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最弱職の魔法戦士  作者: 悠久ヒロ
第一章
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ラリヤト魔術学園②

「貴方は一体……」

 私は仮面の下で大男を見つめる紅い瞳に見覚えがあった気がした。


 あれは3年前の…私を助けてくれた同い年くらいの男の子も紅い瞳をしていた。


 ダメ……思い出せない……


 白髪で紅い瞳で同い年で物凄く強い。ということ以外思い出せないわ……


 でもこの人は、昔私を助けてくれた人と同一人物のような気がする。


「ォ前 ダ、レダ……」

 大男……いえ……魔人は煙の中から現れ、ローブの男を指さして言った。


 あの魔術の威力の攻撃を受けておきながら無傷…?!


 ローブ男は少し固まっていた。

 当然よ……あの魔術を防がれるなんて思っても見なかったでしょうね


「ゴロズ………ッグオオオオオ!!!」

 魔人は身体強化をした後、力強く地面を蹴ってローブ男の方へ突っ込んで行った。


「危ないっ!!」

 私がそう叫ぶとローブ男は1歩も動かず、魔人の体を一刀両断していた。


 魔人は首と頭が離れた状態で止まれず壁に突っ込んで瓦礫の山に飲まれて行った。


 あれだけの速さ…しかも身体強化をされた魔人の体を見えないほどの速さで避けながら一刀両断 ですって……?!


 私は驚きながらも尊敬した。


 素早い剣さばきに強い魔術……一体どれほどの鍛錬を積んできたの……?


 でも、同時に1つ疑問に思った。


 なぜ正体を隠しているのかしら……?


 これほどの力があれば富でも栄誉でも何でも手に入るでしょうに……



 大きな音がした後、音のした方を見ると突然魔人が瓦礫の山から頭がない状態で立ち上がった。


「――っな……!!」

 私は驚きの声を上げてしまった。


 何故頭がない状態で立ち上がることが出来るの……?!


「なるほどな」

 ローブ男は呟いた後、首を鳴らしていた。


 何故そんなに余裕でいられるの……?!


 頭と体を切り離しても立ち上がることが出来る。なんて、不死身以外考えられないわ……


「倒せっこない。もう終わりね……」

 私は諦め、地面に項垂れた。


「諦めたら何もかも終わる」

 ローブ男にそう囁かれた。

 顔を上げるとフードの下で笑っていた。


「まだ……勝算があると言うの……?!」


 意味がわからない。でも、見たい……この人が何をするのか……


 この絶望的状況で何が出来るというのか……!!


「ディスペア・フレイム・ランス」

 ローブ男がそう唱えると複数の魔法陣がローブ男の背後に現れた後、焔槍(フレイムスピア)と同じような火の槍が5つ…いえ…7つ現れ、魔人の方へ向かって行った。


 強烈な熱風に目を瞑った。


 目を開くと、そこには……何も無かった。


 先程の魔人は塵さえも残らず消えていったのだ。


「なんてことなの……不死身の敵を、塵さえも残さず……」

 私が呟くと、ローブ男は首を振った。


「魔人は心臓を潰さない限り永久に動き続ける」

 ローブ男はそう言った後、こちらに歩いてきた。


 っ?!まさか 私も殺すつもりじゃ……っ?!


 私は抵抗も出来ないまま、恐怖に怯え目を瞑った。


 すると、段々と傷みが消えていった。


 私は驚きローブ男の方を見るとしゃがみながら、私の背中に手をかざして魔術を使っているようだった。


 これは…無属性の治癒魔術……?!骨を治す程の治癒魔術…ということは聖級……?


 痛みが完全に無くなった時、ローブ男は立ち上がり去ろうとした。


「ま、待って下さい!」

 私が叫ぶと、ローブ男は足を止めた。

「助けて頂いて有難う御座いました!もし宜しければお名前を教えて頂けませんか……?!」


「……X(エックス)」

 ローブ男……Xはそう呟いて姿を消した。


「……X。貴方は一体何者なの……?」

 私の声は、まだ冷たく吹く夜風にかき消されていった。






■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪





「うーん」

 俺は宿に戻りベッドの上で寝転びながら考えた。


 魔人は心臓を潰さないと倒せない。というのは知っていたが、まさか胴と首を切り離して普通に動けるというのは少々予想外だったなあ。


 強いやつと戦えると思って口が綻んでしまったじゃないか……まさかディスペア・フレイム・ランスで一瞬で倒れるとは思わなかった。


 というか、あの魔人俺が三年前倒した魔人と似ていたな。


 あの時確かに心臓を潰せては居なかったから、完全に倒せてたわけじゃなかったのだろう……


 ……そういえば、あの魔人に襲われかけていた女の子 今、ちゃんと生きてるのかな…。


「まあいいや」

 俺はベッドから起き上がり、伸びをした。今更気にしたところでもうどうにもならないしな。


 俺は夕食を摂り終え明日に備えてもう寝ることにした。





■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪





「……で皆様の成長が…………ています」

 前世でもよくある、入学式や朝会でめちゃくちゃ長い校長先生の話にあくびを堪えながら聞いていた。


 今日が待ちに待ったラリヤト魔術学園の入学式だ。


 今日から平凡な学園生を演じながら魔術を学び、魔術書を手に入れるために教団を潰す毎日が始まる。


「続いて新入生代表……ユマ・ミハラ・ラーニーさん」

「はい」

 女生徒は立ち上がった後、階段を上り壇上の上でマイクを手にした。


 ……あれが第2王女の……って、昨日魔人に襲われていた子か。

「はじめまして皆様。新入生代表のユマ・ミハラ・ラーニーと申し上げます。……で…………として――」


 俺が新入生からの注目を受けているユマ・ミハラ・ラーニーを見ていたら、突然目が合った。その上、一瞬睨まれた気がした。


 俺が眠そうに話を聞いていたのが気に食わなかったのか?

 まあいいや。何か言われたら、機嫌を損なわせないように言い訳するか。



 こうして、長く退屈な入学式が終わった。



 教室に行くと、予想通りハルがいた。俺の席の前か。

「お!ユウじゃないか!」

 ハルは俺を見た途端笑顔で手を振って俺を手招きした。


「ハル!席隣だね!」

 俺はカバンを机の横にかけ、席に座った。


「いや〜知り合いがいて良かった…これで俺が1番最後でお前が別クラスで1番最初。っていうことにならなくて良かった……」


「そうだね!僕もハルが居てくれて良かったよ」


 俺はハルと楽しく雑談しながら先生が来るまで待った。


 チャイムが鳴ったと同時に、担任の先生と思しき人が教室の中へと入ってきた。


「初めまして。これから君たちの担任になる、ジーン・テヒニヤだ。宜しくな。これから君たちには簡単な自己紹介をしてもらう。右の席の人から順番にやって行くぞ」

 ジーン先生は1番右端にいるやつから、立たさて自己紹介をさせた。


 自己紹介か……クラスの人たちのことを知る上でよく行われる方法だな。


 そういえば、このクラスには第2王女のユマ・ミハラ・ラーニーがいる。


 先程は睨まれたが、また目が合った時は睨まれはしなかったのでもう怒ってはいないだろう。


 次は俺の番だったので、俺は簡単に自己紹介を済ませた。今回も目立たずに済んだようだ。


そして俺は席に座り、他の生徒の自己紹介を聞いた。


「ユマ・ミハラ・ラーニーです。好きなことは読書です。学級委員長になり、このクラスを精一杯支えていきたいと思っています。よろしくお願いします」

 ユマが自己紹介を終え、深く頭を下げると短い拍手が起こった。


「あれが落ちこぼれの……」

「……第1王女より凄くないんでしょう?」

 教室の至る所から囁く声が聞こえてきた。


 だいぶ姉と比べられているんだな……本人の耳には届いていないことを祈ろう。


 クラスの全員が自己紹介を終え、HRが終わった。


 今日は初日なので、学園の授業は無いのではこれで終わりだ。クラスの人達と初めての顔合わせって感じかな。


 俺は用事があると言っていたハルと別れを告げ、学園にある寮へ向かった。


 どんな寮なのか気になるな……荷物も宿から全て運んでこなくてはならない。


「俺の部屋はここか」

 俺は部屋番号が書かれている鍵を鍵穴に差し込み、扉を開けた。


 中はとても綺麗で、白いベッドが一つだけ置いてあり、窓には白いカーテンがかかっていて内装は無色だった。


 備え付けのトイレや風呂もあった。


「これじゃあまるでホテルだな……」

 そう思えるほど設備が物凄く整っていた。


 全ての部屋にこれほどの設備を設けるとなると、一体どれ程の費用がかかるのだろうか。


 俺はとりあえず持っていたカバンを部屋の隅に置き、宿へ戻ることにした。





■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪




 俺は宿に置いてあった荷物を全て持ち、寮へ運び終えた。


「――ふぅ。さてと、作業も終わったことだし学園内を散策でもするか」


 俺は手をはたいた後 寮の部屋から出て、学園内を適当に歩き回った。


「流石、ミハラ王国最高峰の学園だな……めちゃくちゃ広い」

 俺が前世で通っていた学校の何倍も広かった。まあ、人数のせいでもありそうだけどな。


 そう考えながら歩いていると、素振りをしている音が聞こえた。


 トレーニングルームと書かれた部屋の扉が少し開いていたので中の様子を少し覗いて見た。


 すると、ユマ・ミハラ・ラーニーが赤い髪を後ろに上げ、ジャージを着て木刀で素振りをしていた。


 とても一生懸命にやっているのは分かるのだが…。

「剣がぶれぶれだな……真っ直ぐ斬らなければ意味が無いのに……」

 素人の目からみても分かるほど、彼女の剣は少しブレていた。


 いや まず、どうして魔術学園なのに素振りの練習をしているんだ……?まさかユマ・ミハラ・ラーニーも魔法剣士……?


 ここからの距離じゃ手の甲の紋章は見えないな……



「誰かそこに居るのかしら?見世物じゃ無いのだけれど」


 不意に扉の奥から声がした。

 ユマ・ミハラ・ラーニーはこちらを見ている。


 感がいいな…気配を消しておくべきだったか。


 ……仕方がない。大人しく出るか。

「ご、ごめんなさい。木刀を振っているのが気になって…」


 俺は静かに扉を開けながら謝罪した。

「あら……?貴方は、確か同じクラスのユウ・アルティスさん?」

 ……驚きだな。まさか、クラスメイト全員の名前を覚えているのか。


「は、はい。あの…すみません。僕、失礼しますね――」

「待って!」

 俺が扉を閉めようとすると、ユマ・ミハラ・ラーニーは俺を止めた。


「……貴方、魔法剣士なのでしょう?」

「どうしてそれを……」

「手の甲の紋章を見れば分かるわ。私も同じなの」

 ユマ・ミハラ・ラーニーは俺に手の甲を見せて言った。


 ……この距離から手の甲の紋章を把握できるのか。余程目がいいんだろうな。正直、俺は視力はどちらかと言えば悪い方なので羨ましい……


「少し…私の剣を見て下さらない?」

 俺はそう言う彼女の寂しそうな重い瞳を見て、断ることは出来なかった。


 俺はトレーニングルーム……練習場の片隅に座りながら、彼女の素振りを眺めていた。


「――あの、ラーニー様は……」

「ユマでいいわ。敬語も不要よ。同い年でしょう?」

 俺はユマの言う通り、敬語で話すのを辞めた。


「じゃあ……えっと……ユマは、どうして今ここで素振りをしているの?」

「剣があまり上手く扱えないのよ。魔術は多少できても、剣が苦手なのよね……魔法剣士なのに」

 ユマはそう言い、汗を流しながら素振りを続けていた。


 俺は一呼吸置いた後、ユマを見つめながら言った。

「……ユマ。1度脇を閉めて、一点を見つめるように真っ直ぐ剣を振り下ろしてみて」

「?……え、ええ。分かったわ」

 ユマは俺の言う通りに剣を振り下ろした。


 ヒュッ……と綺麗に空気を斬る音が聞こえた。

「えっ!」

 ユマは何度も何度も同じようにやった。


「……凄い!こんなに綺麗に振り下ろせるなんて!」

 ユマは木刀を振り下ろすのをやめ、俺の方を見た。


「父さんが、剣を扱うのが上手くて……僕も少し教えて貰っていたんだ。」


「なるほど……感謝するわ。貴方のおかげ剣が少し分かった気がする。諦めずもう少し剣のことを勉強してみるわね。」


 ユマは俺と目を合わせ笑いかけた後、目線を下の方にやり続けた。

「あの……貴方が良かったら。で良いのだけれど、暇な時剣を少し教えて頂けないかしら?」

 ユマはモジモジと恥ずかしそうにしていた。


 うーん……まあ、暇な時。でいいなら……いいか。


「僕なんかでよければ!」

 俺がそう言うとユマは笑顔になり感謝の言葉を述べた後、素振りを始めた。


 正直、ユマの真っ直ぐな剣は嫌いじゃない。


 もう少し基本を身に付ければもっといい剣になると思うんだよな。


 ……っと、学園内を散策中だったんだった。

「ごめん、ユマ。僕、もう行くね」


「分かったわ。放課後、いつも私はここに居るから暇な時に来て頂戴」

 俺はユマの言葉に頷いた後、トレーニングルームを後にした。


「……さて、次はこっちの方を行ってみ――」

 突然、目の前の別室棟のような場所から俺の言葉を遮るように強烈な爆発音が聞こえ、気になった俺は爆発した方へ走っていった。

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