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0,4話 戦略

「チャンスという奴だな!」


思わずため息が出る。


「ユキちゃんも懲り無いわね」


久々にユキちゃんが部活に来たと思ったらこの話。

最近ユキちゃんは身体が悪いとかで、部活は来たり来なかったりだが、その間に色々情報収集していたそう。


話によるとユキちゃんの想い人である男が、最近、幼馴染の女と険悪になりクラスで嫌われだして孤立しているらしい。


なるほど、なので以前慶太に聞いたらあの反応なのね。

どんな嫌われ方したらああいう反応になるのよ。


「クラスで孤独になった先輩は心が病んでいくはず。そこを優しさで包み込めば、先輩も私にベタ惚れになるという事だな。」


「ベタ惚れねぇ」


こんな単語を現実で使う人がいるんだ、と思いながら話を聞く。


「何で嫌われだしたのさ」


「興味があるのか夏希ちゃん。てっきり私の話にうんざりして聞き流している物かと思った。だから最近この話をするのは控えていたんだが、うん。私にしては空気を読んでいたつもりだったんだよ、興味を持ってくれていると言う事なら、私としても喜ばしいし、その話題で話を膨らませるのはやぶさかではない」


空気を読むねぇ。

私は空気を感じる事はできても、無理をして読む事はしない。

別にあえて空気を読まない発言をする訳ではないけど、自分を抑え込む必要は今のところ必要性を感じていないから。


もしかしたら感じられない空気もあるかもしれないけど、多分ユキちゃんは私が感じる空気すら感じられないのだろう。


それがユキちゃんを気に入ってる理由の一つだけど。

だからこそ私も気を遣わなくて良いと言う心持ちが担保されている関係性。


「早く言いなさいよ」


言いながら書き終わった。

む、中々良い出来ね。


変に一人で集中し過ぎるより、誰かと会話しながら無意識で書くと良い作品が書き上がる事があるのはリラックスしているからなのか、修行が足り無いからなのか。


「うん、ふふ。全ては言えない。ただ私の努力が実った。とだけ言っておこう。ずっと邪魔だったから清々した!あの幼馴染はな。私の理想は先輩の友好関係が全て絶たれる事なんだ。他人なんて私たちの障害にしかならない。特に私は人付き合いが苦手だし、嫌われている節も自覚もあるから、他人から先輩が私の悪口を聞いて、私に対して悪印象を持ったら最悪だ。だが人間は孤独では生きていけない。そこで先輩を孤独にして私に依存させるよう持っていくという所だな」


「努力?・・・・ユキちゃんの戦略であの男は嫌われたって事かい」


「ああ!」


胸を張って快活に返事をされる。

相変わらず性格が根っから悪すぎやな。


「引いたか?そんな事ないだろう?みんなだって同じ事するはずだ。同じベクトルの行動を。ただ私が異常に見えるなら、少し執念深くて実行力があるだけだと思う。目的達成のために不幸が伴うのは、私だってなるべく避けたいのは本当なんだ。先輩が私にそういう手札を切らせたフェーズまで持って行かせたのがそもそもの原因だ。先輩が早く私の物になればこんな事にはならなかった。だから誰にも今回の責任はない。そうだろ?弱肉強食。各々の利害のために動いた結果なんだから」


「ははは」


思わず笑ってしまった。

やはりこの子はおかしいし狂っている。


にしてもこの子といるとリラックスできるのは、私もおかしいからなのだろうか。

別に誰に何と思われても私が良ければそれで良いが。


「笑ってくれるか!やはり夏希ちゃんは私の親友だな!」


「親友。そうかもねぇ」


あの男も厄介な女に好かれたわね。

御愁傷様としか言えない。



良い字が書けた。

今日は調子が良い気がする。



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