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最弱職の魔法戦士  作者: 悠久ヒロ
第一章
9/25

ラリヤト魔術学園①

 俺が瞼を閉じたのは俺は寝ていて、何処からか魔術が飛んできて盗賊男3人を倒した。っていうことにしたいからだ。


 うーん……違うな。魔術じゃなくて石でいいや。


 突然飛んできた石が当たって盗賊達は倒れた。っていう設定にしよう。


 俺はそこら辺に落ちてた石を風魔術を乗せて飛ばした。



「うぐっ……!!」


「あが……っ!!」


「ぐぇっ!!」

 鈍い音がしたあと男3人は地面に倒れた。


 俺の石は見事男3人に命中したようだ。おっちゃんに当たらなくてよかった。


「は……ぇ……?な、なんでこいつら急に……?まさか石で?」

 おっちゃんは石が当たっただけでぶっ倒れた男3人を驚きながら見た後、大慌てで馬車を動かした。


 ……作戦は成功だ。


 誰に見られることも無く盗賊を遠ざけることが出来た。


 おっちゃんはふと後ろに乗っていた俺を見たが「まさかな……」と呟いて前を向き直した。





■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪





「坊ちゃん。着きましたよ」

 俺はおっちゃんに揺さぶられて瞼を開いた。


「……あ、すみません。心地よくてぐっすり寝てました」

 俺は照れながら頭をかいた。当然、盗賊が来てからは寝ていない。


 また、出会ったら面倒臭いし周囲を警戒していた。


 ……腕は包帯をまいて応急処置をしたんだな。


 俺が腕を見ていたのに気付いたおっちゃんは服の裾で腕を隠した。

「これは来る途中で木の枝にひっかけちゃってね……気にしないでおくれ」


「あっ、そうなんですね。お大事に……」

 このおっちゃんいい人だな。


 俺が怖がらないようにしてくれたのだろう。


「それじゃあ……お世話になりました」

 俺は行儀よくお辞儀をしておっちゃんに礼を言った。


「はいよ。頑張ってきてね」


 おっちゃんに見送られた後、俺は門番の人に身分証を見せて門をくぐった。



(そう言えばあの坊ちゃん盗賊が来た時も寝ていた上に、ずっと寝ていたから余程疲れていたのかな……)

おっちゃんは不思議に思いながらも、馬車を動かした。





■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪




「王都に来るのは久々だな」

 魔術学園を目指し歩きながら呟いた。


 最近ノアの訓練が厳しくて来る暇が無かったからな。


 そして、俺が今から向かうのは、ラリヤト魔術学園だ。なんでも、伝統的な魔術学園らしい。


 生徒数がおよそ1000人いて、その中には歴史に名を残す可能性がある者もいるそう。


 ミハラ王国の第一王女である【アリエル・ミハラ・ラーニー】もラリヤト魔術学園に通っている。


 第二王女である【ユマ・ミハラ・ラーニー】は俺と同い年で今日俺と同じように試験を受ける。


 調べて分かった事だが、第一王女の魔力量や威力は平均を大きく上回る実力らしい。


 俺が直接見たわけじゃないから詳しくは知らないけどな。


 それに比べて第二王女は平均そのものと聞く。同じ姉妹なのに何故こんなにも違うのだろうか?と資料には批判的なコメントも書かれていた。


 正直俺としては、比べるのはどうかと思うけどな。


 そんなことを考えながら歩いていたら、大きな門が見えた。


 王都の入口の門と比べたら小さなものだが、装飾一つ一つがとても綺麗だ。


「受験者の方ですね?こちらへどうぞ」

 俺は在校生と思しき人物に連れられ校内に入って行った。


「こちらに入り、中で監督の先生の指示に従って下さい」

 在校生にそう言われ扉の前まで来た。


「分かりました。有難う御座います」

 俺が礼を言うと、在校生は会釈をして持ち場に戻って行った。


 扉を開けると沢山の椅子と机が並べられている。もう来ている生徒も多く居た。


 俺は受験番号を片手に指定席へ座り、試験開始時間まで勉強をしながら時間を潰した。


 数十分後、筆記のテストが行われた。ノアと一緒にちゃんと勉強したから大体わかる。


 というか、ノアが解説してくれた問題は大体あるな。絶対しがない教師じゃないだろ……対策完璧過ぎないか?


 まあ、この学園は筆記よりも実技重視の学園だからな。筆記で多く点を取っても実技が悪かったら当然落とされる。だから筆記は普通にやっても大丈夫だろう。


 俺は解答欄を取り敢えず全て埋めて筆記試験を終えた。


 次は肝心の実技試験だ。


 上手く力をコントールしなくてはならない。今日1集中しなければならないな。


「それでは皆さん。今から実技試験会場に行くので私についてきて下さい」

 解答用紙を集め終わり、封筒に入れた監督の先生がそう言って扉の外へ出た。


 俺達は先生の後ろをついて行き、実技試験会場まで来た。


 10m毎に的が3つずつ並べられている。

「それでは受験番号が若い順に並んだ後、順番に実技試験を行います。終わった方からお帰り下さい」


 実技試験の内容はこうだ。

 3つの的に好きな属性の魔術を順番に撃ち込む。


 単純なものだが、受験者の魔術の射程距離や威力、魔力の波長や得意属性が分かるので凄くいい内容の試験だと俺は思う。


「次、ハル・ターナスさん」

「はい」

 俺はこのハル・ターナスという男の次だな。

「この手に集りし火の結晶よ 目前の敵を打ち砕け いでよ炎の玉(ファイヤーボール)!!」

 男がそう叫ぶと10m先の的に魔術が素早く向かっていった。


 平均と比べると、割と発動速度が速いな。


 そう思っていると後ろから「おぉ…」とどよめきが起こった。


 20mと30m先の的にもいい感じに当てられていた。


 まあ、こんな人の後だから多少加減をみすっても問題は無いだろう。弱くしすぎたらダメだけどな……


「次、ユウ・アルティスさん」

「はい!」

 俺は名前を呼ばれ、指定の位置まで来た。


「何物も貫く火の槍よ 焔の如く 敵を貫け いでよ焔槍(フレイムスピア)!!」

 そう叫ぶと、魔術は先程の男よりは遅いが的に当たった。


 ふむ。こんなものかな。


 俺はあとの的に対しても同じようにやった。


 周りからはどよめきも上がらなかったし、監督の先生や受験者の様子を見ていても普通そうだった。


 まずは成功だな。


 俺は的に全て魔術を当て終え、試験会場を後にした。不合格になることは無いはずだ。





■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪




 翌日、俺はラリヤト魔術学園に行き、張り出された合格者の番号が並べられている紙に自分の番号があることを確認すると心の中でガッツポーズした。


 落ちることはないと思っていたが、もしかしたら……の可能性があるからな。名前があってよかった。


「っよし!」

 俺は不意に声をした方を見ると、昨日のハル・ターナスという男がガッツポーズしているのを見つけた。

合格したんだろうな。


「……あっ……お前は」

 男と目が合ってしまった…見過ぎてしまったようだ。

「突然大声出して悪かったな……お前も受かったんだろ?おめでとう」


「有難う!君の方こそ受かったんだよね…!おめでとう!」

 俺がそう返すと男は照れくさそうに頭をかいた。


「ハル・ターナスだ。今日から同級生だな!受験番号が隣だし、もしかしたら席近くなるかもな。よろしく!俺の事はハルでいいぞ」


「僕はユウ・アルティス。こちらこそよろしく!僕のことはユウでいいよ!」

「ああ。ユウ。よろしくな!」

 俺はハルから差し出された手を握った。


 その後別れを告げ、俺は脇にある配布コーナーへ行った。


 受験番号を見せ、受かっていれば必要なもの……例えば制服やカバンとかは全てタダで配布される。


 俺は受験番号を見せて全て受け取った後、昨日取っておいた宿へ戻った。


 明後日が入学式だ。


 学園は寮制で学園に入る際必ず寮で暮らさなければならない。他の者は2人部屋らしいのだが、今回の合格者が奇数だったので俺だけ1人部屋だ。


 1人部屋は気兼ねなく過ごせるから、俺としては有難い。


「さてと、取り敢えず明後日まで暇だし魔術の訓練でもしておくか。」

 俺はそう呟いた後、室内で出来る簡単な訓練を行った。





■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪




「っはぁああ!!つっかれた!!」

 俺は床の上に大の字になって寝転んだ。窓の方を見ると、もう日が沈みかけている。


 朝から夕方までずっと魔術の訓練をしていたのでクタクタだ。でも、こうしちゃいられない。夕飯を買いに行かなくては……


 俺は身支度をし、宿を出て市場の方へ向かった。


「ふふふふ……甘いものを沢山買い込んでやる……」

 何を血迷ったのか俺は見たことも無いけれど美味しそうな甘いお菓子を大量に買い込んでしまった。


 まあ、ちゃんとお金は残ってるから問題は無いけれど消費するのに時間がかかるな。


「……まあいいや。宿に戻ってゆっくり堪能しよう。てか寧ろ飯はこれでいいや」


 俺はそう思い足を進めていると、アクセサリーショップが目に入り足を止めた。


「……そうだ、顔を隠すように何か仮面でも買っておくか。」


 気に入ったものがあれば。と思っていたが、めちゃくちゃ気に入った仮面があったので俺はそれを買うことにした。


 ついでに、目立たないような黒のローブも買っておいた。


 マントの中に着る服は俺が1人で一年かけて縫い上げた物だ。


 前世の頃は、一時期は体術を趣味でやっていたが外で遊ぶよりも室内で裁縫や読書をしていた方が好きだったからな。


 私服は自分のお手製の物ばかりだったりする。

そのおかげで、購入源がバレないように服を着れるから昔の自分に感謝しなくちゃな…。



 俺は宿に戻り、夕食を食べ終わったあとベッドに倒れ込みそのまま寝てしまった。





■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪





 ……寝落ちしてしまった


 俺は翌朝、夜に魔術の訓練や剣術の訓練が出来なかったことを悔やみながら、朝食を摂った。


 朝食は勿論、昨日大量に買い込んだお菓子だ。


 ん?体に悪いって?大丈夫。なんとかなる。


 まあ、なんとかなる。と思いながらもやはり心配だったので昼食はバランスのいい食事を摂った。


 そういえば、さっき有益な情報を手に入れた。それは、最近夜に盗賊のような奴らが路地裏に頻繁に現れるらしい。


 そいつらはラト教団に繋がっていると聞いた。なんでも、生贄を捧げる為に人間を連れ去っているらしい。


 ……どうしてそんなにこの国には盗賊が多いんだ。と思った人たちも居るだろう。


 それは、ミハラ王国の首都付近はラト教団の奴らが蔓延っているからだ。


 ラト教団は、多くの盗賊を金で雇い捨て駒として扱っている。だから、ラト教団が蔓延っている所には盗賊が多いんだ。


 まあ、全員ラト教団繋がりの盗賊。というわけじゃないらしいけどな。


 首都の中にも少なからず盗賊が紛れ込んでくるので完全に安全とは言えない。



 ラト教団の奴らが出てくるとは限らないが、最近路地裏に現れていると噂になっている盗賊等を捕まえればもしかしたら、ラト教団のことがもっと分かるかもしれない。


 取り敢えず夜になったら路地裏に行ってみよう。





■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪




 日が完全に沈んだ頃、淡いピンクのワンピースを来た女の子が荷物を両手に抱えて外を歩いていた。


「――ふう……だいぶ買ったわね」

 私は明日からラリヤト学園に通うことになった。


 王女として、恥じない行動をしなくちゃいけない。


 学園に入ったら、また姉様と比べられることが増えるのかしら……


「まあ、比べられるのは嫌だけれどもう慣れたわ。とにかく、早く帰らなきゃ」


 最近、夜になると盗賊が現れるらしい。面倒事に巻き込まれるのはごめんだわ。


 私は急ぎ足になりながら人混みの中を歩いていた。


「きゃっ……!ごめんなさい」

 人とぶつかってしまい、荷物に積み上げられたリンゴを落としてしまった。


 それを拾いに人混みを抜けると路地裏に口元を押さえつけられながら複数の男に連れ込まれていく女性が見えた。


 私は荷物をほおり投げ、咄嗟に後を追いかけて行った。


「面倒事に巻き込まれたくない。ってさっき自分で思っていたのに、私ったら何やってるのかしら……」

 私は奴らのあとを追いながら呟いた。


 でも、見てしまったからには見捨てる訳にはいかない。


「止まりなさい!!」

 角を曲がり、私は男達を静止させた。


「ああん?なんだ嬢ちゃん。お前も来るか?」

 男達は嫌らしい笑みを浮かべている。気持ちが悪い。


「お断りしますわ。貴方達、その女性を離しなさい」

 私がそう言うと男達は眉間に皺を寄せた。


 男達は盗賊のような格好をしていた。


 多分こいつらが最近噂されているラト教団の雇われ者の盗賊だろう。


「ちっ……生意気なガキが ぶっ殺されてぇのか!!」

 私はそう怒鳴って向かってきた男達に向けて魔術を放った。私は無詠唱は出来ないけれど詠唱省略位ならできる。


「……ふう」

 私は男達を全員気絶させたあと大きく息をはいた。


 怖かったけれど、なんとか1人で制圧することが出来て良かった。


「大丈夫ですか?」

 私は女性の方に駆け寄った。だけど女性の表情は恐怖に充ちていた。


 そして、女性は私の後ろを指さした。


「……う、うしろ!!」

 私は後ろを振り返ると、大男が手を大きく振り下ろした。


 私は吹き飛び、壁に体を強く打ち付けた。

「あぐっ……!!……っ早く逃げて!!!」


 全身を壁に強打し、動けない私は女性に向けて叫ぶと、女性は私の声を聞くと同時に走り出した。


 咄嗟に防御の為に身体強化をしたとはいえ全身が痛い。


 大男の方に目をやると頭には角が生え口には牙があり、血管が浮き上がっていて3年前私を襲った魔人に変貌した大男と見た目がよく似ていた。


 あの大男は、突然現れた同い年くらいの男の子が倒したはずじゃ……?


 でも、こうして目の前に居るということは生きていたということ。そして私は死ぬ……


 短い人生だった……


 でも まだ……死にたくない…っ!!


 大男が手を上にあげた瞬間私は目を瞑った。


焔槍(フレイムスピア)

 不意に声が聞こえた。


 目を開け声がした方を見ると、黒いローブを身につけフードの中に仮面を付けた男がいた。

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