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今日も今日とて本を読んでいる。
アレから数ヶ月間、本を読む生活を続けた。
その結果わかったのは、この世界の宗教は少し不思議だということだ。
不思議なことは元々わかっていたが、その理由がなんとなくわかった。
まず最初に、この世界には宗教らしきものが一つしかない。
文明がまともに出来上がる前はアニミズム的な信仰もあったらしいが、基本的には一つの宗教が幅を利かせている。
その名も『カメ信仰』。
カメとは、そのまま亀の意味だ。
どうやら、この世界の下には巨大な亀がいる、と、考えられているらしく、その亀に支えられることによって俺たちは日常生活を送ることができているのだそうな。
元の世界でもそういうのを見たことがある気がする。
世界の端っこが滝になっていて、その下に亀がいるというようなイラストを見たことがあるような、ないような。
元の世界は地球だったわけで、世界は丸かったわけだ。
だから、それはあり得なかった。
が、この世界であれば、本当に世界を亀が支えている可能性もある。
カメ信仰は時代とともに姿形を変えてきた。
時にはその亀のオスメスが入れ替わったり、大きさが変わったり、種類が変わったり、そんな感じのことが同じ宗教の中で色々と起こった。
それでも常に信仰されていたのは亀なのだ。
亀がこの世界を支えている、というのは変わらず、その周りの情報だけが変化していった。その結果として、同じ宗教の中で派閥が発生する。
揉めていた時代もあったそうだが、今では全てが統合され、一つの信仰になっている。ということで、お祈りの方法があんなに複雑になっている理由はそれだ。
『色んな派閥の手順を全てやっているから』。だから、あんなに複雑な祈りになっているのだそうな。
カメ信仰を知った俺はかなりワクワクした。
そんな突拍子もないような現実があり得ることにわなわなする。
見てみたいと思った。が、実際問題、そんなのどうやって見に行けばいいのかわからない。ちなみに、まだこの世界の端にある滝の下を見た人物はいないらしい。
どうしても、俺が、それを一番最初に見る人間になりたいと思ってしまう。
そこまで強い思いでもなさそうだが、そういうことを思った。
本を読んでいた俺はそれを閉じる。
そして、少しだけ考える。
どうやったら滝の下に居ると噂されている亀の存在を確かめることができるのだろう。
ユキが考え事をしていると、そこに近付く足音が一つ。
その正体はピュレの足音だった。
彼女は毎日のようにここに通うユキのことを気にかけていた。
だから、時々、読書の邪魔にならないように話しかけていた。図書館にはあまり人も来ないので、それをする余裕もあった。
ピュレはその手にオレンジジュースを持っている。
数時間、同じ体勢で本を読んでいるユキを心配して声をかけた。
という理由を自分の中で作り、話しかける。
「ユキ。オレンジジュースがあるわよ?」
「ありがとうございます」
「あんまりおんなじ体勢じゃ良くないから、立ち上がったりした方がいいわ?」
「そうですね。いやぁ、もうこんなに読んでたんですね」
「読書が好きなのね。その年でそんなに読書ができるなんて、将来有望だね」
「でも、俺は学校にも行ってないですし、そんなに将来が明るいとは思ってないです。もちろん、俺だからできることもあるとは思いますけど」
「学校なんて今からでも間に合うじゃない」
ピュレさんは優しい笑顔でそう言った。
両親が亡くなってしまった以上、もう学校に行く必要はあまりないと思っていた。が、俺はまだ小学生だ。別に、行こうと思えば行けるし、追い付こうと思えば追い付ける。
行くだけ行ってみるか?
親戚に煙たがられるのにももう飽きたし、このまま生きていく訳にもいかない。
どうやって亀を見に行くのかはわからないが、とりあえず学校へ行きながらそれを考えるというのも悪くはないかもしれない。
読書を止めなければいけないのは少し悲しい。
が、それでも、それもこれも全ては明るい未来のためだ。
本を読んでわかった一番の収穫は、結局、人生というのは、どういう行動をしたかによって決まるということだ。何もしてないのに、そこに物語が生まれるわけがない。
動かなければならないなら、動くしかない。
今思うと、両親を亡くしてからの俺は精神的に落ち込んでいた気がする。そして、それは読書によって治ってきているような気がする。
読んでいた本の続きはまた別の機会にすることにした。
俺は学校へ行く準備をしなければならない。
自分のためだけに生きるのには飽きた。
他人のために生きるのも悪くはないはずだ。
それにそろそろ基礎的な勉強も終わっている頃だろう。クラスメイトも多少は大人になっているだろうし、今ならちゃんと学校へ通える気がする。
ユキは学校へ行くことを決めた。
とはいえ、それ以外のことはなんにも決まっていない。
とりあえずそれができるだけの体力は回復した。
後は彼が彼自身の理想に向かって突き進むだけだ。




