24 優しきかな仲間達
帰り道は、二人とも無言だった。
護衛の人がついてるからってのもあるけど、何となく気まずかったからだ。
「ありがとうございました〜!」
いつも通り護衛の人にぶんぶんと手を振って別れる。相手も「おーう!」と言って手を振り返してくれた。
ほんとは家の前まで送りたいみたいだけど、私たちの家は二階建ての石積みの建物の上に建った木造の掘っ立て小屋のさらに上の屋根の上に住んでいる。
そこへ行くまでには狭い穴をくぐり抜け、細い板の上を渡り、今にも壊れそうなハシゴを登るしかない。だからこその《子どもの家》なんだけど、そのせいで大人は私たちの家には来れない。
護衛も、逆に言うと刺客も来る事が出来ないから、私たちの家の根本の建物まで送ってもらって、私たちがちゃんと上の家まで帰ったのを確認して護衛の人たちも帰って行く。
護衛が帰って行くのを見て私たちも家の中に入る。
「ただいま〜!」
「ただいま、ちゃんと大人しく待ってたか?」
「ちゃんと待ってたぜ!」
「うん!待ってた!」
「待ってたよ〜!」
ジン、ナサラ、タユタが元気良く返事をする。
「おかえり!ハンス兄、クオルフ。みんなちゃんと待ってたぞ。」
ゼムはしっかり挨拶まで返してくれた。
「お兄ちゃん!クオルフはもう大丈夫なの?」
ハンナは物静かだけどいつも私の事心配してくれる。
「ああ。犯人はもう捕まったみたいだからひとまずは安心だ。後は黒幕をドンや他のギャングの頭が見つけ出してくれるといいが…」
ほんとそうなのよねー。
「…まだ完全に大丈夫って訳じゃないのね。かわいそうに怖かったでしょう…?強がらなくてもいいのよ。」
ハンナ…!
「ありがとう…ハンナ!」
ハンナの優しさに感極まってムギュッって抱きついたら受け止めて、抱きしめてくれた。
あ、ちなみに料理はすでに机に置いてあるよ☆
「そうだ!みんなにまたまたお土産貰ってきちゃった!あ、でも、もしかしてもう夜ご飯食べちゃった?」
「大丈夫、まだ食べてない。みんなドンに感謝して食うぞ〜!」
「やったあ!」
「あれ食べていいの?あんなすごいの!?」
「わーい!お腹空いた!食べよ!」
「ほんとにいいのか!?」
「本当に凄い料理だね。…今度ドンに改めてお礼を言っておいてくれる?」
「うん!もっちろん!喜んでもらえて良かった。この玉子の乗った料理は私が考えたんだよ!」
「そうなの!?すごーい!」
「うまそーっ!」
みんな料理を囲んでワイワイと賑やかだ。ハンス兄はそれを微笑ましそうに見守っている。
「ハンス兄、私たちもご飯食べてからお話しよ?お腹空いちゃった。」
「ああ、そうだな。…よし、みんな食うぞ!」
「「「わーい!」」」
「じゃあ、はい、除菌っと。いっただきまーす!」
みんなの手を除菌・除去して再びオムライスに食らいつく。みんなも、みようみまねでオムライスをすくって食べる。
「!!!これ、すごく美味しい!」
「ほんとだー!うまい!うまい!」
目を見開いて一瞬固まり、とろけるような表情で感想を言い、その後はガチャガチャと食器の音を立てて勢い良く食べる賑やかな食事が始まった。
お腹いっぱいになって皆が寝た後、ハンス兄と私は灯の落ちた薄闇の中で二人、横に並んで静かに話を始めた。
「さっきはありがと。ギリギリまで食べるの待っててくれたんでしょ?」
「……何の話だ?俺は何もしてないぞ。」
そう、いつもならあの時間はとっくに夜ご飯を食べ終わってるはず。ロウソクの節約のために陽が沈む前に済ませてしまうから。それなのに私が帰ってくるかもと思って皆のお腹の限界まで待っててくれたのだ。ハンス兄は照れたように頬を赤くしてそっぽを向いた。
「恥ずかしがらなくてもいいのに。…ありがとね。すごく嬉しかった。」
「…だから、俺は知らねえって。あいつらが勝手にやった事だ。俺はそれに付き合っただけ。」
「あら、そうだったの。まさかあのおチビ三人が待てるとはねぇ。おかしいとは思ったけど、まさか自主的にやってたなんて…後でちゃんとお礼言わなきゃね。」
「そうしてくれ。……それで、一体何があったんだ?一応ドンの使いからあらましは聞いたが、お前の口からちゃんと説明してくれ。」
ついに本題が来たか。さて、どこから話そう。
「…うん。あのね……………………それで、その、心配かけてごめんなさい…」
「はあぁぁぁ……そうか。ひとまず怪我も無いようで良かった。それにちゃんと逃げてくれた事もだな。」
私が知る全ての事の顛末を話し終えると、ハンス兄は大きなため息を一つ吐き、ホッと一安心したような顔で言った。
「……なんで?私逃げる事しかできなかったんだよ?」
「バカッ!危ない時は逃げればそれでいいんだよ!お前の命を第一に考えればいいんだ!俺はお前が無謀にも立ち向かうんじゃないかと思ってずっと心配してたんだよ。」
「…ハンス兄、もしかしてこういう事があるかもって分かってた?」
「当たり前だろ!?ただでさえスラムはそういう所なのに、お前はいかにもお嬢様な格好だし、ギャングにも関わってるし、そういう事が無いと思う方がおかしいだろ!?」
うっ…!確かにそうだけど…
「うぅ…ごめんなさい。」
私が甘かったです。
「とはいえ、お前のおかげでみんな腹を空かさずにすむようになったからな。今さらやめるって言っても許されないだろうし、今の仕事は続ければいい…だが、これからはくれぐれも気をつけろ。そろそろギャング以外にもお前の利用価値が知られてる頃だ。こういう事はこれから増えるかもしれない。」
「…………気をつけます。」
ゴクリと喉を鳴らす。もっと緊張感を持たなきゃね。
「分かったらもう寝ろ!……今日は疲れたろ。」
そう言って、ゴソゴソと毛布を被るハンス兄。
やっぱりハンス兄とドンは似てる気がする。おせっかい焼きな所もちょっと厳しい事を言っても、全部私のための優しさだって所も。
なんかジーンとしてきちゃったから、私もハンス兄の隣に寝転がって毛布を被る。一緒の毛布の中でどうにか顔を隠せた事に安心して、襲ってきた睡魔に身を任せた。




