第3話 ルータの町 2
翌日早朝
起床して装備をし、下に降りておじさんに声を掛ける。
「朝飯かい」
「はい、お願いします」
昨日と同じ、でかい目玉焼きとパンとミルク。美味いからいいけど、しかし毎日だと飽きるかも。いや、贅沢はいけない。ありがたく食べよう。
その朝は、ギルドには寄らずに南の門へ行く。そして、門番に証明書を見せ、一路草原へ向かう。
草原に着くと( 声 )に、
(薬草採取お願いします)
(左へ76歩進んでください)1.2・・・・76(右下です)さっそく毒消草だった。(左へ98歩進んでください)1.2・・・・98(3歩左へ進んでください)1.2.3(足元です)またも毒消草だった。(直進12歩です)1.2・・・・12(目の前下です)今度は紫色草だった。と草原をしゃがんでは歩き、しゃがんでは歩き、右往左往しながら順調に採取した。昼も回ったころ、ふと辺りを見ると森に近くなっている。そのとき、
(森の奥50mにスケルトン1体とスケルトンナイト1体がいます)
(気づいていません、倒せます)
え? スケルトン? 倒す? 無理でしょう、逃げるよ、初めて見る魔物だし。
( )
(倒せます)
(えー? 森に入るの?)
( )
(倒せます)
(どうしよう、逃げた方が)
( )
(た・お・せ・ま・す!)
(はい、行きます)
奥に歩いて行くと聞いた通り2体いたが、俺に気づいていない。
(スケルトンの、頭を砕いてください)
(よし、ここまで来たらやるしかないな)
一気に走って近づきスケルトンの頭に、フッ、と剣を振りおろすと、あっさり、スパッ、と切断して倒れた。そして灰になるスケルトン。
「え? 凄い切れ味だよこの剣、父さんの手入れが良かったのかな。それに簡単に倒せたし」
スケルトンナイトは俺に気付き剣を構える。
(右上から左下へ剣の攻撃が来ます)
右下へ避けると、剣は大きく空を切った。
(あ、これなら倒せる、剣筋遅いし見えるよ)
踏み込んでスケルトンナイトの頭に剣を、セイッ、と叩き込むと、スパッ、と切断して倒れ、灰になって魔石が出た。スケルトンの跡にも落ちている。
(お、これがドロップか、初めて見た。魔石も手で握れる大きさだ)
スケルトンからは青の魔石、スケルトンナイトからは紫の魔石を拾い袋に入れる。
(倒せます)
(そうだね、倒せる事を知っていたんだね、一歩踏み出せたよ、ありがとう)
( )
(でも、簡単に倒せるなんて、結構強いのかな俺。いやいや、父さんに勝てないし、上には上がいると言っていたし、自信過剰になってはいけないな。気を引き締めよう)
午後も大分過ぎていたので、町に戻りギルドへ向かった。
ギルドに入ると、夕方には早いので、中には数人の人がいるだけ。進むとカウンターにいたセシルさんが俺を見つけると、なんだか身構えたようだった。
「こんにちは、ミツヒさん。今日も薬草の買取りですか?」
「はい。それと魔石もお願いします」
隣の部屋に通され、身構えるセシルさんの前でテーブルに薬草を、ドサドサ、と出すと、セシルさんの目が1点を凝視して、止まったまま固まっている。
「セシルさん? セシルさん?」
「え? あ、し、失礼しました。またもや凄い数ですねミツヒさん。少しお待ちください」
数え始めるセシルさん。
赤色草10株 青色草10株 銀貨 2枚
紫色草16株 緑色草21株 銀貨74枚
毒消草19株 銀貨76枚 合計152枚
「凄いですね。いえ、通り越して呆れますよ、ミツヒさん」
あとこれも、と魔石を出す。
青の魔石 銀貨3枚 紫の魔石 銀貨5枚 合計 8枚
ヨロヨロ、と奥に入って行くセシルさん、そしてまた、ヨロヨロ、と出てくるセシルさん。
金貨16枚を受け取り袋に入れる。するとセシルさんが
「ミツヒさん、薬草はあまり採れないのでありがたいのですが、このペースで毎日薬草が手に入ると、値崩れが起こるかもしれません」
「あ、大丈夫です、明日にはルータの町を出ていきますから」
「そうですか、それは残念って、え? え? なんですかミツヒさん、出て行かれるのですか? ここで生活しないのですか?」
「はい、明日には南のスマルクの町に向かいます」
「そうですか、そうなのですか、わかりました。残念ですが仕方がない事ですね、ミツヒさんの事はちょっと気に入ってましたのに」
(え、セシルさんが、何気なく、さらっ、と何かを言っている。けど聞き流そう)
「この数日セシルさんにはお世話になり、いろいろとありがとうございました。戻って来たら、また寄らせてもらいます」
「是非こちらこそ、よろしくお願いしますね、ミツヒさん」
少し悲しい顔をしているセシルさんを後にして、ギルドを出て商店に向かい、干し肉銀貨3枚分を購入してサリアの宿に帰った。
明日からの用意も終えて、井戸で体を拭き考える。
(手持ちの金も、金貨16枚、銀貨70枚になって大分楽になったし、スマルクの町でも心細くないよ。しかし、薬草採取は良かったなぁ、声の娘には感謝するよ、ありがとう)
( )
宿に入り、おじさんに明日出る事を話し、食事を貰う。
今日はロックバードの生姜焼きとのこと。一口食べたら、美味いっ。香辛料と生姜が肉に染み込んでいて、バクバク食べてしまった。
満足して食べ終わった後、部屋に戻りベッドで横になる。スマルクの町までは歩いて3日、馬車で1日と、セシルさんに聞いていた。また走って行こう、と思う俺。スマルクには、働きながらしばらく滞在する予定でいる。そして眠くなり就寝。
(おやすみ)
( )
翌日早朝
支度をして下に降り、井戸で水筒に水を入れ、背負い袋に入れる。中に入ると
「飯は丁度出来てるよ」
テーブルには、ホカホカした卵焼きが出来上がっていた。美味しくいただいて、おじさんに挨拶する。
「お世話になりました、食事美味しかったです」
「ああ、またよろしく兄ちゃん、気を付けて行けよ」
サリアの宿を出て南へ歩く。ギルドには寄らずに南の門に向かう。歩きながら、
(あ、会っていなかったけど、ギルドマスターってどんな人だったのかな、薬草採取くらいじゃ会えるわけないし、いつの期会か、戻って来たらセシルさんに聞いてみよう)
南の門に着き、門番に証明書を見せルータの町を出る。一度振り向き、また向き直す。
そして走り出す。スマルクの町に向かって。
透き通るような青い空の下、いい天気の中をひたすら走るミツヒ。それも凄い、もの凄い速さで。人を避け馬車を避け、風のように、強風のように走って行くミツヒ。その一瞬の俺を見た人は、ポカーンとしていた。
(以前より速くなっている? うん、速いな。そして凄いことに気が付いた。後ろを振り向いたら砂埃が一つも出ていない。これはスキルなのかな、これはこれで嬉しいんだけど)
(スキルです)
(何のスキルなの?)
( )
(だめか、まいいや)
グングン、と軽快に走っていたら、昼にはスマルクの町が見えてきた。そして門に到着。
入口にはルータの町より多い人数の列が出来ていたので、しばらく待っていると、俺の順番が来て門番に証明書を見せる。
「ルータの町からか…………問題ないな通ってよし」
「ギルドはどこですか?」
「入って右に行け、そこを出たらまっすぐ200m程歩いて行けば右側にある」
「ありがとうございます」
入って行くと、塀があり、左右に分かれている。言われた通り右に歩いて行くと出口があった。大きめの街道がまっすぐ南に伸びていた。
「うーん、着いたー」 と、大きく伸びをする。
(早くつけて良かったな、宿もゆっくり探せそうだ。ルータの町より大きいし勉強になりそうな町だよ…………よし、まずはギルドへ行くか)
スマルクの町のギルドに向かう。
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