反撃
夜、閉館した水族館のペンギンの展示スペースでケープペンギンが言った。
「やれやれ、やっと長い1日が終わった」
「ああ、疲れたな。それにしてもあの飼育員、未に新鮮な魚の見分け方を覚えない。お陰で腹の調子が悪い」フンボルトペンギンが腹をさすりながら言う。
「まったく人間って奴は使えない」
ひときわ大きい皇帝ペンギンが言った。
「本当に」
「ケープペンギンさんは私の名前の由来をご存知ですか」
「皇帝ペンギンさんの名前の由来ですか? さあ? なんでしょうか?」
「新種の大きいペンギンを見つけた人間はこれ以上、大きいペンギンはいないだろうと考え安易に王様ペンギンと名付けました。しかしその後、更に大きい新種のペンギンを発見しやむなく皇帝ペンギンと名付けたのです」
「なんて人間は浅はかなんでしょう」
「全くです。そして浅はかなだけでなく、人間は腹立たしい」
「本当に、今日もいましたよ。いけすかない子供連れが」
「ええ、いましたね。親が子供に言っていました。『ペンギンさん、ヨチヨチ歩きで可愛いね』って」
「確かに我々は氷上を歩くのは得意ではないが、ひとたび水に入れば魚の様に巧みに泳げるのに。なんですか、あの見下した感じ」
「私もはらわたが煮えくりかえりましたよ」
「……反撃してやりましょうよ、目にモノ見せてやるのです」
「……そうですね、そうしましょう」
「うわ〜なんか血がたぎってきました。どうやって反撃しますか?」
「水をかけてやるとか」
「それでは生ぬるいですよ、もっと困らせてやるのです」
ペンギン達は輪になって知恵をしぼるのであった。
そして一週間後。
水族館のペンギンの展示スペースに子供連れがやって来た。
母親が言った。
「見て、愛ちゃん。ペンギンさんヨチヨチ歩きでかわい‥」
ふいに言葉は途切れ、子供連れは逃げる様に足早に去って行く。
それを遠目に見ていた水族館の館長は横にいる飼育員に尋ねた。
「今、そういう時期だっけ?」
飼育員は首をひねりながら答えた。
「いいえ、違います。なぜ、繁殖期でもないのに交尾してるんでしょう」




