第2話 ルータの町 1 「生活費」
2年後
ミツヒ15歳 身長は150センチ あまり伸びない ちょっと悩んでいる。
強さは、父さん曰くランクDには上がっているらしいが、俺はそのランクの意味もわからない。
1か月前
家族団らんの時、サイルト父さんが、
「ミツヒ、もうすぐ15歳だろ、そろそろ旅に出て鍛えてこい。冒険するのもいいし、どこかの町で滞在して働くのもいい。村で身をうずめて生活するのは、まだまだ先で考えることだ」
「そうね、外の町や世の中を見て回ってきなさい。そしてもっと成長して、強く優しいミツヒになって。ここに戻りたいと思ったら帰って来なさい」
「剣も俺と互角に近くなってきたから、そこそこ大丈夫だ。はっはっはっ」
「全然互角に近くないし、結局父さんの体に触れることも出来ずに、一度も勝てなかったし」
「大丈夫よミツヒ、強くなっているわ。でも、まだまだ強くなれるから頑張ってきなさい」
「うん、それじゃ出発の準備をするよ」
ルータの町 タモンの村から南に歩いて6日かかる。
腰袋には干し肉と水が6日分、母さんからもらった回復用と解毒用ポーションが各1本。それと銀貨20枚を小袋に入れた。
水は途中で補給できる場所が、道脇に数か所あるのであまり心配はない。
装備は布の服の上に、昔もらった皮の胸当ての鎧、ブーツ、グローブとアイアンソード。アイアンソードは父さんに手入れをしてもらい、しっかり研ぎなおしてある。盾は邪魔になると思い、置いて行く事にした。
出立当日
父さん母さんの他に村長、ラン、3年前に先に旅に出たダース、ラッタ、ティーナの両親と妹や弟が見送りに来てくれた。
「早いものだな、強くなって帰ってきたら一緒にのタモン村を支えておくれよ」
「はい、村長」
「私は村から出る予定は無いからさ、たまには私を思い出してね」
「うん、ありがとうラン」
「私たちの息子(娘)にあったら連絡くらいしろって言ってね」
「わかりましたご両親の方々」
「ミツヒ兄ちゃん、俺たちも後から行くからな、まずタモダンに入るよ」
「ミツヒ兄ちゃん、私たちもパーティ作って行くからね、タモダンで修行するわ」
「そうだな、みんなの出発は5年後くらいか、先に行くけどどこかで会おうな、タモダンは気をつけろよ」
「強くなって帰ってこい」
「うん、ありがとう父さん」
「期待して待ってるわよ」
「強くなって帰ってくるよ、母さん」
みんな笑顔で送ってくれたが、ランの目には涙が光っていた。
母さんは笑顔だけれど、止めどもなく涙が流れていた。
(力は使わないほうがいいな、見る必要ないし)
「それじゃ皆さん、行ってきまーす」
「「「「「 いってらっしゃーーい 」」」」」
見られているのが恥ずかしく、猛ダッシュして走り去った。
あっという間に見えなくなる俺。
数時間後
「ハァハァハァ、結構走ったな、なんだか1日分進んだ?」
身体能力も向上しているみたいだ。
道端の木陰で水を飲み休憩して、ほどなくして歩き出し、これからのことを考える。
まず、またスキル? が覚醒? 進化? していた。走っているときにまた、ピーン、と頭の中で音が鳴っていたので、走りながら遠くにいるホワイトラビットに使って見た。
もう色ではない、文字でもない。
(兎。敵意ありません。こちらに反応ありません)
(君は誰?)
( )
(おーい)
( )
女性? 少女? の綺麗な声で頭の中に語りかけてくる。それも一言たまに二言。
話しかけても会話はできず一方通行。しかも以前は眼に力を入れたりしたけれど、勝手に話す事もある。なんだか変な気分。
とりあえず、ルータの町に向かってまた走り出した。
夕闇が降りてきたころ、俺は辺りを見回し、
「ここらで野宿だな。あの木にするか」
4mくらい上の太い木の枝へ、ひょいっ、と駆け上る。そして腰袋から干し肉を取り出し食べながら考える。
「いいペースだ、この調子で走れば明日の夕方にはルータに着くな。でも何でこんなに早く走れるんだろう。それに苦しいけど走り続けられるし。これも何かのスキルかな」
それはもう速いペースだった。ミツヒはルータまで約半分の距離に進んでいる。普通歩いて3日とはいえ、走ってもそこまでいかない。走る速さが普通の3倍、いやそれ以上で走っていた。
「考えても仕方がないか。明日も早いから寝よう」
(周囲反応ありません)
「ありがとう、おやすみ」
( )
小枝の葉を体にかぶせ、木の枝にもたれかかって、すぐに深い眠りについた。
翌朝、まだ薄暗い朝早くに起床、干し肉を食べ、水を飲み、軽い準備体操をしてさっそく走り出す。
しばらく走っていると、
(300m先、道右側森の中にオーガが3体) (気づいていません)
声だ。
(見えるの?)
( )
(おーい)
( )
(ま、いいか)
オーガの姿は見えなかったが、点滅はあったのでそこにいるのは確かだ。
(この速さなら大丈夫だろう、気づかれる前に走って逃げよう、戦うのも面倒だし)
さらに走っていくと、
(200m先、道左側森の中にゴブリンが5体) (気づいていません)
こんな調子で順調? に走り進んだ。すれ違う人に会わないのは、タモンとルータをつなぐ道なので商人が10日で1回通るくらいの、あまり使われていない道だから。
そして日も暮れる頃、ルータの入口が見えてきた。
「ハァハァハァ、やっと着いた。ルータの町だ」
こちらの入口は、タモン村のルートなので小さい門と門番しかいない。
「止まれ、タモンの村から来たのか? ギルドカードか証明書はあるか」
「ギルドカードはありませんが、これがあります、村長に書いてもらいました」
「ちょっと待て、村の証明書か…………本物だな、よしいいぞ、通ってよし。それとギルドには登録するのか? 証明にもなるぞ」
「いえギルドには登録しません、働きます」
「ギルドに登録しなくても、証明書が必要だからどっちにしてもギルドには行くように。村の証明書はここだけしか通用しないから、タモン村の者は、この町で作ってから他の町に行けるからな。ちなみにギルドは、ここを通ってまっすぐ行った先の左側にある建物がそうだ」
「はい、わかりました、ありがとうございます」
町に入って、歩きながら辺りを見回した。
「タモンの村とは全然ちがうな、それに活気があるし。タモンの村もこれくらい大きくなればいいなぁ…………よし、ギルドに行くか」
ルータの町
西部劇に出てくるような街並み。町の中央の南北に大きな道がまっすぐに伸びている。それを左右に綺麗に道が何本も分かれている、1000人ほどが生活している綺麗に整った町。
「左側、左側、あ、あれかな」
左を眺めながら歩くとギルドの看板を見つけ入口を入った。
入るとそこは広いスペースがあり、夕方だからなのか、人がごった返していた。剣士、魔術師、召喚士、ごついメイスを持った男や筋肉質の女性剣士、パーティと見られるグループも何組か話をしている。その奥にカウンターがあり、受付がある。
さっそく最後尾に並び順番を待つ。しばらくして俺の順番が来た。
受付の女性 黒いメイド服のようで首にはスカーフ。
「いらっしゃいませ、ご用件は何でしょうか」
「はい、初めてこの町に入ったので登録をお願いします。」
「ギルドの登録ですか」
「いえ、働きに来たので証明の登録をお願いします」
「はい、わかりました。登録証明書は銀貨3枚になります。無くされたら再発行は銀貨5枚になりますので、無くさないようにお願いします。では、この町に入って来たときの証明書をお出しください」
「これが村の証明書です」
「お預かりします、ミツヒさんですね。畏まりました、しばらくお待ちください」
(セシルさんという名前らしい。とても礼儀正しい人だな、清楚で茶髪のセミロングの碧眼。スタイルもいいし、綺麗だ。でもちょっと、怖くて冷たそうだけどね)
「あの、なにか変なこと考えてません?」
「い、いえ、な、何も考えていません」
(うぉ、この人も読めるのか?)
(大丈夫です、まったく読めていません)
いつもの声なのに、なんだか棘のある口調だ。
「おまたせしました、ミツヒさんこれが証明書になります、これは世界共通の証明書です。再発行も費用は掛かりますが、各ギルドで出来ます。他には何かございますか?」
「あの、宿に泊まりたいのですが、何処にあるか教えていただけませんか」
「それでしたらこの先にある、サリアの店があります。食事、宿泊が出来ます」
「ありがとうございます、行ってみます」
「それでは、お気をつけて」
ギルドを出て宿屋に向かう。すると、サリアの店と書いてある看板があった。1階がお店で2階が泊まれるのかな。さっそく入ってみよう。
中に入るとテーブルが5つ並んでいてその奥のカウンターに、髭もじゃの人の良さそうなおじさんがいた。
「いらっしゃい、食事かい?」
「いえ、宿泊をお願いします」
「1泊、銀貨1枚、食事は1食、銅貨50枚だよ」
「3泊と朝晩の食事6回分お願いします」
「それじゃ前金で銀貨5枚だ、食事は宿泊者金額だ。部屋は2階の奥右側だよ。食事はどうする?」
「あ、ありがとうございます、今食べます。よろしくお願いします」
と言って、銀貨5枚を支払う。
「そうかい、ちょっと待ってな」
テーブルに座り、待ってたら美味そうなステーキが出てきた。ロックバードという大型の魔物らしいがとてもいい匂いだ。ステーキの下には炒めた玉ねぎスライスが敷いてあり、さっそく一口食べたら肉が柔らかくジューシーで美味い。バクバク食べて堪能した。
部屋に行くと、簡素な部屋で6畳ほどの広さでベッドが1つあるが、十分で居心地もいい。
風呂がないので、疲れていたこともあり仕方なく、そのままベッドに入り深い眠りについた。
翌朝、起床して下に降りて、おじさんに声を掛けると、
「飯かい?」
「はい、お願いします」
待つこと少々。目玉焼きとミルクと焼いたパンが出てきた。しかし目玉焼きがでかい。ロックバードの卵らしいが、黄身の直径が10センチはある。塩をふって食べたら、これがまた濃厚な味で美味かった。食べながらおじさんに、水が欲しい、と聞いたら、裏に井戸があるから勝手に汲んで使っていいとのこと。
食後に裏の井戸に行き、体を拭いた。それだけでも気持ち良かった。
(路銀が少なくなってきたから心細いぞ、どうするか。)
(薬草採取が最適です)
あ、声だ。
(うん、そうしてみる、ありがとう)
( )
(一応、腰袋に別の袋を入れてあるから大丈夫だな)
その足でギルドに行くと、少し混んでいたが。奥の左のカウンターにはセシルさんがいた。
「おはようございます。あら、昨日登録された方ですね。今日はどのようなご用件ですか?」
「あの、ギルドに登録していなくても、買取りなどはしてもらえるのでしょうか」
「大丈夫ですよ。薬草やドロップ品、魔石などはギルドで買取りしています。特に制限もありません。ただし、商店や売買などの商売は、ギルド登録していないと重罪で罰せられます。また、ギルドに貼ってある依頼を受ける事も同じです。ご注意ください」
説明を受けてから、薬草の種類や魔物の種類が知りたい、と聞いたら、銀貨1枚かかるが、奥にある書館で調べることが出来るそうで、さっそく銀貨1枚支払って薬草を調べた。
回復草、「下位回復は赤色草、上位回復は紫色草」
治癒草、「下位治癒は青色草、上位治癒は緑色草」
毒消草、「毒消草」
麻痺消草、「毒消草の根」
回復と治癒の中位が無いのは、上位を作って残った薬草で出来る、と書いてある。上位の薬草と毒消草はなかなか難易度が高い。それは、生い茂った雑草の中に小さく生えているから。1日中掻き分けて探しても1株。よくても3株が限度と書いてある。下位の薬草はそこそこ採れるが、10株単位の買い取りなのでそれも大変だろう。
魔物の魔石を調べると、ある程度の強い魔物からドロップするようだ。タモダンのゴブリンやオーク、オーガでは、魔石が出たことは無かった。オークキングやオーガキングは魔石が出る、と書いてある。
カウンターに戻りセシルさんに聞いてみると。
ルータの東側は草原が森と隣接してあり、そこで採取出来て、買取り金額は、
赤色草と青色草は10株 銀貨1枚
紫色草と緑色草は 1株 銀貨2枚
毒消草は 1株 銀貨4枚
(大丈夫だろうか)
(薬草採取が最適です)
(うん、やってみるよ)
( )
まだ昼には早い時間だけど、行ってみる事にした。南の門番に証明書を見せて出る。
東に歩くこと30分ほど草原に出たが、膝まである雑草がびっしりと生えている。どうやって探そうかと思ったら、
(右に30歩進んでください)
え右? わかった。1.2.・・・30
(左下にあります)
左下の雑草を掻き分けると、紫色草が生えていた、1株のすぐ横にもう1株。
(おぉ、凄いぞ、さっそく銀貨4枚だ)
優しく採取して袋に入れるとすぐに(直進72歩です)1.2.・・・72(1m先の下です)
今度も紫色草があり、採取。そしてまたすぐ(左106歩進んでください)1.2・・・106(2歩下がってください)1.2(足元です)今度は毒消草が1株あり、根も一緒に採取する。そんな具合で声に従って採取したら、昼過ぎには袋がいっぱいになった。
って、簡単すぎだろ。本には難しいって書いてあったのに、こんなんで大丈夫か? これ、ちょっと怖いぞ。
(薬草採取が最適です)
綺麗な声だけど、なんだか、エッヘン、みたいな口調だね。
(でも、そうだね、君の声が無ければ採取できなかったからさ、ありがとう)
( )
干し肉をかじりながら帰り、町の南門からギルドに戻って、薬草の買い取りをお願いした。
買取り場所はカウンターの横にある扉の向こうにあり、セシルさんが同行してくる。
採取した薬草をテーブルに出すように言われて、出すと、セシルさんの目の色が変わるように見開いてきた。
赤色草10株 青色草10株 銀貨 2枚
紫色草 8株 緑色草11株 銀貨38枚
毒消草 6株 銀貨24枚 合計64枚
椅子からセシルさんがズッコケた、派手にズッコケた。あ、足が。いや何でも無い、そう、ひっくり返っただけ、うん、黒いスカートの中に白いものが見えたことは黙っておこう。
(殺意が湧きそうです)
(え、何? どうした大丈夫か)
( )
なんだろう、いや、気にしないでおこう。
「ミツヒさん、どうやったらこんなに探せるのですか? 午前中に出て行ったのに、まだ夕方でもないのにそれでこんなに沢山の薬草、それも希少種をこれだけ」
「偶然ですよ、セシルさん、運が良かっただけです」
「いえ、偶然で採取は出来ません。何か秘訣があるのですね。こちらとしてはありがたいことですし。いえ、しかたがないですね、秘訣は聞きませんが、凄いですミツヒさん」
セシルさんは一度奥に行って、少しして戻って来た。そこで銀貨64枚を受け取り袋に入れ、ギルドを出る。手持ちの銀貨11枚と合わせて75枚になった。これで何日かは安心だ。まず向かったのは商店。腰袋じゃ心細いので背負い袋を購入する為。
「いらっしゃい、兄ちゃん、何か物入りかい?」
「背負い袋が欲しいんだけど」
「それじゃこれなんかどうだ? 両脇にポーション入れと水筒入れが付いているよ」
「うん、中身も手ごろだな。これにする」
「銀貨2枚だよ、そのかわり皮の水筒をサービスするから」
(うん? 何だかうまく丸め込まれたような、でも持っている水入れは木の筒だから、皮の方が収納しやすいな。ポーションも並べて収納出来るし)
銀貨2枚を支払い購入し、サリアの宿へ帰った。
まだ夕方にもなっていないので、裏の井戸で体を拭いて部屋に入る。これからの事を考えないと。あと2泊でルータを出る予定で、行先はさらに南のスマルクの町。そこで仕事を見つけてしばらく過ごす。ここでの滞在は明日だけから、もう1日薬草採取して資金を増やす。
夜になり、下に降りると、いい匂いがしてきた。夕食をお願いしてテーブルに着く。待つこと少し。またステーキだが、香ばしい香りが食欲をそそる。ブラックボアのステーキだ。初めて食べたがレッドボアよりも肉汁が多いかな、負けず劣らず美味い。ガツガツ食べてしまった。
部屋に戻りベッドに入り就寝、しっかり寝る。
「おやすみ」
( )




