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黄金の大地  作者: k0uk1s1n
20/22

砂の楼閣[中編]

掛川「鹿児島から辞令が届いた。」

都城駐屯地の隊長クラスが全員食堂に集められた。

ここなら、席を準備する手間が省ける、ということは一刻も急いでいるということだろう。隊長達は掛川少将の次の言葉を待った。

掛川「現在、自衛隊の本隊は下関海峡を挟んで共産軍と睨み合っている。」

隊長「何故?踏み込めばいいじゃないですか。」

掛川「みんなそう疑問に感じてるだろう。だが、共産軍が核を保有してる。と、言ったら踏み込むか?」

食堂はざわついた。いよいよ本題だ。本田は身構えた。

掛川「我々は囮部隊を編成し、東から共産軍が拠点にしている大宰府に当たる。潜入部隊は時間差で西から浸透する。目標は核の真偽の確認。あった場合は破壊せよと言われている。」

そこへ食堂にヅカヅカ入ってくる一団があった。先頭の金髪の美女が啖呵を切る。

本田「マリア?独立傭兵がなぜココに?」

マリア「金の匂いがするねぇ!あたしらも混ぜな!」

玉「止めたんですけど……」

独立傭兵達の後から玉が申し訳無さそうに続いて入ってくる。

掛川「独立傭兵。今は1人でも人員がほしい。後払いになるがやってくれるか?」

マリア「成果報酬型でよろしく!囮部隊はあたしらがやってやるよ!」マリアは染めた金髪を振りながら掛川にも臆せず応えていた。その勇ましさに鼓舞され、萎縮していた隊長達も多くが囮部隊に志願した。

掛川「本田……。」

本田「我が隊は潜入部隊に志願します!」

ソレを聞いて、掛川は力強く頷いた。反対に玉は何かいいたそうにしてうつむいてしまった。

掛川「頼むぞ。みんな、生きて帰れ!」


鹿児島との通信がまた遮断された。

その報をハンガーで聞かされる。また、スタンドアローンだ。通信ケーブルが物理的に切断されたのだろう。

摩耶「WiFiもだめらしいよ。」

本田達は兵員輸送車にせわしなく、物資、時限式爆雷、火器を運び入れていた。その横で整備員達も予備弾倉に弾をこめる作業に駆り出されていた。

本田「今から、連絡を回復させる時間はないぞ。」

西尾「警備ロボットだけじゃだめだよなぁ。」

重火器を兵員輸送車に満載にしている西尾が愚痴を漏らす。囮部隊じゃないぞ?潜入ミッションに大口径の火器が必要な場面が想像つかないが、念には念を、ということらしい。本田も自分のスナイパーライフルを兵員輸送車に乗せる。

本田「摩耶、あれも持っていけよ。」

本田はあるものがないことに気がついた。あれはたぶん必要になる。

摩耶「?和弓のこと?」

本田「スニーキングは消音が基本だからな。」

摩耶「分かった!とってくるよ。」

あ!兵員輸送車からでた摩耶は立ち止まって、ハンガーでは見ない顔に驚いた。人の出入り口に玉が立っていた。心配そうにおどおどしている。

西尾「……隊長。まだ時間はあるぜ。」

本田「玉。」本田は兵員輸送車から顔を出す。

玉は本田を見つけると、ようやく顔がほころんだ。

玉「あの……」

本田「玉、外で話そう。」そう言うと、本田は玉の手を取ってハンガー、そして駐屯地を出た。


本田と玉の二人は駐屯地が見える場所まで移動した。そこは夏祭りで来たところだ。季節は代わり、閑散としてさみしい。

玉は意を決して本田に向き直った。今、ためていた思いを打ち明ける。

玉「私、他の人でも試したんです。晃一さんみたいに食べてるものの味が分かるのか。」

どうだったんだろう。本田は嫉妬にも似た好奇心が湧いた。

玉「そしたらだめだったんです。一緒に味わえるのはアナタだけでした。」

本田「そうなんだ。」内心ホッとする。自分は彼女にとって特別な存在、ソレよりももっと特別でありたいし、もっと特別になりたい。

玉「帰ったら……もし帰ってきたら、また一緒に食べましょう。晃一さん。そうでなくても、きっと、私にはアナタが必要だ。」

本田「バカだなぁ、きっと帰ってくるよ。」

二人は抱き合った。そして、長いキスをして、本田は先に駐屯地へ戻った。


摩耶「隊長、もういいのかい?」

摩耶は和弓を抱えている。

本田は兵員輸送車に入っていつもの場所にすわった、上部ハッチの真下だ。本田は禁煙パイプをくわえた。

本田「行こうぜ。本田隊、出発する。」

カチ!カチ!

西尾「お前ソレ火打ち石じゃねぇか?」

摩耶「通販であったんだー。衝動買いしちゃった。こういう時に使うんでしょ?」

本田「行くお前がやるもんじゃないんじゃないの?」

あれ?摩耶はとぼけた声を出した。コイツは隊になくてはならないムードメーカーだ。本田達は笑い合った。


16:00作戦開始

大宰府は高度に基地化されていた。核を置くならここだろうか?

本田「始まったな。」

遠くで、銃撃音、爆発音が聞こえ始める。

西尾「俺もあっちが良かったなぁ。フルオートで撃ってもどやされる心配はなさそうだ。ない?」

そうそう羨ましいもんでもないだろう。下関海峡に陣取ってる共産軍から増援が来るかもしれない。最悪、挟み撃ちに遭うか、退路を断たれる。危険な任務だ。

本田「こちらもいくぞ。月花、不可視モードで潜入をサポートしてくれ。」

月花『了解です。』ヴュゥゥゥン

夕日を背にして潜入。コレなら相手はコチラに気づきにくかろう。

囮部隊が敵を引きつけている。西側の人員は少ない。

摩耶の和弓、本田のスナイプ、月花の投げナイフで順調に敵を排除していく。

本田「みんな集まれ。」

本田は静かな閉所に部下を集めた。ここならしばらく巡回は来ない。と思う。

核とはどんなものだろう?ミサイルならミサイルサイロや自走ミサイルランチャー毎破壊すればいい。最悪、ランチャー部分の破壊だけでも無力化できる。極力、被爆はしたくない。

本田「ここからは、ツーマンセルで行く、西尾と摩耶、俺と月花だ。」

西尾&摩耶「「了解。」」

月花『了解。』

囮部隊が撤退を始めたのか、銃撃戦の音が下火になる。

静けさと闇が降りてくる。寒空に雪が舞い始める。

本田「生きてここから帰ろう。」


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