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人の王、魔の王  作者: 金色の沼
1.はじめての【魔物創造】
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1.1 父と母

「おーい、ナツ!そろそろ飯だ!剣を振るうのはそれくらいにしとけ!」


声がする方を向くと、そこには金色の短髪、ガッシリとした身体つきとニカッと笑った顔が画になる男が立っている。


彼はトランゾという名で、ぼくの父である。

前にいた世界とは別世界であるここで、ぼくは片田舎の村人の家に生まれ、ナツという名を貰っていた。


この村はブラ大陸という大陸の西の端に位置していて、アナカ村という。

そしてこの世界は、どの国の地図でも中央に書かれるほどの圧倒的な広さと豊かさを誇るノーヤ大陸、作物が育たぬ過酷な環境により人がほとんど寄り付かないモンク大陸、そしてぼくが今現在生活しているブラ大陸の三つの大陸があり、それぞれにいくつかの国が存在する。


アナカ村はトクト公国という国の庇護下にある。

庇護下にある、という表現をした理由はいくつかあるのだが、一番大きな理由としては、トクト公国の騎士団が周辺地域に住む魔物たちからこの村を守ってくれているからというものだ。


魔物たちは言語や文化的コミュニティを持っておらず、勝手気儘に生きている。

聞くところによると共食いはおろか、親食い子食いすらもあるらしい。


真偽はさておき、それほどまでに恐ろしい存在であると考えられているため、ぼくら人間は忌避している。

トクトの騎士団は庇護下の村々を魔物たちから守る代わりに、税を徴収し、それを糧に生活をしているというわけだ。


しかしながら最近は、ブラ大陸の魔物たちのモンク大陸への大量移動が確認されており、アナカ村近辺に魔物が出ることも少なくなってきている。

騎士団たちは仕事が少なくなったのを良いことに、村の酒場などで昼間から遊び呆け、そのくせ税はキッチリ取っていくため、村人たちから嫌われているのだ。



家に入るとすでに母が食事の準備を済ませ、テーブルについていた。

「遅いわ。」

「はい、すみません…!」

あんなにゴツい父も、母の前では子犬のように大人しくなる。

なにか弱味でも握られているのだろうか。

いや、どこの世界でも妻の尻に敷かれる夫という構図はあるものか。


「ナツ、手を洗ってらっしゃい…」

「はい、母さん…」


母はどうやら怒っているようだ。

理由は明白である。

朝ご飯を食べてから今までずっと出かけていたからだ。

母との約束である出かける前のお勉強をせずに。


「母さんいつも言ってるでしょう、お外で遊ぶのもいいけど、お勉強も大切だって。」

「はい、ごめんなさい…」

「毎日毎日遅くまで出かけて、何してるのよ」

「父と剣の特訓を…」

「あなた‼︎‼︎」

「ひぃっ、ごめんなさい!!」


ごめん父さん、でも本当のことだし仕方ないよね。

ぼくは最近毎日、元冒険者である父と剣の特訓をしているのだった。


ーーーーーーーーーー


「言い分を聞きましょうか」

「はい、裁判長。わたしは」

「裁判長じゃない、私はルミエルという名前があるわ。」

「はい、ルミエルさん。

いや、ルミエル様…」


食事が終わってもまだ母の機嫌が悪く、父は絞られ続けている。

ぼくはというと、母に早く寝なさいと一喝され、居間を追い出されたところだ。


「たしかにあの子は男の子だから、剣を教えて強くなってもらいたいという気持ちは分かるの。けれど、生きていくのには剣だけでは駄目。世の中を知るためにお勉強だってとても大切だって言ったわよね?」

「はい、その通りで御座います…」

「ならなぜナツは机に向かわず、お外に向かうのかしら?」

「はい、わたしが剣の特訓をしようと誘っているからです…」


本当はぼくから父に剣の稽古を頼んだのだけれど、父はぼくのことを庇ってくれているのだ。

きっとぼくの剣の腕に期待してくれているからだろう、少し嬉しい。


「剣の腕を上げても、それだけで生計を立てていくのはとても難しい。あなたが一番分かっているでしょう?」

「はい、その通りで御座います…」

「あの子の将来は自分で決めさせるの。でもその選択肢を増やしてあげるのは私たち親の役目だわ。あなたの子だから、きっと冒険者になりたいと言うのでしょうけど。」

「そ、そうだよな?!あいつも冒険者を目指す筈だよな?!」

「あなた‼︎‼︎」

「はいぃ‼︎‼︎」


父は昔、凄腕の冒険者だったらしい。トクト公国の中で5本の指に入るほど強かった父は、災害級の古龍を討伐するために訪れた山の麓のこの村で母と出会い、冒険者を引退して暮らしている。今は働いていないのだが、その古龍を討伐したときにもらった報奨金で暮らしているのだ。まだまだ当分は遊んで暮らせるほど残っているらしい。


「明日はナツの10歳の誕生日。神殿で儀を行う日なの。ナツも不安に思っているでしょうし、今日くらいは休むべきだったのよ。」


そう、明日はぼくの10歳の誕生日。

そしてこの世界では、人間の子はみな8歳の誕生日に神殿に赴き、そこで適性を見る儀式を行うのだ。


なんの適性かって?


全てだ。


体力や体術、魔法など、その人間の持つ適性とパラメータを見ることが出来るのだ。つまり、その人間の持って生まれた【才能(ギフト)】を確認することができるというわけだ。

その人間の持つ才能がパラメータ化する、その人間の価値が数値化されるということの重大さに、母は不安を隠しきれなかったようだ。


「…あいつは大丈夫だ。」


父の顔つきが変わった。


「あいつはおれとお前の息子、きっと神様のご加護があるはずだ。大丈夫。」

「あなた…」


父はぼくのことを強く信じてくれていた。あの顔つきがその証拠だ。信じて疑わぬ強い心が表れていた。


「そうね、わたしも信じてるわ。さっきは少しナーバスになってしまっていたみたい。」

「大丈夫だ。明日はナツの誕生日祝い兼ギフト祝いを盛大に開こう。きっとあいつも喜ぶはずだ!」


ぼくはその言葉を最後に、居間のドアを閉め、自室に向かった。

きっと今夜は眠れないだろうが、早くベッドに入ろう…。

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