5 ココ
という事でさっそく次のお休みの日に、スラム学校開いてから孤児院にやって来ました!いや、ね。さすがに休みまくる訳には行かないからね。
ちなみに今回は前回の続きで、八つある生活魔法の残り四つを教えて生活魔法は全員が使えるようになった。次回から教える基本魔法も、大体みんな一日に一回くらいは使えるぐらいの魔力はありそうだ。
前回と同じように裏口の戸を叩き、出て来た修道士にぺこりと頭を下げた。久しぶりだな。
「すみません。南のこどもの家の元管理人クオルフです。お話した通り、ココの兄を連れて来ました。会わせて頂けますか?」
一応アポは取っといたよ。さらに、信用を得る為に王立学園の制服をわざと着て来た。修道士は、暫く見ない内にスラムの子どもが貴族や金持ちの行く学園の生徒になってるんだから、そりゃあ目を見開いて驚いてたよ。
「…ふむ、良いでしょう。ただし他の子には接触し無いように願います。」
「はい、分かりました。」
「では付いて来なさい。」
そう言われて裏口から初めて中へと入る。廊下も通された応接室も清潔に保たれていて、その点の心配はいらないようだ。
大丈夫だとは分かってはいても、やっぱりどんな生活環境なのか私もエルーも心配だったから、二人して小さく胸を撫で下ろす。
「では連れて来ますので、しばらくお待ちなさい。」
「「はい。」」
自然と揃った返事をして、今か今かとココを待ちわびる。ココはもう四才になっている筈だ。赤ん坊の時以来会ってない妹との再会ってどんな気分なんだろうか…
「エルー、今日はココにとっては私達との初対面だからね。あんまり急に引き取りたいとかそういう話しちゃダメだよ。きっと混乱しちゃうから。まずは兄妹だって事と、ココの事が大好きだって事を伝えるんだよ。」
「あぁ……分かってる。赤ん坊だったから、覚えてるわけ無いもんな。」
「大丈夫だよ。離れてた時間はこれからゆっくりと埋めていけばいいんだから。」
まだお母様に会いに行く決心を出来ずにいる私が言うのもどうかと思うけどね。手紙、一応書いたんだけどな……出しに行こうとしてやめて…みたいな。
「ココ、お客人はこちらです。どうぞお入りなさい。」
「……はい、修道士さま。」
扉の前から修道士と、小さな女の子の声が聞こえる。そして……コンコン、とノックが聞こえて
「…ココです、失礼します。」
ギィと、小さく音を立てて応接室の扉が開けられた。
私達は立ち上がって、エルーは緊張してごくりと唾を飲みながら、開いて行く扉を見る。
すぐに、エルーにそっくりな女の子が、扉を開けて中に入って来た。
「……ココ…」
「エルー!自己紹介しよう。ココちゃんも座ってね。 」
思わず絶句するエルーの肩を軽く押さえて座らせて、ココにも椅子を勧める。
「はい、失礼します。」
「初めましてになるね。ココちゃんは私達が何でココちゃんに会いに来たか聞いてる?」
「兄にあたる人がいらっしゃるとは聞いていました。これをくださったのもわたしの兄なのだと。」
うぉお!予想外に修道士がちゃんとエルーの事を教えてくれてたんだな。エルーがココをここに預けた時に渡した、小さな木彫りのウサギの置物をココが大事そうに手のひらに乗せて見せて来た。
それなら話は早いか。エルーはそれを見て、驚きと嬉しさでさらに固まったまま起動してないし、私がある程度話を進めておこう。
「うん、そうだよ。こちらがココちゃんのお兄さんのエルー。ココちゃんの好きなように呼んであげて。で、私はその付き添いのクオルフです。二人ともこの孤児院と似た場所で育ったの。」
スラム育ちって今の時点でわざわざ言う必要は無いからね。そこらへんはまた追い追いに。
「クオルフさん、…お兄さんは大丈夫ですか?」
ココはエルーの事をどう呼ぼうか少しだけ悩んだ後、無難な呼び方を選んだようだった。私は苦笑しながらエルーの顔の前で手を振る。
「おーい!エルー。しっかりしてよね。妹が心配してるよ?」
「…はっ!俺は大丈夫だ!ココ、俺はずっとお前に会いたかったんだ!元気にしているか心配だった。」
やっと頭も体も動き出したエルーは勢い込んで身を乗り出すようにして自分の気持ちを伝える。確かに大好きだって伝えろとは言ったけど、混乱させるから急に話したりしたらダメだって言ったのに!
「エルー、ちょっと一旦落ち着こう。ココちゃんびっくりしちゃってるから。」
「ああ……悪い。」
「ごめんね、ココちゃん。でもエルーはココちゃんの事妹として大事に思ってるから、こういう感じになっちゃってるんだ。そこは分かってくれると嬉しいな。」
「はい…わたしも、お兄さんには会って見たかったので、嬉しいです。」
やばい!ココが早々にデレた!デレさせようの会、久しぶりに活動したぜ!
来週の土曜もこの時間に投稿します。