地図と鍵
16話と記入する時、17話と間違えました…すみません。
話の流れに問題はありません。
ユマは俺に対して強い敵対心を向けていた。
流石に……気付かれるとは思ってはいなかった。でも――
「作り物っていう例えは少し違うかな。俺だって笑うときは笑うさ」
「――そう。でもまあ、正直そんなことどうでもいいんだけれどね」
ユマはそう言った後、フッと笑った。
「貴方の力……まだ、見たことないわ。」
傍にあったもう一つの木刀をユマは俺に渡した。
「……俺の力 か。見たい?」
「……ええ」
俺の異様な雰囲気に飲まれ、ユマは生唾を飲み込んだ。
俺が木刀を構えると同時にユマも木刀を構えた。
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「――な、なんか……ごめんなさいね」
ユマは地面に頭を思いっきりぶつけた俺に対して手を差し伸べながら言った。
「……分かってはいたけどね」
俺はそう呟いた後ユマの手を掴み、立ち上がった。
「もう一度やらない?」
ユマは想像と違って少し動揺しているようだった。
「何度やっても結果は同じだよ」
俺の振りかざした剣はユマに当たることもカスることもなくそのまま、俺自身も地面へ剣と一緒に倒れこんだ。
「へぶっ!!」
「だ、大丈夫………?」
ユマはまた俺に手を差し伸べてくれ、俺はその手を掴んだ。
「……剣術の基本は知ってても、それを上手く扱えるとは限らないんだよ?」
俺はそう言いながらゆらゆらと立ち上がった。
「そ、そうなのね。次は魔術の力が見てみたいわ!」
ユマの頼み通り俺は超絶平凡な魔術を見せた。
力を隠す点では抜かりない。早々にバレる訳にはいかないからな。
「……深読みしすぎていたのね…手間を取らせてごめんなさい」
「いや、大丈夫」
力でユマに何かを悟られることは無かったようだ。
それでも、感が鋭い奴にはバレてしまうから気をつけないとな。
「俺は君の真っ直ぐな剣術や魔術が好きだ。お姉さんのことでそこまで気にする必要は無いと思うよ」
俺がそういうと、ユマは驚いた後微笑んだ。
「……そんなことを言ってくれるなんて嬉しいわ。有難う」
「因みにさ、君は俺を何と勘違いしていたの?」
ユマはそう俺に聞かれ、少し考えた後深く息をついた。
「……勝手に勘違いしたんだもの。言わなきゃもっと失礼よね」
ユマが何か言ったようだが、声が小さすぎて俺には聞き取れなかった。
「最近、森の魔物が増えたり、強い魔物が現れるようになったことを貴方も知っているでしょう?私達が実践訓練に行ったときよりも、増えてきているのよ」
成程な
「その件に関わっている奴が俺だと?」
俺がそう聞くと、ユマは頭を下げた。
「本当にごめんなさい。失礼なことをしてしまったわ……」
急に魔物が増えたり強い魔物が出てきたりしたんだから、それを手引きするやつがいると考える方が自然だよな。
「いや、隠すようなことをした俺も悪いよ」
正直、俺の正体がバレかけているのかと思ったら違う方面だったか。
「……一つ聞いてもいいかしら?」
「何?」
「その、どうして無理に笑ったりしていたの?ああ!言いたくなかったらいいのよ。……少し気になっただけだから」
ユマは恐る恐る俺に尋ねた。
「ああ……別にたいした理由は無いよ。笑っていた方が友達が出来るからだ」
「無理して笑ってでも?」
「ああ」
俺がそう答えると、ユマは納得のいかない表情だった。
「……自分の首を絞めてまで作る友達って本当に必要なの?」
ユマにそう聞かれ、俺は頷いた。
「それに、誰かと話すときはあっちでやっていた方が楽なんだ」
「今は取り繕っていないじゃない」
「ユマは特別」
「……ずるいわ」
「俺はずるい奴だから仕方が無い」
俺はユマに木刀を返しながら言った。
すると、外の方からチャイムが聞こえてきた。
ふと窓の方を見ると、日は完全に沈んでいた。
「もう夕食の時間か。じゃあ俺は先に行くよ」
「待って!」
俺は外に向かっていた足をユマの声で止めた。
「一緒に食べたいんだけれど……いいかしら?他に話したいこともあるの」
「うん。別にいいよ」
俺はユマの提案を受け入れた。
あまり目立ちたくないし、端っこの方で食べるか。
それに、後でさっきの話のことも口止めしておかないとな……
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「……ところで、どうしてこんなに端っこで食べるの?」
「目立ちたくないから」
俺はユマにそう返し、料理を口に運んだ。
「……そう」
ユマは納得したのか、ユマも料理を口に運び始めた。
「あと、さっきのことは誰にも言わないでくれる?」
「勿論よ。話す意味もないもの。」
そう返してユマは茶を飲んだ。
その後ユマはコップをおぼんの上に乗せ、少しの間静止していた。
「あのね、貴方に本格的に稽古をつけてもらいたいの」
「俺が君の稽古を?」
俺が聞き返すとユマは頷いた。
「……お願いします。少しの間でいいから」
ユマは深々と俺に頭を下げた。
うーん……
俺も暇なわけじゃないんだが……こう、深々と頭を下げられたら断りにくいよな
「……分かった。2ヶ月間、週3で放課後だけでいいなら」
「っ本当?!」
俺がそう返した途端、ユマの表情は一気に明るくなった。
「有難う……!貴方には感謝してもしきれないわね」
ユマはスプーンを持って再び料理を口に運び始めた。
「……どうして突然稽古なんか?」
俺がそう聞くと、ユマは料理を口に運ぶのをやめ、スプーンをおぼんの上に置いた。
「私……強くなりたいの。あの人のように」
「あの人?」
「……Xのように」
ユマは目を伏せ、思い返すように呟いた。
…まじか…
俺、大した事してない気がするんだが……ユマを助けたのも1度で…
「あの人に2回助けてもらったのよ」
「へえ。そうなんだ」
ん?2回?
……?……誰かを助けたのは、小屋の時と、門番のおっちゃんと、ユマが魔人に襲われてた時……ってまさか、あの小屋で襲われかけてた同い年くらいの女の子はユマ?
「あの人の剣さばきはとてつもないものだった。……それに魔術の威力も並大抵のものじゃない。いつかあの人みたいになって、お姉様を超えたいの」
ユマの瞳からは強い意志を感じた。
――最強になるって決めた時の俺のように。
「……なるほどね」
料理を食べ終えた俺はおぼんを持って立ち上がった。
「じゃあ、お姉さんを超えられるよう俺が君にビシバシ稽古をつけてあげるから覚悟してね。じゃあ、また明日」
「……!ええ!また明日!」
俺はユマの嬉しそうな返事を聞いた後、その場を後にした。
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消灯の時間が過ぎ、寮内がシン……と鎮まる頃
俺は窓から寮を抜け出し、地図に印がついている所に向かっていた。
勿論正体を晒さないようにあの格好をしている。
地図にある場所が罠ではない可能性は否めない。十分に注意する必要がありそうだ。
俺は地図に印がついていた場所に着いた。どうやら廃工場のようだ。
この辺りは、あまり王都の目に触れていない場所のようで廃れている印象を受ける。
「さて、早速警戒をしながら中に――」
不意にすぐ近くの曲がり角から人の気配を感じた俺は壁の影に隠れた。
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「なあマルク。どうしてこんな所に……?」
白い鎧を着た男前な男……ムストはマルクに連れられ、廃工場へ向かっていた。
「……この前会談で廃工場に来た時さ…怪しい人影を見たんだけど、怖くて1人で戻れなくってよ……他の奴にもダサくて頼めなくてさ……お前しかいないんだ」
マルクは声を震えさせながら言うと、ムストはため息をついた。
「仕方ないな……お前怖がりだもんな」
「いやあ……!本当に悪いな」
マルクは手を合わせてムストに謝った。
2人は雑談をしながら廃工場の中へと入っていった。
そして、廃工場の中で怪しい人影の正体を探ろうと歩き回っても中々見つからなかった。
「もう怪しい人なんて居ないんじゃないか?それかお前の勘違いか……」
ムストは最後の扉を開け、部屋の中を確認しながらマルクに言った。
「そうなのかな」
マルクもムストの後ろについていき、キョロキョロと周りを見渡していた。
ここは他の部屋と比べるとだいぶ広いほうだった。だが、ここを見れば終わり。実は少し怖いのが苦手だったムストは安堵の表情を浮かべていた。
「やっぱり何も無いぞ。よし、帰――」
ムストがマルクの方に振り返ると、マルクはムストのお腹に短剣を刺していた。
「――なっ……!!マ、マル ク……どうして」
フラフラと後退りしていたら尻もちをついたムストは何が起こったのか状況が読み込めていなかった。
呼吸をする度に溢れる血。ムストは自分の血に触れ、夢じゃないことを悟った。
「なあ……どうしてお前ばかり評価されるんだ?俺だって努力をしているのに」
マルクは吐き捨てるように呟いた。
「え……?」
「だって、おかしいだろう……?同じように今まで生きてきたのに、門番と王国騎士団員。どうしてここまで差が出るんだ?意味が分からない」
マルクが日々精進していることは、一番近くにいたムストはよく分かっていた。だから何も返すことが出来なかった。
「何故お前ばかりが評価され、俺はお前の子分扱いなんだ…?どうしてなんだよ…………っ!!……お前さえいなければ!!」
マルクは短剣を前に構え、ムストに向けて怒鳴っていた。
「マ、マルク落ち着け。お前がいつも頑張ってることは俺が一番わかっている。だから、まずお互いに話しあおう。な?」
ムストはマルクを静止させるための話はマルクには全く意味が無い様子だった。
「俺は力を手に入れた。だが、俺が頑張ったところでどうせお前の手柄になる。…だったら、今のうちにお前を消しておく必要があるよな…?」
そう言うマルクの顔は笑っていた。
「っ……力を手に入れた……って、一体どう言う――」
「バザール様が力を授けて下さったんだ……この力さえあれば俺はなんだって出来る!!!」
そう叫ぶマルクの目に光はなかった。
明らかに異常なことが起きてるのは、ムストには容易に理解出来た。
だが、ムストにこの状況を打開する方法が見つからない。
どうするか考えているとマルクは笑うのを辞め、ムストに刃を向けた。
「……もういいよな。取り敢えず、お前はそのまま俺に殺さ――」
マルクがそう言い終わる前に、自分の左腕がないことに気付いた。
いや、今瞬く間に無くなったのだ。
「は…ぁ…???お、俺の腕がああああ!!!!」
マルクは短剣を落とし、膝をついた後右手で左腕があった場所を支えていた。
マルクの足元に大量にマルクの血が溜まっていき、それは徐々にどす黒くなっていった。
「な、何が起こったんだ?」
ムストが何かが飛んできた方を振り返ると、そこには黒いローブを羽織り仮面を付けた男が手を前にかざしていた。




