34話 警告
「あん?」
ポカンと言う顔をされる。
その間のせいで、自分自身、何を言っているんだと正気に戻りそうになったが、本能的にその理性を抑え込んだ。
「付き合って欲しい」
「は」
空見が目を丸くして口から声を発する。
彼女としては珍しく声色こわいろに力がない。
「は、ははは何言ってるのさ。ああ、彼女のフリって事?本気にすんなや坊主」
「違うよ」
きっと僕はまた感情的になってる。
お昼に山田さんと言い合った名残りが、脳内に残っているんだろう。
「フリとかじゃなくて、僕が空見の事が好きなんだ。だから付き合って欲しい」
もしかしたら、この告白がきっかけで彼女と気まずくなり、
もう部活に来れなくなるかもしれない。
言った後そんなネガティブな思考が浮かんできた。
でも良いんだ。
もう告白してしまった今、理性的になり自分にブレーキをかけ躊躇ってしまうなんて、余りに格好悪すぎる。
当の彼女は丸くしていた瞳を、キッと強めて僕のことを睨む。
「本気?」
「うん」
「ふーん・・・・鼻垂はなたれ坊主の癖にわがままな奴」
空見は嫌がっているというより、戸惑い、困っているように見えた。
その表情で、断られてしまうのではないかと察したし、きっと困らせているのだろうと弱気になりそうになったが、ここで後ろ向きになったら意味がない。
「うん、自分の言う事に責任は持つつもりだよ。断れても良いんだ」
まっすぐ見て言う。普段だったら絶対に言えない。
でも彼女の強さに触れて、どんどん惹かれて、今日助けられた。
そう自覚している今の僕は恥も外聞もない。
空見は少し頬が赤くなり目をそらす。
とても珍しい、女の子らしい仕草に可愛らしいと思った。
「馬鹿じゃん」
空見が目を逸らしながら小さくつぶやく。
「はは、そうかも、きっとそうだ」
「後悔するわよ、きっと」
「良いよ。それでも」
「わかってないわねアンタ」
キッとにらまれながら言う。
ただいつものような力強さはなかった。
「確かにわかってないかもしれないけど、もし後悔するような事が起こったら、その時どうやって解決するか考えるよ」
「アンタに何ができるのよ・・・あと後悔しても良いって、失礼だからね言っておくけど」
空見がいう後悔って何の事を言っているんだ。
慶太君のことだろうか。
確かに僕は彼と仲良くないからな。
「・・・・・はー。私はわがままだから、アンタを不幸にするし、きっと良い結果は産まない」
「わがままなのは知ってる」
「失礼な男ね。私に告ってる癖に」
いつもよりは、ずいぶん弱い瞳で睨まれた。
「気分を悪くしたらごめんよ」
「気分悪いわけじゃない。でも・・・」
何を戸惑っているんだ。
微妙に会話が噛み合っていない気がする。
彼女らしくもない。
「らしくないじゃん。空見は自分の事は自分できめるんでしょ」
「・・・・それは」
「決めてよ、僕と付き合うか付き合わないか」
「生意気言ってんじゃないわよ。半人前にも満たないミジンコの癖に」
「生意気なのは承知してるよ。でも気がついたんだ」
「何が?」
「僕が書道部に来ると楽しいのは、空見に会えるからだって」
「ふん。女目的って事かい。不純ね」
「うん、そうなる、かも」
空見は数秒、いや数十病俯いて考えた後にこちらを見る。
「私は警告したから」
そうして僕たちは晴れて恋人同士になった。
この出来事が後程、何を招くきっかけになるか。
今は知るよしもなかった。




