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第1話  ぷろろーぐ タモンの村

使い方がよくわからないので、何回か編集しながら覚えます。

 10歳になったとき、その変化が起きた。


 頭の中で、ピーン、と音が鳴ったような気がしたときから。

 それは、人でも動物でも、感情なのか色で識別できるようになっていた。

 魔物はまだ見たことはないのでわからないが……見えるのかもしれない。


白(無感情)、赤(怒)、青(悲)、黄(喜)、緑(楽)、桃(好)、灰(疲)、黒(殺)


 感情が重なれば、その別々の感情の色が、その人の上で交互に点滅した。

 確実な感情識別では無いが、そんな感じだろうくらいのものだった。

 普段は見えないが、眼に少し力を込めるようにすると見える。

 何の力なのかどうなのか分からないが見える。

 そのことは誰にも言ってない。それは、変に思われるのも嫌だし、見たところでどうってことないからほとんど使わなかった。


始まり


 その日は青い空が澄み渡りすがすがしい風が吹く。近くには沢があり流れる水の音が聞こえる。そこは辺境の村タモン。北の外れにある100人ほどの集落だ。主に農業と狩猟で生計を立てている小さい村だが、魔物も出るので村の周囲には塀があり門番もいる。

 その一角で畑を耕すタモン村の少年ミツヒ。

 黒髪、黒い瞳、身長130センチ、筋肉がつき始めた顔立ちの整った少年。


「フッ、フッ、フッ、フッ、フッ」


 人参畑を鍬で一心不乱に耕しているミツヒ。子供ながらも一所懸命に。

 人参エリアを終えると、


「ふぅ~、いい感じだな、思ったより早いペースで耕せた、明日はジャガイモにいけるな」


 家が農家なので手伝っているが、これも鍛錬として早いペースで鍬をふるうことを楽しんでいる。最近は任されっぱなしだけどね。

 一休みしていると、


「ミツヒー、水持ってきたよー」


 元気な声が聞こえ、幼馴染のランが来た。

 茶髪で肩まである髪を後ろで束ね、ポニーテールの似合うかわいい少女。身長は俺と同じで130センチくらいでスレンダー。


(ランか、久しぶりに力を使ってみるか、んっ。あ、頭の上で黄と桃が点滅している。なんだか楽しそうだ)


 ランから水を受け取り飲む。


「んぐんぐ、ふぃー美味い。悪いねラン、いつもありがとう」

「いいのよ、ついでだし、いつも野菜くれるからさ、じゃ、またねー」


 ランは村長の娘でしっかり者だ、それに気が利く。

 彼女の走っていく後姿を見送り、おもむろに鍬を取ると、再び農作業を進める。


「よーし、また鍛錬しながら、速いペースで終わらそう」


 黙々と作業を始めた。

 夕方も鍛錬だ。畑の脇にある大きな木の下には、剣の握り手のある棒が置いてある。それもロングソードの重さの倍にした棒を素振りする。これがまた重くてきついが筋肉がパンパンになるまで素振りをする。これを毎朝夕に行っている。なぜ鍛えているか、俺は将来の夢があり、そのために強くなりたい、ならなければ、と鍛えている。


「ゼェー、ゼェー、ゼェー、終わったー」


 1日の終わりだ。今日もいい修行になったなぁと思いながら家路に向かい歩いていると道の外れに村長のズーロさんがいた。

 何か考え込んでいるようなので力を使って見る。


(ん? 白?……何も考えていなかった、なんだ、ぼーっとしているだけか)


 ズーロさんは村長だが、身長170センチ程で、40歳くらいの中肉中背で普通のいいおじさんって感じだ。でも見かけによらず、昔は冒険者としてクラスAの魔法剣士だったらしい。

 ズーロさんとは距離があったので、声をかけずに家路に向おう。うん、そうしよう。

 ほどなくして家に着くと、中には2人の姿があって、俺に気が付き、


「おぅ、おかえり」「おかえりなさい」 「ただいまー」


 サイルト父さんとティマル母さんだ。父さんは黒髪短髪で身長は180センチ、ガッチリした体格で、母さんは茶髪を後ろで三つ編みにしている。170センチと周囲の女性よりやや大きいが、スタイルは良いのではないだろうか。


「畑の進み具合はどうだ?」

「うん、順調だよ、明日はジャガイモ畑だね」

「そうか、それは良かった。今日はレッドボアが獲れたからミツヒの好きな肉料理だよ」

「久しぶりだねレッドボア、肉が柔らかくて美味しいんだよなー、楽しみー」

「はいはい、そのまえにお風呂に行ってきなさいミツヒ」

「うん、わかった、行ってきまーす」


 タモン村の外側には地熱の高い岩盤地帯があり、沢の水をそこに通して、村の中に引きこんでいる共同の風呂があり、楽に10人は入れ、屋根は無いが男女別々に区分けしている。

体を洗い風呂につかると、熱くもなく適温の風呂。


「ふぅー、いい湯だなー。いつものように筋肉をほぐしてっと」


 そしてまた、いつものように空を見上げながら寛いでいると。


「お、ミツヒ」「やあ、ミツヒ」


 2人の少年が入ってきた。ダースとラッタ、3歳年上で主に狩猟で生活している。ダースは剣士、スキルは金剛、魔法は簡単な回復魔法が使え、ラッタも剣士だが、攻撃魔法もある。短髪赤髪、身長170センチの、ちょっとごつくなり始めている、ほりの深い顔のダース。

 肩までの金髪、身長同じく、細マッチョなのっぺり顔のラッタ。


「やあ、ダース、ラッタ、調子はどう?」

「今日もホワイトラビットだけだった。疲れたー、最近調子悪いんだー、どうしたもんだかなー」

「俺もホーンラビット2匹。まだまだだよ、ふぅ。やっぱり、ボアかベアーを獲りたいよ」


 ダースもラッタも、肩が落ちてしな垂れているので、力を使って彼らの上を見ると、


(灰と青が点滅している、結構疲れている上に悲しいようだ、2人共落ち込んでるんだな)


「いい日もあれば悪い日もあるさ、仕方がないよ。野菜も同じで、収穫の差がでるからね」

「そうだな」「そうだね」


 と、話をして湯船につかり温まっているとダースが、


「ミツヒ。来年には俺とラッタ、ティーナのパーティで、冒険者になって旅に出る予定なんだ」

「ティーナも?」


 ティーナもダースと同じ3歳年上の、身長は160センチくらい、赤髪が腰まであるスレンダーで、整った顔立ちの少女で魔法を使う、特に回復魔法を得意としているらしい。


「うん、ティーナも。最近3人でタモダンに入っているんだ」

「あー、タモダンに入っているんだー、いいなぁ」


 タモダンとは、タモンの村の裏手にある3階層の浅いダンジョンのことで略してタモダン。

 魔物も数体のゴブリン、単体のオーク、時折オーガがいるのみで他の魔物は出たことがない、たとえ出現しても大した魔物は出ない、修行にはとてもいいダンジョン。それに、中は真っ暗ではない。夜光石という青白く光る石が至る所に埋もれている。砕くと効果は無くなるが、ダンジョンの中ではずっと輝いているから目が慣れると良く見える。入口の周囲には食用になるレッドボアやレッドベアー、レッドラージも出現する。強くなりたいタモンの村人は、みんなそのダンジョンで鍛えている。



「ふーん、ダースたちはやっぱりランクSを目指すの?」

「もちろんそうだよ、有名になるんだ。そのための基礎、タモダン修行もあと1年だ」

「有名になったら村に帰ってくるの?」

「まだそこまで決めていないよ、強くなるため有名になる為、どこに行くか何をするかはギルドに行ってから決めるからさ」

「そうかーそうだよね、いろいろ大変だね」


 他にも雑談をして程よく温まったころ。俺は


「んじゃ先に上がるよ、がんばってね、ダース、ラッタ」

「ん、またなー」「おやすみー、ミツヒ」


 2人とわかれ、帰り道でふと考える。自分には魔法が使えないことを。でも、気にしていない。父さん母さんも、そんなに急ぐなって言ってるし。


そして家に着き夕食。決して裕福ではないが3人家族の団らんのひととき。

その楽しい毎日を過ごして……。 



1年後

 ダースたち3人は元気に冒険に出て行った。力を使って見ると、村を離れていく3人の上には、緑や黄が点滅していた。

 期待に胸を躍らせているようだった。


(がんばれー! ダース、ラッタ、ティーナ。俺も後から行くよ、どこかで会おうね)


 畑仕事と鍛錬に精を出し、さらに2年後。


ミツヒ 13歳 

 身長は140センチと少し伸びたけど、ほかの人より小さい。が、後半の伸びに期待したい。筋肉は、鍛錬の成果もあり以前よりはついている。あれから毎朝夕の素振りはもちろん、今、畑で作っている作物は大根、そう、大根畑を耕している。


「よしよし、いい土が育っているな、この分なら大きい大根が育って収穫出来るだろう」

「ミツヒ、お水持ってきたよー」「ありがとう、ラン」


 幼馴染のランも相変わらず水を持ってきてくれる。


「ねぇミツヒー。暇な時でいいから今度遊ぼうよー、最近全然遊びに来ないし、父さんも顔くらい出せって言っていたよ」

「ごめん、ラン。時間があったら鍛錬したいから無理だよ」

「んー残念、そうかー相変わらず忙しそうね、わかった、がんばってね」

「ありがとう、ラン、ズーロさんによろしく言っておいてね」

「はーい」


 手を振りながら走って帰っていく、元気があるラン。

 俺は相変わらず畑仕事と毎朝夕の素振りは続いているが、最近忙しくなったのは、鍛錬の場所が増えたから。それはタモダン。今は裏のダンジョンに入って鍛えている。

 13歳になった日に、サイルト父さんから、


「そろそろダンジョンで鍛えるんだろうから、これを持ってけ」


 と、中型のアイアンソードと腕に巻きつける小型のアイアン盾をプレゼントされた。

 そして、ティマル母さんから、


「そうね、装備も少しはしっかりしないとね」


 皮の胸当てのような鎧と皮のブーツ、皮のグローブをプレゼントしてもらった。


「うん、いい感じ、しっくりくるよ、剣も振りやすい。父さん、母さん、ありがとう」

「似合ってるわよ、ミツヒ」

「「 がんばってな(ね) 」」


 それからは時間ができるとすぐにタモダンに入って鍛えた。順調に強くなっているのか、今では4体くらいのゴブリンや2体のオーク、単体のオーガなら、難なく倒せるようになっている。

 それは例のスキル? 見える色が進化? 覚醒? していたから。タモダンに入るころ、ピーン、と頭の中で音が鳴った。以前に感じたものと同じなので、力を使って見ると、色から文字に変化している。

簡単な単語のみだが色より簡単ですごい。

 魔物と対峙したとき、眼に少し力をいれると、攻撃される直前に{攻撃 左直}や{攻撃 右爪}{攻撃 下牙}などが魔物の上に文字が浮かんだ。

 相手の攻撃方向がわかっているから簡単に回避して、重量の剣で鍛えたからなのか、アイアンソードも木の枝を持っているように、軽くてサクサク攻撃できる。身体能力も格段に向上したのか、回避行動も早く、走る速度もなぜだか普通の3倍は速くなっている。

 3階層に籠りきりの時もあったが、厳しいなりにも強くなれると思うと楽しかった。

 タモダンの帰りにはホーンラビットやレッドラージ、レッドボアも獲った。魔物の攻撃だけでなく回避や逃げる方向も、直前に文字となって浮かぶから楽に獲った。ラビットやラージは楽に持って帰れるが、ボアはちょっと大変で、内臓をとって血抜きをしてから持ち帰る。

 近くといえど、それでもボアの重さは80キロはあるので両肩に担いで持って帰った。これも鍛錬のためだと思えば「ゼェゼェ」と苦しいがそれでも楽しかった。


「お、またレッドボアか、最近調子がいいなミツヒ。また分けてくれよ」

「こんにちはケビンさん、母さんに分けてもらったら配りますよ」

「いつもありがとうなー」


 今じゃ当たり前になったが、初めての時、門番のケビンさんはボアを担いだ格好で歩いてきた俺を見てたまげてたのを覚えている。

 ケビンさんは50歳くらいのしっかりした体つきで、冒険者の剣士だったけど引退してタモンに帰ってきて門番をしている。ミスリルのロングソードを装備し、引退前はBランクだったらしい。


 家に着くとサイルト父さんは屋根を修理していた。

 ティマル母さんは炊事の最中。


「父さん母さん、ただいまー」


ドサッとボアを下す。


「おう、おかえりミツヒ、最近は腕が上がったのか、よくレッドボアを獲ってくるな。もう俺の出る事がなくなりそうだ。はっはっはっ」


 サイルト父さんは屋根の修理の手を休めて笑った。


「おかえりミツヒ、あらあら、また皆さんに配らないと」


 ティマル母さんはさっそくボアを手際よく解体し始めた。どこにそんな力があるのかわからないけど、サクサク解体している。

 俺は汗を流そうと風呂支度をしていると、サイルト父さんが屋根から降りてきて、


「ミツヒ、父さんと手合せしてみるか」

「え、大丈夫? 父さん」

「ミツヒには言ってなかったが、昔は一応剣技は高かったんだぞ」

「へぇー、初めて聞いた、そうなの? 母さん」

「そうね、強かったわよ。ウフフ」


 ボアの解体を終えて、笑顔で話す自信満々な顔のティマル母さん。


「納屋に木剣があるから取ってきな、どれだけ強くなったか見てやる」


 木剣を取ってきて父さんに渡すと、ブンブン、と素振りをするサイルト父さん。


(大丈夫かなぁ、攻撃が読めるから多分俺が勝つだろう。父さんに怪我させたくないし、どうしよう、でも読まないと勝てないし、やるしかないか)


俺は、父さんと対峙して剣を構えた。


「よし、いつでもいいぞ、かかってこい」

「大丈夫よミツヒ、父さん強いから安心して」

(安心? 本当に大丈夫かな、しかたがない)

「わかった、それじゃ行くよ」


 俺から先に、スッ、と剣を出そうとしたら、{右 回避}と出たので、すかさず下から右攻撃で薙ぎ払う。{後 後退}と出たが踏み込まず、追わなかった。


(うわ、避けたよ。凄いな、父さん)


「よくかわす方向が読めたな。なるほど、剣技の才能はあるようだ。それじゃ、ちょっと本気を出すか、行くぞ」


 {左 直}すかさず右にかわすが、すぐにかわした方向に{右 直}(うわ! 早い!)と思うと同時に{左 水平}(げえ! 速すぎ!)水平切りの剣を、なんとか剣で受けてかわしたが、一瞬で{前 直}と出たと同時に、父さんの剣が、俺の頭に触れる直前で止まり、ヘタッ、と尻餅をついた。


「ハァハァ、何それ、強すぎるよ父さん。ハァハァ、勝てると思ったのに全然無理」

「それは残念だったなミツヒ。有頂天にならず、上には上がいることを知ったほうがいいぞ。それと、動作はいいが、もっと素早く動く、と同時に打って出ないとな。素質はあるよミツヒ。シャープな動きを考えろ、無駄のない動きをな。がんばれよ」

(読めてるのに避けられないって、なんて速さなんだ。父さんスゲー、俺はまだまだ鍛錬しないと)

「ウフフ、だから強いって言ったでしょ、ミツヒ」


 初めから安心して笑顔で見ていた母さん。


「本当、なんでそんなに父さんは強いの? 昔冒険者だったの?」

「まあ、その、なんだ、いろいろとな」

「あらあら、ウフフ」

「うーん、なんだろう。ま、いいや明日からまた頑張るよ」


 それからは、タモダンでの鍛錬、毎朝夕の素振り、畑の耕しと収穫と毎日を多忙に過ごした。


そして2年後

ミツヒ 15歳


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