間話 兄姉
王都への帰り道、俺達は比較的穏やかな森道を歩いていた。
途中途中休憩を挟みながら進んでいるが、行きよりも全然早く目的地に着きそうな気がする。
それもそのはず。ジオが言うには、俺達はもの凄く遠回りをしてきたらしい。
関所を通って行けば二日か三日ぐらいは早く着けたのに、妖精族でも通らないような険しい道を通って馬鹿じゃないのか、って言われた。
パイルドライバーでもかましてやろうかと思った。
「……ねえ、ちょっと聞いてみたい事があるんだけど」
アザレアが落ち着いた様子で言葉を発する。
俺達は歩みを止め、アザレアの方を向いた。
「とりあえず休憩しながら話さない?」
アザレアの提案で、俺達は近場の岩陰で休憩をとることにした。
「それで? 聞いてみたい事ってなんだ?」
俺は胡坐をかきながら、アザレアに問いかける。
アザレアは、俺とセレーネを交互に見て、質問を投げてきた。
「アンタ達ってどういう関係なの?」
「はぶっ!?」
その質問にセレーネは、飲んでいた水を危うく吐き出しかける。
「どういった関係って聞かれてもなあ……普通に仲間なんだけど」
「は、はい。私も同じ気持ちです。いえ、私がアル様を仲間だと思うのは失礼だとは思いますが……」
セレーネは口元を布で隠し、俺との関係性を話す。
「だからセレーネ。そうやって自分を下に見るのは止めろって。そっちの方が俺に失礼だぞー」
こんなに尊敬してくれてるのは嬉しいんだけど、俺としては仲間として接してほしい。
「ふーん。じゃあ、お互いの事どう思ってるわけ?」
「あ、それは僕も聞きたいなぁ!」
俺達の答えを聞いたアザレアは、さらに問いかける。
その問いに興味津々そうに食いついたのは、いかにも怪しげに笑うジオ。
今一番ムカつくものは何かと聞かれたら、ジオのドヤ顔交じりの笑みだって即答できる。
お互いをどう思ってるか、か。
正直あんまり考えもしなかったな。
戦いから帰って来た時にセレーネと話したけど、恋とか愛とかいう感情はなかったな。
そもそも恋だの愛だのってわからないんだけど。
「そうだな……。強いて言うなら、姉みたいな?」
「……姉?」
「そう、姉」
俺の答えが予想外だったのか、アザレアとジオは目を丸くする。
「何て言うか、しっかり者のお姉さんみたいな。そんな感じだな」
「あ……そう。セレーネは?」
なんだその興味ないですみたいな返事。
そんなに俺の答えが気にくわなかったのか? 今すぐにお前の恥ずかしいエピソードでも暴露してやろうか?
「私は……兄のような存在だと思っています」
「……こっちは兄か」
「上手く言えないのですが、傍にいるだけで安心できると言いますか、引っ張ってくれるところが兄らしいな……兄がいたらこのような感じなのかな、と」
頬を薄く紅色に染めながら、セレーネは言った。
「お互いがお互いを上に見てるなんて可笑しな話だね」
ジオは苦笑しながら俺とセレーネを見比べる。
まさかお互いが兄と姉って思ってるなんてな。
でも、なんとなくわかるな。
俺だって、セレーネが傍にいると落ち着くし、姉がいたらこんな感じなんだろうなって思った時もあるし。
「兄と姉の兄弟だったらなんて言うのかしらね?」
「まあ、普通に兄姉じゃないかな? 一応、兄と姉って意味だしね」
兄姉か。
初めて聞く言葉だけど、なんか良い響きだな。
「これから『兄姉アルヴェリオ』と『兄姉セレーネ』って名乗ってみたらどうだい?」
「いや、それはなんか嫌だ」
「……確かに嫌ですね」
「うわ凄い不評」
兄と姉。
こんな風な関係がいつまでも続けば良いなと願いながら、俺は立ち上がる。
「よし、じゃあ行こうぜ」
俺達は王都に向けて再び歩き出した。




