23 オッムライス〜?
食堂にはドンと私の二人分のオムライスや他の料理、飲み物が並べられていた。
「うわぁ!うわぁうわぁうわぁ!すごーい!ほんとに【オムライス】だ!玉子丸い奴!やった〜!!!」
ぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを表情しちゃうよ!
「喜んで頂けて何よりです。」
「うん!すんごい嬉しい!」
「ふふ…それではお席にお着き下さい。旦那様のお腹の虫が鳴ってしまいそうですから。」
そう言って苦笑した執事さんに引いて貰って椅子に座ったら、既に向かいの席に座ったドンの目かオムライスに釘付けなのが分かった。
「ふひひ。ド〜ン!美味しそうでしょ〜【オムライス】。私のオススメだよ!」
「…そうか!俺はちょっと興味があるだけだぞ!」
「あー!ドンったら照れてる〜!おもしろー…きゅるるる……い…」
あ
「だっはぁっは!嬢ちゃんも腹鳴ってんじゃねえか!」
「鳴ってないもん!……ふん。ドンのばーか。こちとらレディだぞ!」
「どーこがレディだよ!ったく、さっさと食おーぜ!」
「はーい!いっただっきまーす!」
お互い恥ずかしくなっちゃった。お腹減ったし食ーべよっ…と。
…………!!!???
「なにこれ……美味しい!今まで食べてきたどのオムライスよりも美味しいよ!凄い……!こんな短時間でここまで美味しくできるなんて…」
この世界にしか無い食材とか使ってるのかな?それともここのシェフが腕がいいのかな?貴族から引き抜いてきた執事雇ってるくらいだから、もしかしたらシェフも一流なのかも…
「そんなにか?…どれ、俺も食べてみよう………っこれは!おい、クオルフ!これマジで美味いな!元の味がどうかは知らねーが、こりゃー良い!」
「うん!これぞ王道って感じ…!すごいねぇ…ほんと、ハンス兄達にも食べさせたげたい…」
ハッ
そっかぁ。みんなと食べない夜ご飯って、このスラムに来てから初めてなんだ…
さみしいなぁ、会いたいなぁ。
玉子たっぷり、鳥肉どっさり、新鮮な野菜も効いてる良いオムライスなんだけどなぁ…
塩の味がするな〜
「お前泣いてんのか…!おいおい…そんな静かに泣くなよ。どうしたらいいか分からなくなるだろ…」
「私、寂しくなったみたい…帰りたいなぁ、速く犯人捕まらないかな〜」
ドンを困らせちゃいけないって分かってるのに寂しくて仕方ないよ。わたし、子どもになったなぁ。
「…旦那様、少々確認して参ります。クオルフ様、暫しお待ちを。」
少しだけ困ったような顔で考える仕草をした執事さんは私たちにそう言ってすぐに食堂を出て行った。
取り残された私たちの間に気まずい沈黙が降りて、ほんの少しして執事さんが戻って来た。
「…クオルフ様、ご安心下さい。今確認しましたところ犯人はつい先程捕まった様です。ギャング間で伝達が遅れ、申し訳ありません。」
安心させる微笑みで執事さんは私に告げた。その瞬間知らず知らずのうちに張っていた力が抜け、ホッと一安心した。
「良かったな!嬢ちゃん。なんなら今から帰るか!寂しいんだろ?」
「……うん。悪いけど今日は帰らせて貰うね。ドン、ありがとう。」
でも、ドンの方が安心したみたい。オロオロしてたもんね。
「いや、いいんだ。…おい!こいつの迎えを呼べ!なんて言ったか…」
「ハンス様でしたら既にお呼びしております。痛くご心配されている様でしたので、すぐに参られると思います。」
執事さんグッジョブ!…でも
「あぁ、ハンス兄に悪いな…心配かけまくって、怒ってないかな?」
「あーー、まあ、怒られるのまで含めてお前の仕事だ!頑張れ!怒るほど心配される様な相手がいて良かったじゃねえか!」
それもそうね。…覚悟しなきゃ。
ハンス兄、怒ると怖いのよね〜
「ぶぅ…分かった。」
「そうとなれば準備いたしませんと。今すぐにお作りすれば間に合うでしょうから【オムライス】をお土産にお持ち帰りください。ハンス様以外はそれで問題無いのでしょう?」
にこっと悪い笑顔の執事さん。てか、そこまでうちの内情知ってるってちょっと怖いぞ。さすがギャングの執事なだけあるね。
「ありがとう!…あ、でもそんなの大変じゃない?いいよそんなの…コックさんに悪いし。」
と、それを言うならオムライスっていう無茶振りしたのも悪かったけどね。まあまあ、そこは置いといて。
「大丈夫です。このくらい。【ケチャップライス】は大量に作ってあるそうですから玉子を焼くだけですので。」
「ほんとですか…?頂けるなら凄くありがたいですけど。」
「ええ。何の問題もありません。」
「それなら…ありがとうございます!執事さん、ドン!あとコックさんにも。」
ちゃんと頭下げるよ。ほんとに嬉しいし。
「あぁ…これは旦那様に小突かれるの決定ですね…。私より先に旦那様のお名前を出してあげて下さいませ。」
執事さんが何か小声で呟いてるけど聞き取れないな〜。悲壮感が滲んでる……?
ま、いいや。
「では支度して参りますので。」
執事さんが再び部屋を出て行った。ドンと二人、他愛ない話をして待っていると食堂のドアがノックされて声がした。
「クオルフの兄です。入ってもいいですか?」
「ハンス兄!!!」
「おう!入れ!お待ちかねだぞ!」
「クオルフ!」
バタンと音を立てて入って来たハンス兄に、こういう場合によくあるビンタでもされるかと思ったけど、ハンス兄は抱きついて私のおでこをおでこでコツンと小突いた。
「ハンス兄…?」
「………あー……もう、心配しただろ…。」
「……ごめんなさい。」
「怖かったろ?帰ろう。みんな待ってる。」
「…うん。迎えに来てくれてありがとう。」
「いいって。…兄貴なんだからよ。」
ちょっと恥ずかしそうに笑うハンス兄を、もう心配させちゃいけないって思った。
「…用意が出来ました。クオルフ様のギフトでお持ち帰りになられますか?それともこちらで運びましょうか。」
執事さんが会話の合間を見て話しかけてくれる。見るとそこにはお盆の上に乗った兄弟の人数分のオムライスや料理、ジュースやスープが入っていると見られる水筒があった。
「ありがとう執事さん。ギフトで小さくしたら軽いですから自分で持って行きます。」
「分かりました。よろしくお願いします。」
「……クオルフ、これは…?」
見た事の無いたくさんの料理に目をまん丸くしたハンス兄が聞いて来る。
「ハンス兄、あのね。夜ご飯をご馳走になってたんだけど、その最中に帰る事になったから、ご厚意でお土産を用意してくれたの。」
素直にいきさつを説明したら絶対怒られるからね。ちょこちょこはしょって誤魔化して丸めた説明を投げてみた。
「それは、………そうか。ドン、本当に色々ありがとうございます。お土産の事もですが、クオルフの事、いつもいつもお世話になっています。」
ハンス兄、45度で頭下げて…お見通しだったかな。
「いい、いい。やめろ。別に世話なんざしてねえし、そこまでされるこたぁねえよ。…好きでやってるんだ。」
今度は私が目をぱちくりさせる番だった。ドンがそんな事ハンス兄に言うなんて、ねぇ。
「…それでもありがとうございます。これからも迷惑かけると思いますけど、クオルフの事よろしくお願いします。」
ハンス兄…私のために…
「よろしくお願いします!」
一緒に頭下げといた。
「ああ、分かった分かった。もう帰れ。こっちが恥ずかしくなっちまったじゃねえか。」
「じゃあ、帰ります。お世話になりました。」
「ドン、じゃあまたね。お邪魔しました。」
よいしょっと。小さくするギフトで持ちやすいサイズにお盆ごとして、重たいジュースや、スープ類はさらに小さくして持つ。
「そういやぁ、明日また来い。あん時の詳しい状況を聞きたいからな。…大丈夫か?」
「うん!大丈夫!また明日!おやすみなさい。」
「あぁ、おやすみ。」
そして私とハンス兄は、帰りは無言のまま護衛に送ってもらってみんなの待つ家まで帰った。




