ヤクザ吸血姫、奴隷を語る
ちょっと長めです。シリアスです。異世界に人権の概念ないので、現代の人間にとって結構キツイ話題かもしれません
前回概要:おじょうさまのステータスはんぱないです
「ありがとうございます。メーリーさん、今日は非常に助かりました」
「もういいわよ。あの将軍の頼み事だし、化物ステータスだし、はぁ……」
「具合が悪いのですか?」
「誰のせいだと……いや、何でもないわ。明日の朝迎えに来るから……」
「明日も案内してくださるのですね。助かります。恋に落ちてしまいそうです」
若干おふざけを混じって返事してたら、メーリーさんが顔真っ赤になって慌てて叫ぶ
「やややめて!!貴女に言われると恐怖感半端ないんですけど!」
あら、傷付きました。
私、ヤクザらしくないと言われておりましたのに。
何で怖がられたのでしょう。
昔の廉治ならまだしも。
「いや、気を抜いたら首にプチっと来る気がして……
(抜かなくても襲われたら抵抗できないでしょうけどね!!)」
「そんなことは多分今日はしませんよ~」
「多分をヌケよ!それにさり気なく今日という期限を入れんじゃないわよ!益々心配するじゃない!」
「まぁ、半分は冗談として」
「え、半分は本気なの?」
「私のお茶目に付き合って頂けるし、この国所か世界自体良くわからないんですから、貴女という縁は非常にありがたいです。ありがとうございます」
メーリーさんは重くため息をついて、こめかみをマッサージしながら答える
「いいのよ。全く、貴女は自分がどれだけ人外なのか理解してない所が一番厄介だわ」
「吸血姫だから、最初から人間ではないのでは?」
「っし!今は旅館の個室で誰も聞いてないからいいけど、人前に自分の種族をばらしちゃだめよ」
真顔になって、メーリーさんは私に吸血鬼という種族を説明した。
曰く、吸血鬼は強健な力と膨大な魔力を合わせて生まれるチート種族らしく、
昔吸血鬼が神々に喧嘩を売って、神々が多大な犠牲を払いながらその戦争には勝ったが、13柱の祖となる吸血鬼を消滅まで至らず、封印に留まった。
そして、全ての吸血鬼に呪いを掛け、日光と光属性という弱点を与え、吸血衝動というデメリットだけのスキルを与えた。
そうすれば、吸血鬼の残党も本能に逆らえず、人間を襲うようになり、隠れにくくなると踏んだのだ。
実際、今には吸血鬼が殆ど存在せず、暴れれば人間の聖騎士などに討伐されるらしい。
つまり吸血鬼は亜人かと思ったら、思いっきり人間の敵で、魔物に分類される。無理もないことだ、神々の敵でもあれば、人間を捕食する天敵でもあるのだから。
「貴女はそんなに悪い奴には見えないから、恩もあるし、通報はしないわ。でもね、今日みたいに何も食わぬ顔で人間を殺そうとするのはやめたほうがいい。絶対目立つし、場合によっては犯罪者になるから」
「そうですね。確かに、デブさんを殺そうとするのはちょっとやりすぎました。」
あの時、異様に私の体が高ぶっていて、冷静を失っていました。
その前の、血溜りを眺めてた頃も、同じく殺戮衝動に塗り潰されてしまっていた。
いくら私が前世で暴力と背中合わせの生活をしていようと、別に殺しが好きではありません。寧ろ暴力に慣れているからこそ、暴力もしくは殺戮衝動が薄い。
私がおかしくなった原因の一端は想像ついています。
吸血衝動
聞けば私のスキルの中では唯一のデメリットだけのパッシブスキル。(鑑定紙に表示されないスキルは知らないけど)
正確の効果は吸血鬼と鑑定持ちしかわからないと聞くが、私から見れば、効果は恐らく
“血”が飲みたくなるだけのものではない。
無論それも含まれているはずだけど、もしや“血”を見るだけで、私は高揚して半ば狂乱みたいな状態に陥いるのではないでしょうか。
状態異常無効を持っていますから、狂乱にはならないかもしれませんが、寧ろ状態異常無効だから、ギリギリで止められたのではないでしょうか。
鑑定紙を使う時、自分の血には反応しませんでしたが、自分の血がカウントに入らない可能性もあり、油断は禁物です。
その原因の推測をメーリーさんに伝えて、彼女は眉を顰めて頷いた
「……そう。まぁ、可能性としては充分あるけど。取り敢えず気をつけておきなさい。明日はジークフリード将軍と会うのでしょ?早めにおやすみなさい」
「?ジークフリード?ああ、あの青年ですか。」
将軍と言われて驚く所かむしろ得心がいきました。
彼の所作の一つ一つが、自分のことが優秀な武人と言う事実を披露してくる。
視線の動き方から、歩法、そして無意識ながらも私に対する警戒心。
その年にしては非常に成熟した武人と言えるでしょう。前世の私とはいい勝負できそうです。
「そうそう、将軍様ですから、あんまり失礼ないようにね。貴女なら帝国を敵に回しても生きていけそうだけど、やめておきなさい」
「はい。面倒ですし」
「……そうね。じゃ、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
呆れた顔でメーリーさんは部屋から出て行ってしまいました。
大丈夫でしょうか。かなり悩み多そうですね。
「明日になったら、悩みを聞いてあげるべきでしょうか」
「おじょうさま、おことばですが、たぶんおじょうさまのせいです」
「何のことですか?」
「……」
「よしよしいい子です」
何故か無言で頭を垂れる廉治を撫でてあげ、私は就寝することにしました
「そう、だからそのレンジちゃんもちゃんと守っておきなさいよ」
「はい、元よりそのつもりです」
朝、メーリーさんは宣言通り早朝から旅館まで来てました。
正午の、ジークフリード将軍さんとの会見まで時間は長いので、私の常識勉強のお時間になりました。
メーリーさんはぶっきら棒な態度を取ることが多いですが、以外でもなく優しく、お世話を焼きたがるお姉さんのようです。
この帝国、周囲の王国と法王国以外、商人ギルドから傭兵ギルドを教えて頂きました。
未だ魔法を教えてくれません。ひどいです師匠と嘘泣きしながら甘えてみたら、メーリーさんが折れて、午後にでも教えると約束してくれました。チョロいです。
そしてさっきは魔物の生態の話になり、そのまま廉治の話になりました。どうやら廉治も私と同じく珍種のようです。
「妖狐って、尻尾多いと魔力の保有量も多いの。生まれたてで三尾は凄いんじゃないかしら。よく知らんけど。」
なんでも妖狐は魔物の一種で、人間を恐れ、数も少ない魔物と言われている。
魔力の保有量は他の魔物と一線を画し、最終に進化した九尾の妖狐は魔物の頂点のひと柱とも言われている。
三尾の廉治も、小さい割に魔力量が高く、鑑定紙を使った結果、魔力だけなら80もある。
私のオール99で霞むけれど、80もそれだけで無双できそうな数値だそうです。
「その外見もあって需要があるのよね~可愛いし。でもあんまり捕まらないし、人には滅多に懐かないからね。」
「廉治は私が大好きですので、問題はありませんね」
「いっしょう!おじょうさまについていきます」
「ほら廉治もそう言っています。」
「はいはい。ん?」
ドーン~ドーン~
遠くから、重い鐘の音が響いてくる。
11回、もしかしたらそれって
「メーリーさん、その鐘の音って」
「うん。後一時間で正午になる合図のようなものね。12時にはもう一回響くけど、今行きましょうか。あんまりジークフリード将軍を待たせては悪いし、」
「分かりました。」
鍵を旅館の女将に渡し、私たちは店を出る。
そういえば、どこ行くんでしたっけ
「そう言えば、ジークフリードさんはどこにいるんでしたっけ?」
「お城よ。何当たり前のこと聞いてんの?昨日行ってたでしょう」
「なるほど。昨日の建物と言えばそっちですね」
「はい、逆です。こっち」
「ごめんなさい……」
迷いそうなので、正直に謝ってメーリーさんの後ろについていきます。
またあの赤い屋根の商人ギルドを経過して、私たちはマーリン城の城主が住むお城までたどり着きました。
メーリーさんが門衛に話を通すと、短刀数本を渡して私を連れて入った。
「ジークフリードさんは城主なのですか?」
「違うけど?」
「なら一介の軍人が、何故城主の城に?」
「あぁ、あの人将軍です、普通の軍人じゃありません。いい?」
「将軍さんだと待遇がいいのですね」
「まぁ、いいけど。いずれわかるから教えるけどさ、ジークフリード将軍は将軍様だけれど、帝国の十三皇子でもあるの。そういう高貴な方を兵站で寝泊りさせるわけにはいかないでしょ?そういうこと」
なんと、皇子でしたか。
でも十三皇子って、なんとなく惨めですね。王位継承権なさそうです。
ああ、だから将軍か。継承権のある人間に兵を握らせるのは、皇帝様がいつクーデター起こるかビクビクするもんね。
「なんか黒いこと考えてない?」
「いいえ、別に?」
至極真っ当な推測しかしていませんとも
「ジークさま。メーリー・キャスタル、及びシルフィ・ペンドラゴン、ただいま参上いたしました」
「入れ。」
ドアの前に立っている執事風の男が軽くノックして、中に知らせる
すぐに中から青年、もといジークフリードさんの渋い声が返ってくる。
「失礼いたします」
「「失礼します」」
中には書類処理しているジークフリードさんと、一人のメイドが後ろに仕えている。
私たちが来るのを見て、ジークフリードさんは机から離れ、隣のソファーに座る。
「来たか。バリン、お前は外に出てろ。メイ、紅茶だ。」
「は……」
「かしこまりました」
「お前たちは適当に座れ。すぐに終わる。」
その言葉にメーリーさんはとんでもないとか言って戸惑うが、私はごく普通にジークフリードさんの向こうのソファーに腰を掛けた。
私の行動を見て、メーリーさんはまた呆れたような表情で頭を垂れて、渋々私の隣に座った。
すぐに、メイドさんは紅茶三人分を淹れてくれて、そのまま外に出た。
「昨夜はよく過ごせたか?」
「はい。メーリーさんのおかげで何とか。今後の身の振り方はまた決まったいませんが」
「それはよかった。メーリー・キャスタル、お前には相応な報酬は支払われる。もういいぞ、出て行くといい。」
「は、はい?」
「俺はこのシルフィ殿と二人で話がある、わかるな?」
「はい!すぐ出ます!」
ジークフリードさんが少し威圧を当てて睨むと、メーリーさんはすぐに飛び上がって、一礼すると逃げるように出て行った。
「あんまり女性を虐めるものではありませんよ」
「それは済まなかった。だがお前のことは国家機密レベルでね。そうだ、まずは報奨金と迷惑料だな。受け取れ」
ポン!と、ジークフリードさんはどっから小さな袋を出して机においた。
開けてみたら、中はビシリと金貨が詰まっていた。
「盗賊の死体も少々食われたが、確認できた。規模は小さいが、頭のせいもあり、中々捕まらないんでな。10金貨と奮発させてもらった。」
一応、金貨は非常に高い価値がある。
一枚で体感10万円ありそうです。因みに旅館でも両替して貰いませんでした。
後で洋服屋で40銀貨ほどの服を買ってようやく崩せたのです。ババアさんへの借金も既に孫さんのメーリーさんに渡し済です。
ですから、金貨10枚も結構大盤振る舞いに思えます
「残りの30枚はデブリンからの慰謝料だ。昨日のは相当堪えたみたいでな、お前の名前出したらごめんなさい連発して来やがった。面白かったぜ」
「まぁ、三十枚で命が繋がるのですから、結構いい買い物と思いますね。」
「違いねぇ。コレで懲りて、真っ当な商売してくれれば最高なんだが。後は奴隷三人だ。」
ジークフリードさんは紅茶を口に付けると、剣呑な眼差しで睨んでくる。
もう、女性に威嚇してはいけませんと、お母様に教われなかったのでしょうか?
「三人は実質お前の奴隷だ。お前が引き取ってもよし、売り払ってもよしだ。」
「犯罪奴隷ですから、てっきり貴方が主導権を握るものかと思いましたが」
「憲兵や騎士に捕まれたのなら、そうなるが。基本として捕まった人間に所有権を渡すんだ。犯罪奴隷に墜ちた瞬間、奴らは人間じゃねぇ、物だからな。誰が拾ったなら誰が所有するのは当然だろう?」
「分かりました。売る場合はどうなるのでしょうか」
「頭が4枚金貨、残りは20枚銀貨と言ったところだ。頭は結構やるからな、鑑定してかなりのステータスをお持ちだ。」
「すみません。奴隷についてご説明頂けますかしら、私はそういうの分からなくて」
「ああ、いいぜ」
ジークフリードさん曰く、奴隷は言わば人間(もしくは亜人)の形をしている道具である。
隷属の首輪さえつけておけば、どんな人間(亜人)でも付けた主に逆らえなくなる。
命令されなければある程度の自由は認められるが、主人へ少しでも悪意を持てば、首輪から電撃のような魔力が流れ激痛に苦しむことになる。
奴隷は通常堕ちる時主人に少なからず悪意を持つため、その首輪を持って躾けるのだという。
悪意を持たず主人を害する時への対策も完璧で、主人の任意で同じペナルティが与えられる。首輪が破壊されるか、主人の心臓が1分以上動かないと、奴隷も死んでしまう。
完全に人間として成り立たなくなるように、隷属の首輪が奴隷の心を殺すのだ。
「なるほど。奴隷として使っても、危険はないのですね」
「……ああ、そうだ。」
元も、私があの程度の人間に寝首掻かれるとは思いませんが、使い勝手がいいようですし、頂きましょう。
「では、山賊の頭だけをいただきます。残りは貴方が処分されるといいでしょう。」
「そうか……」
恐らく、残りの二人、もしくは二つには、暗い後半生が待っているでしょうけどね。
ジークフリードさんは暗い表情で、私を少し睨むと、口を開いた
「なぁ、お前は、奴隷制度をどう思う?」
ふむ。質問の理由は分かりませんが、もしかしたら
「非常に合理的な制度と思いますが。貴方は奴隷制度がお嫌いで?」
「ああ……」
ジークフリードさんが悲しく目を閉じて、苦笑いする。
「英語などの外来語に反応できたから、地球人かと思ったがな。違ったか」
「前は日本人でしたが?」
「何?お前も?」
そう言えば、メーリーを始めとしたこの世界の現地民はドアなどの英語を喋りませんね。ナイフを短刀と言ってましたし。
ババァさんがどうやって私を見抜いたのか、前まで良くわからなかったけど、それでなのか。
話術も奥が深いのですね。
「はい、そうですよ。それが何か?」
「なら、何故?日本に奴隷制度はない、人権があるはずだ。この文化レベルの低い時代の遺物が、合理的だと?解せないな」
「まぁ、理由を求めるのならば、別にお教えしても構いませんが」
同郷のよしみもあるし、色々と便宜を図ってくれましたしね。
「まず、奴隷制度は今のままでは決してなくなりません。むしろ廃止しないでください。迷惑です。」
「……奴隷を持っていれば、便利だからか?それなら雇っても……」
「違います。貴方はバカですね。」
「なっ?!」
「宜しいでしょうか、良くその耳を掘じって、足りないお頭で聞いてください。」
奴隷制度とは、人間を物として扱い、売買させるシステムである。
現代では確かにありえないような制度だが、この古い世界ではやむを得ない。
「現代、日本に奴隷がいないのは、人権の普及もあるけど、最大の原因は食に困らないからです」
「しょ、食?」
「はい。奴隷は全員犯罪奴隷ではないのでしょう?」
「ああ。両親に口減らしで売られたか、難民か、それとも攫われる貧民と亜人とかだな……」
そう。そしてその中に一番多いのは、別に誘拐ではないことに、彼は気づいていないようです。
犯罪奴隷はこの際ほっておいて、刑罰として他のシステムとみなします。
犯罪奴隷以外の奴隷は、殆どが両親に売られたか、飢え死にしそうな人間ばかりです。
昔も、この世界も大体は同じです。
「山賊もそうです。生活に困らない人間は、性格に欠陥さえなければ、普通は犯罪しません。子供も売りません。自分を奴隷として売りません。そうするのは、そうしなければ生きていけないからです」
普通の平民は、子供が多くて養えない場合、その子供が生まれたら奴隷として売ることが多々ある。
そうすれば、生まれた子供で自分らが飢えることもなければ、少しまとまった金も手に入る。
子供のことを無視すれば、正にウィンウィンなのです。
「子供はどうなる!奴らは、望まれてもいないの、親に捨てられ、犬畜生のような生活を強いられてしまうんだぞ!」
「それが、対価なのですよ。その両親が幸せになる対価」
もし奴隷制度が無ければ、その望まれない子供は、そのまま捨てられて、野獣や魔物に食われてしまうのが関の山だ。
孤児院もあるけど、受け入れられる子供は多くない。どうしても犠牲は出る。
「奴隷商人は、その犠牲を利用して、利益を作り出しているのです。いいですか、子供は捨てられた時点で、死んだのですよ」
「捨てられた時点で、死んだ……」
「確かに、奴隷は見ようによっては死ぬよりもキツイでしょう。でも、彼らは生きている。それが奇跡なのです。」
「そんな尊厳のない生き方、奴らが望んでいると思うか?!」
「思いませんかもしれない、でも物になってても、生きたいと思う人なら、貴方は知っているはずです。」
「…!!あの山賊たち……!」
あの山賊たち、自分が必ず犯罪奴隷に堕ちることを理解できないほど愚かではない。
それでも跪き、生きたいと願った。
「犬畜生の生活?結構なことです。人間を人間らしく生かせるのは金がかかりますが、畜生の餌は遥かに安い。
知っていますか。昔話なのですけれど」
昔々、一つの帝国の家臣が、飢饉が起きた地域に巡察に行った。
彼は気づく、その地を管理する官僚が、国のくれた金を40%くらい横領したことに。
その40%を誤魔化す為、官僚は災民に食わせるはずの麦を、馬や豚の餌に変えた。
そしてその10%を巡察に来た家臣に貢いだ。
家臣の友人は怒った。なんて厚顔無恥な奸臣か!と
でも、家臣は逆にホッとして笑った。
友人は怒りに任せて家臣を問い詰めた、お前は賄賂で買収されたのだなと
家臣はこう答えた
「まさか。私はホットしたのですよ。馬や豚の餌は、凡そ麦の三分の一くらいの値段です。つまり、彼は残りの60%の金で、本来の二倍の人間をお腹いっぱいに食わせられるのです。
こうも欲望に強いと、私が手綱を握るのも容易くなりますね。」
「でも、餌は、人間の食うものじゃねぇ!」
「知っていますか?飢餓が限界を越えてしまうと、大体の人間は犬畜生にも劣るものですよ。草の根っこを掘じって食べたり、野犬の死体の骨を齧ったり。周りにある毒草を食べて、笑ったまま死ぬ人間もいます。
その人たちにとって、豚の餌でも結構なご馳走なのですよ。」
ジークフリードさんは、目を見開いて、放心してしまった。
「その家臣は、賄賂を受けながら、その奸臣たちをうまく操って、その帝国を豊かにしたのです。あの家臣のいる代は、帝国一番豊かな時代になりました。つまり、そういうことです」
悪は必ず悪にあらずして、善もまた必ず善にあらず
普通では悪と判断される行為で、救われるものもある。
普通では善と判断される行為で、害してしまうものもあるのだ。
極道のように、
もちろん法を犯す極道は悪なのだろう。
でも、裏社会での帝王いなくては、裏の秩序は乱れる。その時、表の天平だけでは捌ききれない。
だから、極道と関わりを持つ警察も、結構多い。
その悪によって、平和は守られているのだ。
無論、純粋に平和を乱す暴力団もあるだろう。そういうものは我が染岡組が容赦なく叩き潰して来たものです。
「そう、なのか……」
「実話ですよ。」
「そう、だな。奴隷制度は、合理的なのか……」
「はい。でも、自分の子供を奴隷として売るのは正直ヒキます。」
「それでも合理的なんだな」
「はい。貴方は人権、避妊の仕方などを普及させる前に、売られる子供は増え続けます。食べ物が全ての民に行き渡らないと、奴隷はいなくなりません。
奴隷というふざけた制度は、不平等の証であり、貧しい証拠です。」
世の中は元々不平等だ。誰もが平等に人間であるなぞ嘘っぱちです。
貧しい家に生まれる人間、一生贅沢していられる人間。美しい顔に生まれた人間、醜い顔をしている人間。
頭いい人間もいれば、阿呆な人間もいる。運動神経抜群の天才がいれば、鈍間の亀さんもいるのだ。
要は、平等を謳うよりも、一生懸命生きていくことなのだから。
貧しい家に生まれた人間でも幸せが手に入るし、一生贅沢を尽くした人間でも不幸になり得る。
美しく悲劇を迎えた人間など数え切れないし、醜い顔で成功した人間とて珍しくない。
平等など、劣る自分を慰める狂言にすぎない。劣っているのならば、凄い人間になる為努力するだけのことなのに。
「奴隷制度がお嫌いなら、足掻きなさい。奴隷制度が無くなれるように、この帝国を豊かにしてみなさい。全員が食に困らないように、子供が売られないように」
そうでもしなければ、奴隷はいなくならない。
私が、闇を食らって自分のものにしたけれど
貴方は、きっと私のような絶対悪にはなれません。
だから、
闇を嫌うなら、貴方は光を持って照らすしかない。
「……ありがとう。とても為になる話だった。」
「いいえ。」
「そうだな、お礼に、一つサービスしてやろう。」
「?はい?なんでしょう」
お礼って、お金でしょうか。十分に持っていますけど。
「鑑定だ。お前のステータスを正確に教えてやれる。俺の鑑定スキルは、鑑定紙なんかよりも遥かに優れているからな。」
「ジーク様!」
門外で盗み聞きしていたのか、執事が慌てて入ってきた。
「ジーク様、何故自分のスキルをおばらしになったのです!」
「下がれ」
「恐れながら、ジーク様ご自分の立場を」
「下がれ!昨日話したことはもう忘れたのか!」
「っ!失礼、い、いたしました……」
執事が真っ青な顔で静かに去っていた。
なるほど、鑑定スキルで、私のステータスを読めたのですから、
昨日で執事はもう私の種族とステータスの一部を知っているのでしょう
「ま、自慢ではありませんが、私が今や人間の敵ですからね」
「全く本当に自慢にならんがな。お前のステータスは、帝国を転覆させられるほどのものだ。だから誠実に対応したい」
「そうですか」
つまり暴れられても困るから、下手に出ますので大人しくしててくださいってことね
「因みに、同じ転生者として、個人的に仲良くなりたいのもあるな。この帝国でも、知っている地球人はわずかの5人だ。俺達を除けば」
だからと、ジークフリードさんは壁の絵画の後ろに隠された金庫から、二枚の紙を取り出した
「読め。俺が昨日暗記して書いたお前のステータスだ。俺には記憶というスキルがあるから、恐らく誤記はない」
因みにその逸話は真実のものです。
シルフィは悪を裁くため絶対悪たれとしていますが
正義感は人一倍強い所が、ジークフリードとあんまり変わらない。




