砂の楼閣[後編]
雪はさらに降ってきて、外は少し積もってきた。
しかし、本田と月花の足跡はすぐに雪で隠れてしまった。
太宰府の共産軍の中心部に向けて潜入して程なく、
倉庫群を見つけた本田と月花は手分けして、中をのぞいて回った。
本田「ランチャーを置くならここだと思ったが?」
本田の横で不可視モードを解除した月花も収穫はなかったらしい。
まぁ、手薄な警備のところだから、無いのは当たり前だったか?本田は思案した。
本田「月花、高いところに昇って上から警備の厳なところを見つけてくれ。」
月花『了解。』ヴュゥゥゥン!
不可視モード、月花は素早く階段を登ると辺りを見回した。本田のイヤホンに月花から連絡が入る。
月花『11時方向の建物、警備多数。』
本田も物陰から双眼鏡で確認する。建物の間の狭い範囲からでも数人の人員が配置されている。
本田「月花ついてこい。あの建物の中を確認するぞ。」
本田達が建物に近づいて物陰から様子をうかがっていると、そこに戦車がやってきて、兵士たちは建物のシャッターを開け、中に戦車を格納した。
月花『内部に自走多脚ミサイルランチャー、人民軍の核搭載型です。』
うわー、あったのか。本田は情報がブラフであってほしいと思っていた。
シャッターは開けっ放しになっている。やるなら今しかない。
本田「コイツを仕掛けに行くぞ。」本田は装備していた時限爆弾を持った。
月花『待って下さい。隊長。先に本隊に連絡を。』
そうだった。本田は目の前の獲物に浮き足立っていたかもしれない。コンビはこういう所がいい。
本田は回線を本部の周波数に繋げると、状況を報告した。
本田「本部、本部。」
作戦指揮所『コチラ本部。』通信に若干のノイズがある、雪のせいだろうか?
本田「核搭載型のランチャーを発見した。これから破壊する。」
作戦指揮所がざわついている。
作戦指揮所『掛川だ。無茶はするなよ。幸運を祈る。』
すると、シャッターがしまる。
まずい、通信が傍受されたか?!
警備の兵士が連絡を受け取ってる様子だ。銃を構え始めた。どこからか、増援も到着し警備はツーマンセルの体制となった。死角がない。
月花『私がおとりを。』
本田「だめだ!すぐに制圧される!」
本田達に時間はなかった。どんどん警備の数が増える。
となると、ランチャーの出入り口はそこのシャッターしか無いのだろう。奴に逃げ場はない。
しかし、近づけない。侵入しようにも死角がない。
作戦指揮所に連絡すればまた傍受されるだろう。
本田『どうする?』
その時、9時の方向で爆発が起こった。
本田とっさに西尾達が見つかったのだと判断した。摩耶から緊急の通信が入るが本田はそれを無視した。
取れば傍受される。
本田「今だ。月花ついてこい!」
建物を警備していた兵隊が爆発に浮き足立ち、爆発がした方向に応援に走って行く。その隙に、本田は月花に足場になってもらい。高いところにある小さい採光窓から中に侵入した。
本田『西尾、摩耶。うまく逃げてくれよ。』
本田は戦車のあるハンガーを見たがそこにミサイルランチャーは無かった。
本田「!そんな、今さっきまであったはずだ。」
本田はすぐにそのからくりを理解した。ハンガーの奥がリフトになっている。地下に格納して。一時的に隠すつもりなのだろう。
本田『リフトの他に地下に降りる装置は……?』
その横の扉から巡回の兵士が出てきた。手にはコーヒーカップ。どこぞの階に続く階段があると見える。
本田は空マガジンを投げ兵士達の注意をそちらに向けさせると、スルリとその扉の中に入った中は右が地下へ、左は2階へ、続く階段になっていた。
ビンゴ。本田は素早く地下に降りていった。そのころには外で、銃撃戦の音は止んでいた。
本田『月花に、アイツラに合流して逃げるように指示を出した。問題ないさ。』
本田は地下の扉を開けた。
地下区画は広い空間になっていて警備は居なかったが、多脚ミサイルランチャーは機動状態で待機していた。
これから、ミサイルを搭載するのだろうランチャー部分は取り外してあった。
やるなら今しかない。多脚ミサイルランチャーには生体センサーが内蔵されていた本田はすぐに多脚ミサイルランチャーのAIに補足された。ランチャーの電子音声が地下空間にこだまする。
ランチャー『警告。本機へのア○セスには、●●が必要○○。直ちに、××して下さい。』
人民軍製のAI言語を日本語に置き換えたせいか、翻訳できてない所が若干あるが、つまりこういうことだろう。
俺に近づつな、撃つぞ!
本田『時限式爆雷効いてくれよ。俺も重火器を持ってくるべきだったかな?』
本田は西尾の重武装を思い出した。
そうこうしていると、多脚ミサイルランチャーは臨戦態勢をとった。本田はチャフとスモークグレネードを投げて。グレネードの起動、爆発と同時に物陰から多脚ミサイルランチャーの下に走った。
本田「今!」
多脚ミサイルランチャーも標準を本田に合わせようとするがチャフの影響で思うように定まらないのか、当たらない射撃をした。大口径の徹甲榴弾は至近弾でもただでは済まない。
ブゥゥゥン!
体の直ぐ側を徹甲榴弾がかすめ、コンバットスーツが破損する。生身だったらそのままお陀仏だ。
本田『っ!生きた心地がしねえ!』
やっとの思いで多脚ミサイルランチャーの懐に潜り込むと同時に時限式爆雷を装甲の薄い箇所に設置し、
機関砲が向いてない方向に飛び出し、起爆する。爆風で本田は壁に激突した。
多脚ミサイルランチャーは破壊した。しかし、今の騒ぎで、警備が駆けつけるだろう。切り札を失った部隊が、
その切り札を破壊した人間をどうするかは本田は知っていた。
壁にもたれて最後の一服をする。
本田「禁煙パイプじゃなきゃよかったな。」
外が騒がしい、誰かが建物の外で戦っている。
本田「……なんだ?」
非常階段の扉が開く、月花だ。片手に血のついた刀を持っている。
月花『隊長!早く!』
本田は駆け寄った。
本田「お前どうして。」
月花『話は後でしましょう!』
本田達は一階のハンガーに向かった。
西尾「お、きたぜ!」
摩耶「隊長!」そこには、兵員輸送車を盾にハンガー内で応戦する西尾と摩耶の姿があった。
本田達を回収すると兵員輸送車はハンガーを飛び出し、猛スピードで離脱した。逃走中、RPGが飛んできたが月花がスナイプして撃ち落とした。
月花『やりました!作戦領域を離脱!引き続き、第一戦速。』
西尾「救出作戦成功だぜ!」
摩耶「隊長、よかったね!」
本田は仲間が無事だったことと自分が助かったと知って安堵し涙した。
本田「俺はいい部下に恵まれたなぁ。」
本田達を乗せた兵員輸送車は雪の降りしきる暗闇に消えていった。




