【Another Episode】 聖王討伐の御布令
炎竜襲撃より十日。
“再誕の勇者”が旅立ってから六日が経った王都では、とある御布令が出されていた。
その御布令は、王都トゥルニカにのみ布告された物であり、他の国には認知されない物であった。
しかし、それでも多くの勇士達が募った。
募った人数は延べ一万。
その殆どが、第一級以上の手練れ冒険者達だ。
王都トゥルニカのテリオル国王陛下が出した御布令の内容は、この国――いや、世界の未来に関わるものであった。
聖王討伐。
それが御布令の内容である。
聖王を討伐した暁には、莫大な財宝と新しい国を与えるという一攫千金の大チャンスを逃さぬべく、こうして多くの勇士達が募ったのだ。
そして、ここ中央広場にて、テリオル国王陛下から正式な説明があるという事で、彼らはこうして募っていた。
「へへっ! 聖王なんざ余裕だっての! 所詮過去の人間だろ? はッ! 余裕余裕!」
ガラの悪い男が、自分の身の丈の二倍ほどはある斧を地面に突き刺しながら話す。
「おうよ! オレ達みたいな第一級パーティなら余裕だな!」
先程の男の周りにいた仲間が得意げに言葉を発した。
中央広場に集まる多くの勇士達が、こういった会話をしているのに対し、ほんの数人は騒がずにただじっとテリオル国王の登場を待った。
「えー……勇士の皆様。大変長らくお待たせ致しました。これより、テリオル国王陛下から詳細をお伝えいただきます」
豪華な鎧を身に纏った騎士の一人が、中央広場全体に聞き渡るよう大声で話す。
その騎士の言葉に、その場に募っていた勇士達は一斉に静かになった。
中央広場を静寂が支配する中、豪華な衣装を着た年配の男が現れる。
「余はテリオル・ド・ダリアヌス・トゥルニカ。この王都トゥルニカの王である! 今回の任。これほどの勇士達が集まってくれたのは大変嬉しく思う」
彼は御年六十五。
しかし、老いてなお、その老いを感じさせないほどのオーラを放っている。
「さて、本題であるが、皆も知っての通り炎竜が攻めてきおった。炎竜は八皇竜の一角――それはつまり、聖王がいよいよ本格的に動き始めたという事になる」
国王陛下の言葉に、大勢の勇士達が小さく頷く。
「これは我が国にとっても、この世界にとっても非常に危険である。故に、聖王は排除しなければなるまい!」
「そうだ!! あんなエセ勇者ぶっ殺しちまえばいい!!」
「俺たちで聖王を倒すんだ!!」
「さあ! 行け、勇士達よ! 聖王を倒した暁には莫大な報酬を与えよう!!」
大きな歓声が、中央広場を覆う。
大勢の勇士達の声が重なり、その歓声は王都全体に響き渡っていた。
国王陛下の説明が終わると、我先に我先にと勇士達が続々と中央広場を飛び出していく。
その中で動かないグループが一つ。
ボロボロのコートを着た男に、まるで人形のように無表情な女。
動かずに、ただじっと立ち止まっていた二人を見た国王陛下は、不審に思い声をかけた。
「お主らは行かぬのか?」
その問いに、男は答える。
「どこに向かえば良いのだろうな」
そう発した言葉は、重く感じられた。
「どこに行けば、わかるのか。どこまで行けば、答えは出るのか。皆目見当がつかぬ」
「……何を言っておるのじゃ?」
「そこに、答えはあるのか?」
男はそう言い残し、ゆっくりと立ち去って行った。
国王陛下は不気味に思いながら、トゥルニカ城へ戻っていく。
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王都トゥルニカを出た男達は、青く澄み渡る空を見上げて立ち止まっていた。
「何故、抗うのか。何故、力があるのか」
ボロボロのコートをたなびかせながら、男は左腕を掲げる。
「その答えは、未だ見つからぬ。その真理は、未だ見えぬ」
太陽の光を手で隠し、男は言葉を発し続ける。
「どこに、力がある。どこに、答えがある。力の真理とは、力の根源とは」
男が発する言葉一つ一つに、重さと別の何かが感じられる。
それが何なのか、男の言葉の意味とは。
それを知る者は、まだ誰も居ない。
「知る必要がある。その答えを。その真理を」
男の瞳は、光を通さない程に黒く、深い深い闇のように真っ黒だった。
三章準備の為、月曜日は休載します。




