第五十七譚 これから
トゥルニカ城を出た俺達は、城下町西区にて宿をとっていた。
旅の疲れを取る為にも、一日ぐらいはゆっくり休めというテッちゃんの気遣いにより、あまり有名ではない穴場の宿屋を紹介してもらった。
確かに、有名な宿なんかで休んでいたら噂を聞いた人達が集まってくる可能性がある。
……一応これでも有名人だからな。
部屋は男女別々に分かれた。
部屋を取った当初は、くじ引きで部屋割りを決めて俺とセレーネ、ジオとアザレアになったんだが二人が猛烈に反対してきたため、男女で部屋を分けることになった。
なんであんなに反対したのかよくわからないけど、正直分けた方が気が楽だから問題はない。
外はまだ明るく、夜までは少し時間がある。
日が落ちたら俺達男の部屋に集合と決まり、今は自由時間。つまりフリーダム。
先程、アザレアがセレーネを連れて観光に行き、ジオも一人でどこかに行ってしまったため、俺は一人寂しく椅子に座ってペンを転がしている。
木紙とにらめっこして早数十分。集中力が全く続かない、というよりも案が出ない。
何故こんなことをしているかというと、これからの予定を全く決めていないからだ。
聖王がどこにいるかわかれば、少しは行き先も絞れるんだが、道中町村に寄って話を聞いても有益な情報は得られなかった。
「どうするかな~……」
居場所がわからないからと言ってこのまま待機するのはまずい。
いつ聖王が襲撃を起こすかわからない今、何もしないというのは選択肢から省かれる。
とは言ったものの、本当に行き先が決まらない。
やっぱり情報収集が大事なんだろうけど、もうこの付近では聞き尽くしたからな。
ここはいっそ他大陸に渡るか?
炭鉱族の事も気になるし、もしかしたら何か手掛かりが見つかるかもしれない。
おお、考えがまとまってきたぞ。
アイツらが戻ってくる前にまとめ終えておこう。
□■□■□
日も落ち、酒場などから賑わいの声が聞こえてくる時間帯に、俺達四人は一つの部屋に集まっていた。
「……第一回、ドキドキ! ワクワク! 作戦会議を始めます」
「そういうのいいから早く始めて」
「作戦会議始めまぁす……」
早速心を折られかけた俺は机に突っ伏す。
いいじゃん……少しぐらい遊び心加えたって……。
「それで? まずは何の話だい?」
「ああ、これからの事についてだな」
俺は机の上に一枚の木紙を置いた。
その木紙には、昼の内にまとめておいた今後の予定が書いてある。
因みに、木紙というのは木を削って作られた紙の事だ。
「これは……」
セレーネが前屈みの姿勢で木紙を覗き込む。
それに釣られるようにアザレア達も木紙を覗き込んだ。
「炭鉱族の国へ……ですか?」
一通り読み終えたのか、セレーネが元の位置に座って俺に問いかける。
「でも、そこは滅んだんでしょ?」
「うん。まだ確証はないんだけど、ほぼ確実だろうね……」
「でも絶対とは言えない、そうだろ?」
そう、絶対じゃないんだ。
テッちゃんを始めとする他の人達の話を聞く限り、まだ滅んだとは確認されていない。
「そういえば、調査員を派遣したって言ってなかったか?」
「うん、でも未だに連絡は来ないんだ」
まだ連絡が来ないのは少し遅すぎる気がするが……。
いや、でもそれなら尚更、俺達が向かう場所は炭鉱族の国だ。
現状確認と情報収集。上手くいけば一石二鳥だぞ。
「まあ、とりあえず俺の意見としてはこんなもんだ。何か質問ある奴はいるか?」
俺の言葉に、アザレアが反応する。
「移動手段は船よね?」
「そりゃあ勿論。逆にそれ以外に移動手段あるか?」
「いいえ、ないわ。それじゃあ寄るのよね? ビストラテアに」
「いや? ビストラテアには寄らないけど、何で?」
俺が疑問を投げかけると、アザレア達が目を見開く。
すると、アザレアが呆れ顔でため息を吐いた。
何かおかしなことを言っただろうか。
別にビストラテアに寄る予定なんかないんだけど。
それに、ビストラテアはこの大陸の東南、炭鉱族の国がある大陸の南に位置する大陸にあるから、行くわけないんだが……。
「アンタねぇ……。もう昔とは違うのよ……」
「違うってどういうことだ?」
俺は首を傾げながらアザレアに問いかける。
本当に何が違うのかわからない。
だってあれだろ? 船を借りて炭鉱族の国に行くんだからビストラテアなんて行かないだろ?
「アンタどうやって船を手配しようと思ったの?」
「テッちゃんに頼む」
そう言うと、アザレア達はまたため息を吐いた。
「アル様、船は現在漁船と客船の二つしか取り扱われていません。さらに、漁船は二人用なので選択肢から外れます。なので、私達には客船の選択肢しか残っていないのです」
「その客船にはルートか存在していてね、そのルートを通って船は進むんだ」
漁船と客船、五十年前にもそれはあったけど、個人で所有する自船もあった筈だ。
それが失くなったってことなのか?
という事はつまり――
「そのルートにビストラテア行きが含まれるって事なのか?」
「はい、その通りです」
なるほど……。
まさかそんなに面倒くさい事になってるとは思わなかったな。
それじゃあビストラテアに行かないと、炭鉱族の国へは行けないって事なのか。
「……オーケイ、そこまではわかった。でも、アザレアは何か言いたい事あるみたいだけどどうした?」
おれがそう問いかけると、アザレアは真剣な表情で言葉を発した。
「アンタ知ってるでしょ? アタシの
――ナファセロの住んでた町」
アザレアは少し悲しげに呟く。
彼女の――ナファセロの故郷である町。
そこはビストラテア近くの小さな町だ。




