ゴブリンキングの鳴動 その5
用事で村の外に出ていた村人の一人が息もたえだえ帰ってきた。
なんでも、村の外では大変なことになっているという?
猪やらブタ顔のモンスターであふれかえっていてそれが人を襲っているらしく。
農作物の取引に村を出たところで襲われて荷馬車ごともっていかれたらしい・・・
命があっただけでも儲けものってほどの襲われ方だったって言う。
村人達は戦々恐々だ。
南へ逃げようという・・・
家畜たちや畑を捨てて・・・
いいのか?
逃げるのか??
『でもにぇ?』逃げ切れるんだべか?
『そんなことは分からんが~ここに残ればみんな殺されてしまうぞ~』
『だにぇ~』
でも、わっしがいたら動物つれて逃げれね~けど、だいじょうぶかね~?
『馬や牛を連れて逃げれないのがつらいな・・・』
『でも、あいつの力を借りるんなら・・・しかたなかんべ』
と、一斉にわっしを見た。
そうなんだ。
ちょっとまえに、王様からドラゴン退治してくれって頼まれて。
わっしみて逃げない動物なんか初めてでうれしくてつい触ったら・・・・
物凄い悲鳴上げてドラゴンが許して~とか泣き叫んだんで逃がしてやった・・・
そんだども王様から何故かドラゴンスレイヤーっちゅう称号いただいちまってなぁ~
んでまぁ。
動物嫌い(正確には動物嫌われだけどね)って言う力があるとかで、農家に戻っても鶏すら飼えない有様なんだよね~
農夫でありながらドラゴンスレイヤーな、わっしの力で村から逃げるには徒歩しかないというわけだぁ~
仕方ないから準備できたらいくべとなったわけよ。
村から出てちょっとすると・・・
あちこち草むらからでも、道の向こうのほうでも・・・
『うわぁ!!』
とか
『うひ~!!』
とか
とにかく悲鳴上げながら逃げ出す奴等がいる。
わっしの能力が発動してる為か魔獣の類も襲ってこないしネズミや鳥も群れで移動するのを良く見る・・・
『な~んもしてね~んだけどね~?』
『うわぁ!!ごめんなさいぃぃぃぃ!!!!』
とか、やけに近くにいたんだね~でっかい何かが木々をなぎ倒しながら逃げていった。
何日も歩くと魔物に襲われた町や城があちこちにあった・・・
わっしらもこういう目にあうところだなんて考えたら、急に震えが来た。
そんなこんなでさらに数日進んでいくと巨大な6本足で4本腕の金属で出来た巨人がここから見ても湯気を上げて動かなくなっている。
魔道甲冑兵とかいうものらしい。
魔法使い達が冷却の魔法をかけたり、どこからもってくるのか水をかけたりしている。
そのたんびにじゅわ~じょわ~と派手な音を立てている魔道甲冑兵。
かなり無理して戦ってくれたんだべなぁ~。
そんなわっしらに気がつき驚きながら魔法王国の兵隊さんが
『ここは戦場でついさっきまで激戦地だった場所です。危険ですので早急の非難を望みます。』
とかいっておった。
『ここもモンスターに襲われたんかにぇ~?』
『もっと南にいかね~といけんかにぇ~?』
などと話しながら南に向う。
こころもとない食料をみながら。
どこまでにげれるだろか~?
とか思ってさらに数日。
鉄の塊かと思えるようなカッコをしたわっしの胸ぐらいの位置に頭があるドワーフっていうんだろかが、数人の同じようなカッコをした奴等と一緒に座っていた。
『お?人間の農夫じゃないか?なに?北から来たって???』
『おいおい、こいつ等北から来たってよ~』
『よく無事でこれたもんだ。』
黒い鉄の塊のようなドワーフの中で少し偉そうな奴が
『北か・・・まさか?この中に農夫でありながらドラゴンスレイヤーの称号をもった者がいるとか?まさか!そうなのか?そうか、わし等はこの奇跡に感謝しよう。』
そう言って。
わしの前に跪きなおり。
『連戦が続いて部下共々疲弊しておった。急にオークどもが逃げ散ったのでどうしたのかと思っていたところだ。おかげで部下達を休ませることが出来る感謝する。』
『ん~。感謝はいらね~んだけどにぇ~。食い物分けてくれんじゃろか?』
『もちろん。そちらの要望を聞こう。わしらに急速と体制の組みなおす時間をくれた恩人に何もしないなどと言うことがあればドワーフが廃るというものだ。』
と言って、暫くここで休ませてもらった後。
名残惜しそうにドワーフ達に見送ってもらいながら南への移動を再開する。
『あの人たちまたオークとやらと戦うんだろか?』
『んだなぁ~』
などといいつつ。
移動する。
そんなこんなしていると。
城が立ち並ぶ場所に来た。
赤い鳥かごのようなものがあちこちにあり。
『さわっちゃなんね~ど~』とか言いながら静かに通過する。
多分魔神達が住んでる場所だろう。
こわい~。
暫くして、森に入り。
森を抜けると。
物凄く立派な城が建ってる。
さっきの魔神の城よりもすっごい城だ~。
でも、魔神かも知れんので静かに素通り~。
水も食料も尽きた頃にお屋敷が見えた。
あそこにすがってみよう。
めがねをかけた綺麗な女の人が男の子を追っかけているのが見えた。
ここは平和なのかも?
綺麗な女の人に声をわっしらは声をかけた。
なんでも、お屋敷のメイドとか言ってた。
追っかけられてた男の子を先頭にわっしらはそのメイドとか言う女の人に促されるように、お屋敷に入る。
わしらの逃避行はここで終わった。
ここのお屋敷の人はこの辺の領主さんで、暫く避難民の受け入れをしているらしい。
でも、労働はある程度してもらうってことになった。
たりなくなるであろう食料の生産だ。
もちろん。
わっしら農夫だ。
そんなの朝飯前だ。
動物関係以外なら・・・にぇ。




