修羅場・・・?
「ジーク様、やりましたよ!」
広間に低い声が響き、ジークと呼ばれた男が口を開く
「よくやった、フォース。ルミアという女の魂はこの世界の者と異なる。それにジンの血が流れているあのガキも危険だ。今は良くてもいつかは我々の復活の邪魔になる。危険因子は排除するに限るだろう。」
「ジーク様、我々の魔力はいつ回復するのでしょうか。」
「もうすぐだ。あの女の魔力を吸い取りでもすればすぐにでも完全に復活できる。あれは人間側に置くには惜しい存在だな。勧誘でもしてみるか。」
ジークは笑みを浮かべる。
「いいですねぇ!あの女、操っているヤツ目線で見てみましたが、とても美しかったです。あれは人間離れした美しさだったなぁ。」
「ほう。そうか、女にうるさいお前が言うなら相当の者だろうな。私も見てみたい。・・・サード!」
ジークが何もない空間に呼びかける。すると、空間が歪む。
「お呼びでしょうか。」
「ああ、フォースが監視している美しい女を連れてきてもらいたい。できれば無傷で、だ。」
「女・・・?ああ、髪が長い人間ですね。」
そう聞いたジークはため息をつく。
「・・・お前、もう少し人間に興味を沸かしたらどうだ?」
「私の目にとまる人間がいないのですよ。すべて同じ顔に見えます。」
「・・・そうか。」
顔は魔族の中でも上位なのに、と広間にいた誰かが呟く。
「では頼んだぞ、サード。お前の能力には期待しているからな。」
「もったいないお言葉です。」
そう言ってまた空間を歪ませて消える。
「ゼラル、行くよ!」
「やだ!本当に無理!!」
ゼラルが私の寮に入ろうとしない。というか学院の部屋からも出ようとしない。まあ、そうだろうね。
「なんで僕がこんな格好を!!」
「ごめんって。私の寮、男子禁制だったの忘れていたのよ。それに、似合っているわよ?」
「だーかーら!嬉しくないんだってば!!」
耳まで赤くなって柱にしがみついている、女子の制服を着たゼラル。かつらとかも被せてるからめちゃくちゃかわいいのよ。本当に。でも・・・
「いいじゃない。寮に着いたら取ればいいんだから。」
「それまでに誰かにバレたら僕は笑い者だよ!」
「絶対にバレないわよ。保証するわ。それより私はゼラルに一目惚れする人がいないか心配。」
そう言うとゼラルはぶるっと身を震わせる。
「・・・なんか寒気がした。っていうか本当にバレない?」
「バレないって。ほら行くわよ。」
「う、うん・・・」
やっと腹を括ったわね。普通にかわいいのだから平気よ。・・・でもチラチラとこっちを見てる人がいるわね。
「ね、ねえ。本当にバレてないよね?」
小さな声でゼラルが尋ねてくる。
「大丈夫よ。バレてたら笑われてるはずだわ。」
「そ、そっか。そうだよね。」
「着いたわよ。ほら、入って。」
「うう、寮の管理人さんの視線が怖かった・・・」
ゼラルはかつらをとった。重かったのかしら。私はドアを開けてゼラルを部屋に入れる。
「おかえりールミアー。あれ?その人、だれ?」
「え!?だ、だれ!?」
あー、どっちにも言い忘れていたわ。
「それはこっちのセリフ。君、男でしょ。ルミアから離れてくれない?」
え、リュカの声のトーンが低くなってる。もしかして人間が嫌いなのかしら。いや、でも私には普通に接してくれるしなぁ・・・
「なんでルミアの部屋に男がいるの?」
「・・・なんか言い方に語弊があると思うのだけれど。」
これじゃ前世でよく見た浮気女の修羅場番組みたいじゃない。男って言っても小学生くらいじゃないの。っていうかどっちにも暗いオーラが見えるような・・・
「「ルミア、どーいうこと!!」」
「落ち着きなさいって。」
これはちょっと疲れそうね。




