がなくなり、起き上がると次の胸糞の現場を目撃するために、国の各所に設置された水晶の映像を切り替える。
「全く『アーマード・ファンタジー』は最高だな。一番いいのは最新作の6だったけど、2でも十分だ」
前世では最新作『アーマードファンタジー6〜ファイアーズ オブ ハッピーエンド』を最高だと評価し、シリーズ内では比較的胸糞の要素の薄い初代の次に2は糞だと思っていたが、実際に2での胸糞を堪能したことでミュウは評価を修正する。
「ミュウちゃん、今いいかな?」
水晶の映像をどれにしようかと迷っていると、ノックと共にランズインダストリクスの会長である父ーーサム・ランズから声を掛けられ、ミュウは水晶の映像を消す。
「大丈夫ですわ。お父様」
「じゃあ入るね」
入ってきたサムの表情が芳しくなかったことで、頼みごとは失敗したことは悟った。
「残念だが、ヴィラン辺境伯はとんだ無礼者でね。私が誘っているというのにあまつさえ誘いを断ったんだ。だからミュウちゃんのお願いに答えられなくなってしまった」
「お父様は悪くないわ。断る辺境伯が唐変木なだけですもの」
内心使えねえなと毒づきながらも、ミュウはサムを励ます。
「ミュウちゃんはいい子だなぁ♡ パパがお仕事を頑張ってもっとミュウちゃんを幸せにしてあげるね♡」
「お父様、大好きですわ」
ミュウがサムの頬に口付けをすると、デヘデヘしながらサムは部屋から出ていった。
「前世がおっさんで本当に助かったな。おっさんの喜ぶツボがわかるから、思いのままにできる。チョロいもんだ。 ヴィラン辺境伯の件は只の興味からで、これ以上深追い理由もないし、もう放っておくか。それよりも胸糞鑑賞の方が大事だ」
ストーリーと外れた動きをしていることで転生者だろうと目星を付けているヴィランが、どうして胸糞とは真逆の動きをしているのか、興味を抱いていたが、聞き出す手立てを失ったこともあり、ミュウは興味が失せ、再び水晶の方に関心を戻した。




