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忘れない日々  作者: 秋野真珠
最後の夏休み
14/14

13

いつもラジオ体操をする中庭に、準備をした。

リツがいつから用意していたのかは解らないけど、道具だけはあって、ノリオたちは全員でそれを設置した。

「よーしこんなもんかなー」

最後の一個を置いて、みんなで確かめる。

直径が10センチくらいの、食べ物の空缶だ。

中庭はいくつか外灯があるだけで、ところどころ暗い。

その中での作業だったけど、明るかったら意味がないから仕方ない。

「よーし、詩央姉呼ぶぞー」

「いいよー」

そして全員で、3階上のベランダに向かって名前を呼んだ。

騒いでるノリオたちの部屋は、まだ電気がついている。

窓を開け放しているのは解っているので、声は届くはずだ。

「しーおーねーえー!」

3回名前を呼ぶと、一体何事だ、と気付いた詩央がベランダから顔を出した。

その後ろから、親たちの顔も見える。

「おし、端から着火だ!」

リツの掛け声で、ノリオたちは小さなチャッカマンで空缶に火を付ける。

缶の中身は、油を浸した布だ。

簡単に火がついて、ノリオたちの足元は一気に明るくなった。

いくつもいくつもつけて行って、それでも地上からは何をしているのか解らないままだろう。

3階のベランダから見ていた詩央の顔で、成功したことが解る。

中庭に、しおねえおめでとう、の文字が明るく光っていた。

暗い夜の中に光る、お祝いの言葉。

それは詩央を何より嬉しそうにさせるものだった。

地上から、詩央が喜んだのが見える。

ノリオたちは、それだけで満足だった。

これ以上の満足感は他にないだろう、と思うくらいだった。

「・・・ありがとう」

ベランダから、風に乗った詩央の声が聞こえた。

どこか泣きそうなものに聞こえるのは、空耳じゃないかもしれない。

ノリオたちはそれを合図に、もうひとつ用意していたものに火を付けた。

「発射準備ー!」

「おっけー!」

「はっしゃあー!」

掛け声とともに、バチバチと導火線に火が灯る。

そして、高い音とともにいくつもの小さな灯が空に昇って、弾けた。


ぱぁーん


一斉に鳴った花火は、星空をさらに明るく照らした。

外の騒ぎに気付いて、他の住人たちもベランダから外を見ていた。

花火を見て、子供たちがみんな喜んでいた。

「成功~!」

と手をたたき合ってるノリオたちに、大きな声がかぶさる。

「――あんたたちっここで打ち上げ花火は禁止されてるでしょー?!」

詩央のいつもの声だった。

「やべっ」

「逃げろ!」

ノリオたちは一斉に駆け出して、大人の見えないところまで走った。

どこにも暗い所なんてない、輝くような笑顔で走り抜けた。


それが、最後の夏休みの始まりだった。



夏休みが始まりました。

終わったけど(笑

時間があれば、次は冬休みとか書きたいです。

時間が・・・

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