【79】ラスボス
ここに来てフラグ回収が激しくなってきます。
今回のバックにあるお話は【S12】です。
「―――ホカリ・セイタ?」
記憶の片隅にあった記憶が、
なるべく忘れようと現実逃避していた記憶が、
鮮明に蘇る。そこから浮上したのは、1人の
男性の顔と名前。
中性的な顔立ちに、『憤怒』の感情を
滲ませた、鬼のような形相――。その
人間の正体は、明らかに日本人であり。
――そして、『南の賢者』曰く。私と
時を同じくしてこの世界に来た
転生者だという。
「実はその人が、私の彼氏だった人なの」
昔を思い出すように目を伏せた賢者の
声音は明るい。なのに、
開かれた双眸に宿る光は、
物憂げに薄暗かった。
「――私たちは人間じゃない。転生して、それを知って、
すぐさま彼に会いたくなった。彼に、助けてもらい
たくなってしまった。だから頼んだの、セイタに」
キサラギ・ショウコは――いや、如月翔子は語る。
己が『南の賢者』となった、その所以を。
「転生して、この世界で功績を立てて『賢者』の跡継ぎに
なった私はロウム・クロノウェルの元を訪れて、継承の
儀式を行った。そして見た夢は――私とセイタが、
文字通り身も心も繋がれる未来だった」
ロウムさんは、あのとき言っていた。
継承の儀式でみる夢は、今後に
起こる未来を暗示したものであると。
それは災厄の兆しであったり、幸福の
予兆であったりと形は様々らしい。
ショウコさんが見たのはきっと、
大好きな彼とともにいる、
幸せな夢だったのだろう。
「そして、それは後に現実になった。
私の権能、《幻想の彼方》によって」
――話を聞くと、彼女の能力の発端は私と
同じ『想像力』から派生するモノらしい。
『泥人形』をどうやって仕留めたのかは、
未だに不明ではあるが。
「これ以上ないくらい、幸せだった。ずっと
会いたかったセイタに合うことができたの。
権能のおかげで、私の想像力のおかげで」
幸せ「だった」と過去形を用いる彼女の
声音が――暗く、鈍色に変色していく。
「そして、私はセイタに呪いをかけてし
まった。この世界に転生される呪いを、
彼が『不遇の勇者』になってしまう、
私の、身勝手な、呪いを……――」
――彼女の権能をひどく簡単に言ってしまえば、
『想像した世界に自分の思惑を干渉させる能力』
人間でなくなった彼女が
手に入れた――人外の力。
『人形』になった彼女が、
『想像』した胡蝶の夢。
あの時――。
『想像を止めないこと。自由を貫くこと。そうすれば、自ずと道は開けてくる。
あなたは不遇の勇者なんかじゃない――来るべくして転生された、本物の勇者さま。
いかなる時も想像を止めないで。残された時間でもっとあたしを理解して。そして』
『あたしを、救い出して』
私はあなたに、勇者に――『主人公』になる呪いをかけた。
「――そして、セイタはこの世界に
転生された。『西の勇者』になる
運命を背負って……――そして」
「私を殺す命運を背負って……?」
こくりと、
声を出さずに頷くショウコさん。
「ごめんなさいイズミさん。私は
あなたに、故郷の日本での有益な
お話はできない。でもせめて、
敵の情報だけは教えられるわ」
声のボリュームを少し抑えて、
彼女は言った。
「あなたの敵は『西の勇者』ホカリ・セイタ。
日本に、故郷に帰りたいのなら……彼を――」
「――賢者さま」
ショウコさんが最後まで言葉を紡ぐ前に、
扉をノックした使役精霊――ノイリーに
それは遮られた。
「会議室の準備が整いました。
ご登壇の準備をお願いします」
「……分かったわ」
席を立って扉まで歩いて行く
彼女の背をじーっと追っていると、
やがてショウコさんは振り向いて。
「また、後でね」
キャラたちの動きは少ないですが、
物語は進展していくますんで
ご心配なく(^^)/




