油断した
そう警告するサツキの目は鋭く光って殺気だっていた。
「……私は、アーミラお姉ちゃんを裏切ることは出来な――」
「ああ待て待て。勘違いしてるぞ。」
「んえ?」
俺が遮ると、サツキは首を傾げた。
「俺とも仲間になろう。だ。別に、アーミラお姉ちゃんを裏切るわけじゃない」
俺がそう言うとサツキは「そうなの?」と言いたげな顔をした。
「ラト教団のことについて俺に情報を流してくれればいい。別に、アーミラお姉ちゃんを裏切ってるわけじゃないだろ?」
「そっか! 確かに!」
サツキは頷くと、再び笑顔でお菓子を頬張り始めた。
うん。チョロいな。いいのかそれで……
間接的に裏切ることに繋がっているだろうが……まあ、サツキはあくまで敵だ。利用出来るものは利用する。それでいい。
「じゃあサツキ。改めて第2の仲間として宜しくな」
俺がそう言って手を差し伸べるとサツキは笑顔で俺の手を握り返した。
「ん! よろしく!」
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「それで、第2の仲間として具体的に何すればいーの?」
サツキはお菓子を食べ終わり、地面にあぐらをかきながら聞いた。
「今は俺の事を見逃してくれればそれでいいよ。」
「わかった! 他は?」
「他は……って……」
あれ?待てよ?
これ、普通にサツキにラト教団の拠点の場所を聞けば……
「ねえ、サツキ。ラト教団ってどこにあるか分かる?」
「わかんない!ラト教団のとこ行ったことないから!」
あー……なるほどね。流石にそんな甘くないか。
「あっ! でも1度行ったことあるよ。でも目隠しされてたから場所はわかんなかった!」
サツキはそう言いながら手で目を覆い隠したりして楽しそうに話していた。
「なるほどね」
やっぱり最近入ったばかりの奴には拠点は教えられないもんな。
「じゃあ……毎週月曜日、この校舎付近に夜中の0時に誰にもバレないよう来て、俺にラト教団のことでわかったことを教えて欲しい。」
「それだけでいいの?」
俺はサツキの問いに頷いた。
まあ、今からサツキを引き離した後アーミラを倒そうとしてるんだし仲間は自然に解消されてしまうだろう。だから今、俺を見逃してくれればそれでいい。
相手と戦わずに相手を退ける。これも立派な戦法だ。
「おっけ! じゃあ私はそろそろ見回りを再開するね! また会おうね!!」
サツキはそう言って立ち上がり、俺に手を振ってどこかに行ってしまった。
その様子をサツキの気配が無くなるまで見た俺は立ち上がり、アーミラを探しに行った。
正直、アーミラがサツキ位の強さだったら倒せないことはない。だが、相手の力は未知数。真正面から堂々と行くのは危険すぎる。
「……さて、どうしたものか」
俺は長い廊下を再び歩きながら作戦を練っていた。
「……!」
そして俺は、とある教室から気配を感じ取った。
この気配はサツキのものじゃない……アーミラのものだ!
忍び足で教室の扉まで近付き、少し開いた扉の隙間から中の様子を伺った。
……机の上で何かを書いている……?俺の気配に気付いてはいなさそうだな。
俺は扉の隙間から、魔術で土埃をアーミラの目に向かって当てた。
「あぐっ!!!!」
アーミラは手で目を必死に擦り、何が起きているのか分かっていないようだった。
効いてるな。
俺は素早く室内に入り、アーミラを土魔術で拘束した。
「な、なんなの?! 何が起こってるの?!」
視界を遮られ拘束されたアーミラはジタバタと暴れ、必死に抵抗していた。
「今から言うことを聞け。……抵抗したらどうなるか、分かるな?」
俺はXの時と同様に低い声を出し、アーミラに話しかけた。
「なんなの?!?! 意味がわからない!! 誰なの?! この拘束を解きなさい!!!」
アーミラは聞く耳を持たず、必死に抵抗を続けた。
……はあ。目が見えず、動揺するのは分かるがこうも暴れられると面倒臭いな。
そうため息をついていると、背後から何かを感じた俺は土魔術で壁を作り防いだ。
その何かは短剣だった。
「ちっ……防がれたか……」
アーミラは抵抗するのをやめていた。
……なるほど、釣りか。
俺が油断している隙に殺ろうと思っていたんだろうな。
「……それで、何? 質問に答えれば良いわけ?」
アーミラは諦めたようだった。
……こいつ、自分の立場を分かっているのだろうか。まあ、諦めてくれたのならそれでいいんだが……
「ああ。じゃあ、まずは――」
質問をしようと口を開けたと同時に、また背後から短剣が飛んできた。
俺は飛んできた短剣を避け、話を続けた。
「お前は何者なんだ? 教団でどの立場に居る?」
「……幹部の1人の直属の部下よ」
アーミラは吐き捨てるように言った。
「その幹部の名前は?」
「…………」
アーミラは予想通り黙秘だった。
やはり、俺に教えても何も問題ないことぐらいしか吐かないか。
無駄に時間を浪費して、あの2人が起きて来てしまったら大変だな……
「分かった。もういい。ここから今すぐに立ち去れ」
「え?」
俺がそう告げると、アーミラは不思議そうに首を傾げた。
そして俺は、アーミラの拘束をあっさりと解いた。
「……どういうこと?」
「さっさと去ね。視界が封じられたお前じゃ俺には勝てない。だが、逃げることぐらいは出来るだろう?」
俺の殺気とピリピリとした威圧を感じ取ったアーミラは、退きながらも笛を鳴らした。
「……何をした?」
「私の仲間を撤退させたの。」
俺の問いに答えたアーミラは笛を地面に投げ捨て、それを踏み潰した。
「視界が封じられてても、気配ぐらいなら感じ取れるのよ。」
そう呟いたアーミラはポケットから複数の手のひらサイズの短剣を取り出し、それを無作為な方向から俺に向かって飛ばしてきた。
「お前みたいなヤバい奴は、ここで私が殺しておかなくちゃいけない。」
アーミラはそう呟いて、短剣を飛ばすと同時に地面を強く蹴って殴りかかってきた。
なるほど。自分が囮になって、あわよくば俺を殺そう。っていうことか。
俺は飛んできた短剣を全て手で傷がつかないよう回収し、殴りかかってきたアーミラは力強く蹴り飛ばした。
「ぐっ!!!」
アーミラは受身を取りながらも、壁に体を強く打ち付けてフラフラな状態だった。
短剣を風魔術を用いて飛ばしてくるとは……器用だな。
「我が元に集え!! いでよ!! 風の咆哮!!」
アーミラが手を前にかざしながらそう唱えると、風の魔術が勢いよく俺の元へ向かってきた。
「バースト・クラッシャー」
俺は静かにそう唱え、ウィンドブラストを爆風で相殺した。
「なっ……?!」
アーミラがたじろぐのも無理はなかった。本人が詠唱省略をしてまで放った魔術を無詠唱で軽々と防がれたからだ。
「……くっ……」
アーミラは勝てないと理解していながらも必死に抵抗を続けた。
ふと、遠くから声が聞こえた。
「――!!」
「――く〜ん!!」
俺は声のした方向へ血相を変えながら振り返った。
ハルとシルの声だ。まずい……もう目を覚ましたのか……!!
動揺している俺をアーミラは見逃さなかった。
「――……風の咆哮!!!!」
気がそれていた俺はその魔術をまともに食らってしまった。




