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箱庭の異世界  作者: なお。のた。


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4


教会の鐘に向かうためには、屋外に設置してある階段を登る必要がある。

逆に言えばそこに行くだけであれば教会の中に入る必要はない、

それもあって、俺はその中に入ったことがなかった。

両親ともそこまで信心深いタイプではなかったから、無縁の世界だった。


クリーフさんに案内され、俺は教会の中に入る。すると、そこにあったのは、圧巻としか言いようがないほどの天井画だった。

そこには、前の世界と同じように、西洋的な人々が天使や神様のような存在とともに描かれている姿がある。それはどこにも線らしきものがなくて、そこにその世界があるようだった。

本当に筆で描いているのかは怪しい。

この世界には魔法があるから、何か魔法でも使って描かれたものなのかもしれない。



教会の内部はいかにも教会と言ったような内装をしていて、(ゲームの世界に迷いこんでしまったのではないか?)というような錯覚すら感じた。

そんな教会の、列になった席の先にあったのは、カラフルな色が差し込んでくるステンドグラスだった。そこには天使と神様が戯れている姿が描かれていた。

おそらく、これに対して祈りを捧げることになるのだろう。


彼はそれに対して敬意のような感情を抱いていた。

神様を信じている訳でもないのに、そこに神性を見出だしていた。

どうしてもそうならざるを得ない空気がそこには充満していた。

ハッキリと言ってしまえば、精神的にかなり落ち込んでいた彼にそれは刺さった。

(神様のことを信じてしまおうか?)と思えるほどには、それに引き寄せられていた。祈りを捧げることが自分にとって良いことだと思えていた。



「それでは、両手を胸の前で組んでください」

「はい」

「そして、両足をクロスさせ、前傾姿勢を取りながら、頭を上げてください」

「……こ、こうですか?」

「両足をクロスさせる際に、右足が前に出るようにしてください」

「……どうですか?」

「頭が下がってます。上げてください」

「……」

「そうです。そして、その状態が作れたら、右目だけを閉じて、首を右に二回、左に三回振ってください」

「……」

「それが終わったら、その姿勢のまま、神様に対して今日起きてから起こったこと全てを話します。今のその状態に至るまでの全てを話し終えたら、今度は左目だけを閉じて、左に二回、右に三回首を振ってください」

「これで終わりですか?」

「いや、まだです。もう少しです。それが終わったら、今度は上げていた頭を下げ、神様に祈りを捧げます」

「はい」

「そして、祈りを十分に捧げたら、両目を閉じて、エビのように後方へジャンプしましょう。二回です」

“ピョンピョン”

「胸の前に組んでいた両手を上げてください。この時、頭は自然な状態にして大丈夫です」

「まだですか?」

「両手を上げた後に両足を元に戻します」

「……」

「上げた両手を元に戻して、お祈りは終了です。お疲れ様でした」


なんじゃこりゃ。

何か、儀式的なものを終えた俺はひたすらに困惑していた。

さっきまでの気持ちがどこかへと消えていくのを感じる。

神聖さを感じていたはずなのに、それが消えてしまった。

「じゃあ、代わりにどんな感情がやってきたの?」とか聞かれると困るくらいには、心の中はカオスになっていた。


荘厳な雰囲気があるこの場所でふざけてしまっている気にもなる。

が、これはふざけているわけじゃないだろう。

これで何も間違っていないはずだが、罰当たりなことをしてしまっている気にもなった。とにかく心の中はカオスになってしまっていて、何がなんだかよくわからん。



祈りの手順をこなしたユキは、この世界の宗教のことがわからなくなっていた。なので、(そこに乗っかってしまおう)と考えていた思いが消えそうになってしまう。

神様に救いを求めようとしていたのに、それができなくなってしまったのだ。


なんだか教会の鐘に行くことすら良くない気がしてきた。

この狭い世界でここ以外に教会はない。

ということは、ここがカルト的な宗教である可能性はかなり低いとは思うが、どうしても変だと思えてしまって、受け入れがたい。

昔と違ってここでは宗教が生活の近くにある。

それは、正午をここの鐘が告げていることからしても明白だ。


やっぱり世界が狭いと他の価値観や他の宗教に触れることがないからおかしくなりやすいのだろうか。何かキッカケがあって今のコレになっているんだろうけれども、それにしても変な気がした。



「これから、何か困り事があったらまたここに来て、お祈りをしてみてくださいね?これから何か良いことがあったら、それは神様の恩恵かと思われますので」

「そうですか。でも、手順を覚えてないので……」

「それなら、ソレが書かれた冊子を上げます」


シスタークリーフはそう言ってどこかへと消え、また戻ってきた。

もはや拒否権すらないような俺は黙ってそれを受け取り、とりあえずこの場から去ることにした。



ここにも居づらくなってしまったし、学校にでも行ってみようか?よくよく考えると、俺はこの世界のことをあんまり知らないかもしれない。

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