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第二章第一話 辛い時は弱音を吐かずに現状打開する努力をしよう

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本日のニュースです。

房総地域を支配する暗部組織リベリオンにて大きな動きがあった模様です。

総裁を名乗る豊橋勝也氏が総裁を退任する可能性があると表明したことが今朝分かりました。


「我々リベリオンは働き者の日本国民に幸福をもたらすため尽力して参りましたが、この度は組織内で分裂が生じております。

日本政府にさえも敵対しようと考える武闘派達が組織の在り方に異議を唱えた。

なので私は全組織メンバーで総裁選挙を行い、その結果によっては総裁を辞任するつもりです。」


豊橋氏は動画サイトTtubeにてこのように述べました。

また、総裁に立候補すると思われるもう一人の候補者の情報も入ってきました。

浅風竜義氏です。


浅風氏は日本政府に対して敵意を持つ人物と言われており、不満があれば武力行使をも躊躇わないとも言われています。

先週川崎市内に設置されたカメラから大規模な戦闘が対岸の房総地域で起きているのが確認できましたが、これについても浅風氏が企てたものであるとされており、事態の把握を急いでいます。


「本日はゲストとしてモデルやタレントとして活躍されている佐倉奈々さんにスタジオにお越しいただきました。佐倉さん宜しくお願いいたします。」


「宜しくお願いします。」


「浅風氏がリベリオンの総裁となる可能性があるということなのですが、そうなりますと大規模な戦争が起こるという可能性も否定できないという状況になるということなのでしょうか。」


「はい、可能性としては十分考えられると思いますね。」


「ちなみに佐倉さん、佐倉さんは浅風氏の同級生で過去には親交もあったとお聞きしているのですが、浅風氏というのはどのような人物なのでしょうか。」


「えっと・・・、私の知る彼は普通の心優しい少年でした。大人になってからはほとんど会っていないので分かりません。」


「浅風氏は気に食わないものには容赦しない性格と聞いているのですが、やはり佐倉さんの知る浅風氏もそのような人物だったのですか?」


「…いえ、わかりません。彼について言えること昔は普通の人だったということだけです。それ以上のことはわかりません。」


「佐倉さん的に浅風氏はどのような・・・」

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銀河がテレビを切った。

「ああもう見てらんねえ。ヤラセにも程があんだろ」


「奈々さん可哀想・・・」

ドリームレッドが奈々の家に来ており一緒にテレビを見ていたのだった。


大人出雲も奈々の家に来ていた。

「奈々ちゃん、マスコミに浅風との関係を知られて、断れなかったんだ。」



<数日前>

テレビ局の職員が奈々を訪ねて来た。

「UBSテレビの名波なはと申しますが、佐倉奈々さんはいらっしゃいますか?」


俺は大人奈々を呼んだ。

「奈々、UBSテレビの名波さんが話をしたいって」


「え?誰?知らないんだけど。」


大人奈々が玄関に出ると、名波は大人奈々に名刺を渡した。

「佐倉さん、初めましてUBSの名波と申します。」


「ええ、はじめまして」


「佐倉さん、ここだけの話ですが、今噂の浅風氏と交際していたことがあるようですね。」


「なんの話でしょうか?そんなことはありませんけど。」


「誤魔化しても無駄ですよ。佐倉さんの同級生の方がはっきりと証言してくださいました、それに証拠写真まで、ほら。」

奈々と浅風と奈々の親友であった、池山三洲穂いけやまみずほと三人で写っている写真を名波は大人奈々に見せた。


「三洲穂なんてことをしてくれたの・・・」


「まあまあ、お友達を責めないでください。それよりこんなことをしたのは佐倉さんにお願いがあるからなんです。」


「ロクな話じゃなさそうね。」


「いえ佐倉さんにとってもおいしい話ですよ。今度、浅風氏の同級生ということでうちのニュース番組にゲストとして出ませんか?」


「なぜ急にそんな話を?」


「浅風氏は総裁になったら戦争を起こすのではと騒がれています。だからこそ浅風氏を利用してテレビに出れば一躍有名になれますよ。

すでにモデルとしてそこそこ有名ではございますが、テレビにでれば知名度は一気にあがります。浅風氏と交際していたことは秘密にしますから。

ね、悪い話じゃないでしょう?」


俺はその話を聞いていて、名波を怒鳴りつけてやったのだ。

「おい、いい加減にしろよ。そんな汚い手を使って奈々を苦しめるなんて許さない。」


「いえいえ、苦しめてなんかいませんよ。」


「苦しめてるだろうが!あんたは同じようなことされて嬉しいのかよ?」


「いえ・・・それは・・・」


思いもよらぬことに大人奈々は俺を制止した。

「もういいよ浅風、ありがとう。」


大人奈々は今度は名波の方を見る

「今回の件、受けさせて頂きます。」


俺は思わず「なんでだよ」と叫んだ。


「ですが、先ほどの秘密を公開するようなことがあれば二度と依頼は受けませんし、最悪裁判にさせて頂きますので。それでも宜しければ。」


名波はニヤリと笑った。

「分かりました。ありがとうございます。」




大人浅風は疲れ果てた様子で彼女の歩美と同居するマンションに帰宅した。


「お疲れ様。顔色悪いよ、大丈夫?」

歩美は浅風を心配そうに見つめた。


「今回ばかりはちょっと無理かもしれない・・・」


「そんな・・・。大丈夫、たっ君ならできるよ。」


歩美は浅風にお茶を入れた。

「あ、そう言えば今日ニュースに佐倉奈々が出てたよ。」


「何!?俺の悪口を言いたい放題言っていたのか・・・?」


「ううん、コメントできませんって主張をずっと貫いてた。思ってたよりいい人だね。」


「そうか…くそ!もうダメだ、どうしていいか分からない…。」


「革新派の仲間達に相談してみたら?一番信頼おいてるんでしょ?」


「いや、だめなんだ…。あいつらももう俺のことを信用していない…」


「え??なんで?」




<数日前>

タカヒロが革新派のメンバーの先頭に立って大人浅風に問い詰めた。

「浅風さん!何考えてるんですか?豊橋を殺さずに要求を受け入れるとか!全部豊橋の思う壺じゃないですか!!」


「すまない…」


「すまないじゃないですよ!俺達、豊橋を倒すためにこうして集まったんですよね?なのに豊橋をみすみす逃がしてこのザマ!

ミシェルも俺も命かけて戦ったんですよ…なのに本来の目的を忘れて!何ですかこれは?今やあなたがテロリストだとか全国に放映されて、これではもう浅風さんにはついて行けませんよ…」


それからも「選挙なんか必要なかっただろ」「殺せば良かっただろ」という批判や「能無しが」「騙しやがった」などの罵倒が浴びせられた。

革新派は崩壊寸前の状態であった。

過激な者は浅風への不満を抑えきれず放火事件を起こす者までいた程だ。




深夜、浅風のマンションのインターホンが鳴った。


「誰?こんな時間に?」

歩美が出ようとするが、大人浅風が止めた。

「待て、俺が出る。下手したら殺されるかもしれないからどこかに隠れていろ。」


浅風がそっとドアを開けると、傷だらけの女を抱えて、ある女性が立っていた。


「…ミシェル!?」

彼女は体中傷や痣だらけのミシェルを抱えた、諸星あさみであった。


「説明はあとでするから、ミシェルさんをお願い。」


「いいから上がれ。すぐに手当てする。」


歩美はミシェルの手当てをした。

大人浅風はミシェルにそっと声を掛ける


「何があったんだ?どうしてこんなことに…」


「ごめん…、私、革新派のみんなを説得しようとしたの。ここで浅風を責めても豊橋の思う壺だし、浅風は最善を尽くしたんだったって。

そしたら…むしゃくしゃするっていう過激派の連中にやられて…」


大人浅風はミシェルを力強く抱きしめた。

「すまない…、すまない…。全部俺のせいだ。」


大人浅風は「少し一人にさせて欲しい」といい自室に籠ろうとした。

そこを歩美が腕を掴んで止めた。


「最近のたっ君、凄く情けないよ。毎日毎日愚痴と弱音ばっかり…。」


「わかっている…」


「なんで!?なんでみんなたっ君の周りの人達がこんなに苦しんでるのにあなたは閉じこもって傷心しようとしてるの?

私にはいつも『周りの言うことなんか気にする奴が馬鹿だ』とか、偉そうに言うくせに癖に、自分が追い込まれたら逃げるの?」

歩美は涙目だった。


「歩美…」


「悲しいよ。何があってもお前を幸せにするとか口では格好いいことばかり言うけど結局は口ばっかり、いつからそんな情けない人になったの…?」


「俺だって本当はこんなつもりじゃ…」


「もう…情けない顔するのやめろ!!」

歩美の声は部屋中に響き渡った。

浅風が歩美と出会ってから彼女が怒鳴ったのは初めてだった。


「例え世界の全てが敵でも俺は俺と俺の仲間を守るってのがあなたの口癖だった。そう言ってた頃のたっ君は凄くかっこよかった。

だけど今は何?自分だけ守ろうとして他の人は振り回されてもお構いなし?違うでしょ!!本来のあなたならこんな状況鬼のような形相で変えて見せた。

有言実行しなさいよ…あなたは本来できる男でしょ!!都合の悪い時だけ現実から逃げないで!」


「…」

大人浅風は黙って壁を思いきり殴った。


そんな様子を見た諸星が大人浅風に声を掛ける。

「浅風はもう選挙に立候補するのを諦めた方がいいよ。じゃないと世間の反発が収まらない。」


「だが、そうすれば豊橋の望み通りだ。おまけに危険分子を失脚させたってことになって、豊橋の世間の評判が上がる。全部奴の理想通りになるんだぞ。」


「だったら私達が諦めなければいい。」


「何?」


「浅風が諦めても、私達が諦めなければ革新派は存続できると思う。

この状況で失態を犯した浅風に反発するってことは彼らが組織改編を望む気持ちは冷めてないってことでしょ。」


「俺の代わりに革新派のリーダーを立てろというのか。」


「うん、それが一番いいと思う。豊橋との約束なんてあってないものだし、選挙で豊橋を敗れるなら、それが誰であっても正当な組織の総裁になれることには変わりないでしょ。」


歩美に支えられてミシェルがやって来た。

「私が、私が選挙に出る。」

いつも弱気なミシェルが力強い目つきで大人浅風をじっと見つめた。


「簡単に言うな。今は全員が敵なんだぞ。そんなことをすればいつ命を狙われるかすらわからないんだぞ。」


歩美が浅風に語り掛ける。

「ミシェルちゃんに任せてみたら?ミシェルちゃんはたっ君と違って、たっ君が逃げてる敵に立ち向かったよ。それでもまだリーダーの地位は自分が守るべきだと思ってるの?」


「そういうことじゃない。俺はもうこれ以上仲間を傷つけたくない…。傷つくのを見たくないんだ。」


「大丈夫。自分と自分の仲間を守れればいいんだよね?」

ミシェルは腫れあがった顔でにっこりと笑った。


「私、今まで生きてて楽しいって思ったことなかったんだよ。でも革新派のみんなと出会えて毎日楽しいなって思えるようになった。だから私は守って行きたい。浅風も、浅風が大事にしている仲間も!」

ミシェルの決意は固かった。


ミシェルの成長は能力の強さだけではなかった。

彼女が革新派のメンバーになる前は自分の意思を押し殺して生きていた。

しかし、メンバー一人一人の気持ちを大切にする浅風の元で自分の意思に従って生きていいと学んだのだ。


大人浅風は薄ら笑みを浮かべた。

「なんだよ畏まって。元々組織を託せるのはミシェルしかいないさ。」


「浅風…」


「後は任せたからな!」


こうして、大人浅風はリベリオン総裁選への出馬を辞退し、革新派のリーダーの座もミシェルに継承することとなったのである。


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