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チート皇子、姫との出会い

ちょっぴりエッチな描写があります。もちろん十八禁には遠く及ばないとも

前回概要:シルフィ先生の講義その一です、悪を極めたシルフィ先生なめんな!




俺は現代社会が嫌いだ。


顔はそこそこ、運動もそこそこ、頭脳とて優れているわけではない


何をやらせても、平均点。


彼女もいなれけば、親しい友人もいない。


友人は多い方でも、どうしても親しくなれない。


奴らは比べるのだ。


俺よりできれば凄い奴として威張れる


俺よりできなければ、戦闘力五の雑魚として弄られる。


そういう奴とどう仲良くすればいいんだ?


ほどほど嫌気を差した。でも自殺する気にはなれない。


あの日も、バイト帰りでため息をつく。


平凡太郎が、今日も普通に生きていました。


キラキラとした夜の街が、俺の両目を灼く。


その時だった、非日常な一幕を、俺が目撃した。


黒いストレートロングを靡かせ、疾走している恐らく10歳未満の少女。いや、美少女。


そしてその後を追う、日本刀を振り回しているイカレタ中年男。


日本刀に血が付着していて、男は滅茶苦茶な勢いで周りを斬りつける。


悲鳴、混乱、恐怖。


それらがその夜を支配し、俺を魅せた。


普通じゃないことこそ、俺が一番魅入っているものである。


よくよく見てみれば、少女は別に無目的に走っているわけではない。


男こそ狂っているが、少女はその男の注意をうまく自分へと引きつけている


そのおかげ、周りの人々には殆ど被害は行っていない。


「ええ、繁華街です。今はユニ○ロあたりです。早めにお願いします」


予想以上に冷静な俺はまず警察に連絡をいれた。


通報済みらしいが、今通り魔の位置を知らせただけ、プラスと考えておこう。


周りの大人達は、逃げるか、見守るか、その二種類に分けられる。


あまりにも美しい少女の牽制に、見とれてしまったのだ。


でも、彼らは気づいていない。


自分が動かないことで、少女は逃走を放棄して、ゼロ距離で通り魔と戦うことを選択したことに


さっきのように走り回っていれば、木偶の棒の大人達が、何人か通り魔の餌食になるだろうからだ。


そして何よりも、大人たちは、誰もその10歳未満の少女を助けようとしないことに


俺は許せなかった。


少女の美しい顔から汗が流れる。当然だ、いくらなんでも、少女と成年男子の体力差が圧倒的だ


今まで持ち堪えただけでも奇跡に近い。


その上、小柄の少女は決定打を決められない。パワーも、武器の差も、体格も絶望的なのだ。


通り魔は別に刀術の達人でもない。ただただ振り回すだけ。


だからこそ、読めない。


突っ込むにしても危険が多すぎる。


遂に、少女の体力が底をついたようで、少し揺らぐ。


通り魔のまぐれな一蹴りを受けてしまい、受身を取り損なった。


咄嗟に両腕と右足で受け止めたものの、いつも全力疾走している彼女は受身を取るだけの余裕がなく


通り魔は歓喜の雄叫びをあげ、血まみれな日本刀で少女を串刺しにしようとする。


考えてもいなかった。


全てを認識するとき、俺は通り魔を真正面から抱きとめた。


「ざ、けん、じゃ、ねぇぇぇ!!!」


本来ではありえないほどに体に力溢れ、体を蝕む激痛すら無視し、俺はその通り魔の股間に膝を叩き込んだ。


通り魔が悶絶して後ろに倒れる。


やった。


俺が、助けたんだ。


「!!!!」


後ろから少女らしき声が聞こえたが、何を言っているのか理解できなかった。


ただただ、疲れた。


視線が赤く染まり、俺は意識を失い、死んだ。


日本刀が肩から心臓に届いて、一瞬でも意識が残ったことさえ奇跡だったろう。





意識が戻った時、俺は既に5歳だ。


この世界で生きて5年、俺がいつも心の中にモヤとした違和感があった。


5歳の時遂に全ての記憶が戻った。


俺が、フランディ帝国の十三皇子だ。聞くだけなら地位が高そうだが、俺は父上と城内の侍女の子供なので、上の兄と姉に威張られるのが仕事だ。


でも第一皇子のマークス兄上と、第三皇女のリリス姉上は何故か俺を気に入ってくださっている。


さもありなん。俺は他の阿呆皇子皇女と比べて、非常に大人びいている。前世の記憶があるから。


皇位継承権が俺よりすこし上だから見せびらかすような阿呆達では、覇王の再来と言われるマークス兄上のメガネには適わないらしい。


リリス姉上が俺を溺愛する理由は流石にわからんかったが。まぁ、愛情をまともに受けてこなかった俺にとってはリリス姉上は一生頭が上がらないような人だ。


二度と凡人呼ばわりされ、マークス兄上やリリス姉上を失望させないように、俺は頑張って武を修業してきた。


俺が持つスキルに、覇王の資質と鑑定がある。


覇王の資質はフランディ帝国の皇族の中に、極まれに生まれる天才の証である。


初代皇帝、そして父上とマークス兄上はそのスキルをもっている。父上の資質はlv4と割と低めだが、それだけでも凄くチートなのだ。


覇王の資質は、己の成長率をレベルに応じてあげるスキル。


本来、人間はレベル一成長するごとに、ステータスも相応に成長する。成長率が1ともなれば化物と呼ばれる。


例え、筋力の成長率が0.8として、その人がレベル90になれば、筋力が72成長するという寸法だ。筋力が72もあれば、将軍の座をも狙える。無論スキルと他のステータス次第だが。


そして覇王の資質を持つと、元の成長率が0.8でも、資質lv4あれば、成長率が1.2となる。


つまりレベル90になれば、72所か、99を突破できるのだ。Cランクの下位守護騎士は筋力30もあれば受かる、Aランクの近衛騎士ともなれば筋力50あれば十分。


一見20しか離れていなくとも、50と30の差は大きい。四人掛かりでやっとって程度に双方の差が開いている。


72と99(実際は108だが)も言うまでもなく、圧倒的すぎて、72の天才が霞んで可哀想に思えるほどに。


マークス兄上はlv8の資質を持つ。数々の戦争に参加して、今はレベル61になったが、既に抵抗力が99突破している。


でも、俺の持つ資質はlv10。


頭のできはマークス兄上とリリス姉上には遠く及ばない。でも、チートな覇王の資質をもっている。


だから俺は、将来皇帝になるだろうマークス兄上を支えるため、戦下手のリリス姉上を守るため、武に全てを捧げた。


マークス兄上は鑑定紙によって俺のスキルを知って、父上に俺の皇位継承権をあげようと進言したが、俺が断った。


「お褒めいただき恐縮にございますが、私は武しか知らぬ男。政の才能皆無故、皇位を継ぐつもりは毛頭ございませぬ。一人の武人として、兄上を支えたく存じ上げます」


父上は「その心構え天晴れなり」とお喜びになり、俺の皇位継承権を13から3に上げてくださった。


「皇帝になりたくなくば、見事にマークスやリリスを守りきってみせよ」と、父上は覇者の笑みを持って宣言なされた。


因みに一位はマークス兄上で、二位はまさかのリリス姉上である。


覇王の資質がないものの、リリス姉上の魔法の才能と知能が歴代最高と言われている為だ。


マークス兄上に何かあったら、リリス姉上はフランディ初の女帝となるだろう。リリス姉上は家族として愛しているが、同じくマークス兄上も大切なので、このような事態にならぬように尽力するつもりだ。


そして鑑定は、お馴染みのチートスキルである。


鑑定は非常にレアであり、相手のステータスやスキルを見破れる破格のスキルだ。何時の世でも、情報が一番大切である。


俺が努力して取得した記憶のスキルと合わせて、鑑定した結果を後に紙に写すこともできる。


その後も、俺がメキメキ力をつけて、最年少で将軍の位に付いた。


リリス姉上から心配されたが、lv38とはいえ、覇王の資質lv10もある俺に勝てるのはもはやマークス兄上だけだ。父上ですら今の俺には相性負けするだろう。


そして帝国将軍になった3年になって、国境でオリシア王国あたりに不穏な動きがあるとの報告を受け、俺は部下と一緒に辺境のマーリン城に行った。


王国はいつも帝国を敵視していて、隙あればちょっかい出してくるのだが、父上は戦争で王国を蹂躙するつもりはない。


何故なら、ここ数年が自然災害で、飢える民が増えてきているからだ。


本来、その飢えた民を戦争に出して口減らししてもいいのだが。父上はそんな手を取らなかった。俺の誇りだ。


ここ最近ようやく落ち着いてきたが、王国は父上をヘタレな愚王と勘違いして、まだ国境で妙なことを企んでいるらしい。


マーリン城に辿り着き、捜査を始めた。そこで、俺がもう一度彼女に出会えた。


前世と違い、ロングストレートが白銀になり、背も伸びて女性らしき丸みを帯びてきている。


真紅な瞳があの時と変わらず、冷酷に奴隷商人を睨みつけている。


「はいはいそこまでだ。」


習慣でまず彼女を鑑定した。そこで俺は初めて鑑定スキルに感謝した。



名前:シルフィ・ペンドラゴン

種族:吸血姫・真祖14位

年齢:0歳   性別:♀

レベル:2   状態:飢餓(軽)

筋力:376  抵抗力:411

速度:552  魔力:400

精神力:140 回復力:631

技巧:120  幸運:2


スキル:真祖、吸血衝動、神力、神速、天命、天魔、日光耐性lv9、状態異常無効、鮮血操作lv10、鮮血契約、闘技lv10、刀術lv10

    闇魔法lv4、光魔法lv4、火魔法lv4、水魔法lv4、風魔法lv4、土魔法lv4、魔力操作lv4、限界突破lv10、魔法ダメージ半減、

    物理ダメージ半減、自動回復lv10

特典スキル:フランディ帝国語、光属性耐性lv5、空腹



俺のチートがゴミのように見えてしまうほどのチートパレード。特に日光耐性と光属性耐性は吸血鬼の呪いを完全に潰した。


ダメージ半減類とステータス増強類、真祖という神性にも似通うスキル。限界突破lv10で、最大ステータスは1000をも超えられるようになる。


それで状態異常無効も混じって、いよいよ倒すのが無理ゲーになってきた。倒すつもりは毛頭ないがな


どうやら彼女がこの世界に転生した訳ではなく、転移されたばかりらしく、困惑している所、吸血衝動に飲み込まれそうになって、デブリンの阿呆がさらに刺激してしまった。


どうにか捕食される前に彼女を止めたものの、彼女自身の理性が戻ってなければ俺程度では到底無理だ。


彼女を宥めて、次の日にまた合う約束を取り付ける。


それからバリンに彼女のステータスを教え、対策を練るように帝都にも手紙を送る。


彼女がその気になれば、帝国を一人で潰しかねない。いくら彼女に好意を寄せていても、報告義務はある。


次の日、彼女は約束通り、正午にて城に訪れた。


俺は彼女に盗賊討伐と捕獲の報奨金とデブリンからの慰謝料を渡して、試しに奴隷制度への態度を聞いてみる。


もし彼女は本当に昔のあの少女ならば、奴隷制度を快くを思わないはずだ。


しかし、彼女はまさか奴隷制度を褒めた。地球人ではないのかと思ったら、本当に日本人だった。


俺は困惑した、今まで我慢してきたが、地球人の俺にとって奴隷制度はクソだ。なのにあの自分の身を犠牲にしてまで、人を助けようとした彼女が、奴隷を容認するか?


彼女は困惑した俺に毒を吐きつつ、その理由を講義してくれた。


目からウロコとは正にこの事。


正義だけでは救えない人間がいると教えてくれた


悪であることに、助けられる人間が増える時もあることを教えてくれた。


己を絶対悪と断ずるも、優しく人を助けようとする彼女はあの時のように美しかった。


「父上とマークス兄上やリリス姉上へのお土産話ができたな。」


「ジークさま。討伐隊の準備ができました。いつでも出発できます。」


「ああ、王国の触手を片付けて来るとしようか」


例の山賊も、実は王国が雇ったチンピラの一部であり、数多くの山賊が帝国商人を狙っているという証言を得た。


相変わらず小さいことをする王国だ。


お陰で、前世から慕っている彼女に出会えたのだ。感謝の気持ちを込めて掃除してやろう。


意気揚々と出発しようとした時に、領主の城の外に二人の少女の姿が見えた。


また帰ってないのか。


少女、シルフィは自分の腕で口を塞いで、心臓あたりに手を当てて苦しそうにしている。B級傭兵のメーリーが彼女の背中をさすって焦っている。


どういう事だ、シルフィは日光耐性lv9がある、いくら正午でも精々眩しい程度にしか思えないはずだが。


ふっと、鑑定が発動された


名前:シルフィ・ペンドラゴン

種族:吸血姫・真祖14位

年齢:0歳   性別:♀

レベル:2   状態:飢餓(重)


何故さっき気付かなかった。


吸血鬼は真祖でも使徒でも、同じく吸血衝動がついている。


血が見えると殺戮衝動が爆発的にあがり、定期に血を摂取しないと衰弱して死んでしまう。


特に飢餓の時、強制的に狂乱状態異常が掛かり、見境なく暴れるのだ。


状態異常無効があるお陰でシルフィはまだ耐えられているが、自分の血では衝動を満足できない。


「ジークさま、彼女の傷が……!」


バリンも状態がおかしいと思ったか、珍しく焦った声で俺を呼ぶ。


当然だ。いつ、シルフィが吸血衝動に負けてもおかしくない。


真紅の眼が揺れる、俺を視認してすぐに目を閉じた。そしてその口を塞いだ腕が更に血を噴き出し、地面を染める


「ちょっと、気をしっかり!本当にどうしたの!?」


「っち!」


「ジーク様!」


見ていられず、またあの時のように勝手に体が動いた。


シルフィを抱き寄せて、メーリーに庇えと命令する。メーリーは最初良くわからない顔だったが、まさかっと言った表情になって、すぐにシルフィを討伐隊の視線から離れるように守ってくれた


口からシルフィの腕を持ち出そうとも、彼女は頑なに噛み付いているので無理だった。


ちょっと焦ったが、すぐに腰から愛剣を抜き、右手を小さく傷つけた。


その途端シルフィが大きく震えて、いやいやと頭を振り始めた。


左手で優しくその頭を撫でて、俺は右手をシルフィの口に近づけて、囁いた。


「飲んでいいぞ」


ビクッと、シルフィは目を開けて、俺の右手と俺の顔を交互に見る。


ちょっと強引にシルフィの後頭部に手を当て、右手の傷の所に押し付けてやった。


ひらり、血まみれた細腕が脱力してぶら下げて、シルフィが恐る恐る舌を出してにじみ出る血を舐め始めた。


でも、回復力と吸血姫の特殊能力によって、舐められた箇所がすぐに傷が塞いだ。


「!」


シルフィが絶望したような表情で上目遣いしてくる。


「じゃ、噛めよ……普通吸血鬼はそうするだろうが」


「……!」


声すらうまく出せないようで、小さく“ん”と鳴いて、シルフィが俺の腕に噛み付いた。


痛みはない。まるで蚊に刺されたように、チクチクと血が吸われていく。


その小さな口から、柔らかい舌が溢れ出る血を舐めとって、官能な感情にさせてくる


まるで彼女に奉仕させているかのように、ちょっとだけ高ぶって来た。すまん、嘘だ、かなり興奮してきた。


そこは吸血鬼伝承の催淫作用なのかどうかはわからない。俺は唯々、自分の催す劣情に耐え続けた。


小一分後、シルフィは恍惚した顔で腕から口を外した。涙目で俺を見てから、ペロペロと傷口を舐めて癒した。


鑑定してみると、彼女は既に状態異常が飢餓(極軽)になった。


「大丈夫か、また足りないようだが……」


「一先ず、大丈夫、です……」


シルフィの顔が赤く染めて、両足がもじもじしている。


地面に透明な液体がポタと落ちて、彼女の現状を示している。


「くぅ!あり、が!と!ん!!あぁ!!~」


一生懸命にお礼を言おうとしてて、シルフィは喘ぎながら全身から力を抜けた。


慌てて抱きとめると、シルフィは既に気を失っている。


「……はぁ。バリン」


「っは!」


「彼女を俺の部屋に寝かせておけ。お前に任せるが、何があったら責任者一族郎党の首だけでは済まされないと心得ろ

 そしてメーリー。俺が帰ってくるまで彼女から離れるな。いいな」


「御意!」


「は、っはい!」


バリンにグッタリしているシルフィを渡し、俺は討伐隊の所に戻った。


メーリーはどうにもシルフィの種族を知っている節がある。もしそうならば一大事だ。


吸血鬼についてさほど詳しくないが、帝国王国法王国全体から人類の敵認定されている。


決して漏らす訳にはいかん。


彼女達には悪いが、暫くの間には俺の指示に従ってもらわねばならん。


「待たせたな。予定に変更はない。行くぞ」


「「「「「っは!!!」」」」」


シルフィの痴態を脳内から追い出して、俺は討伐隊を率いてマーリン城から出た。


さて、これから忙しくなるな。


何故か凄くエサ付けられるシチュエーションに持って行きたいダメ作者でした

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