第3話 『気がつけば深い森』
さて、私は一体どこにいるでしょう。
鬱蒼と茂る針葉樹と広葉樹。草木の見た目、生態系は地球に似ている。
テレビで見たアマゾンの密林、という感じか。気温は暖かく、湿度が高い。
風の匂いは湿り気を帯び、熱気がまとわりつく。土の香りがする。緑の匂いが強すぎで、シダを噛んでいるような錯覚を覚えるほど。
まあ、間違いなく森ですわな。・・・・ここは。
さっきまでの白い空間が一転、緑の木陰でしゃがみこんでいた。
木陰で薄暗いが、木々の隙間から青空が見える。時間は、昼間なのは間違いない。
ゲコゲコとか、カサカサとか、何かが動く音があちらこちらから聞こえる。
風が吹くと、木が揺れる。空は見えるが、茂った木々で日差しは当たらない。
女神は言った。水の都の司祭に会え、とか。
水の都とか、どこにあんだよ? ・・・てか、ここは何処だ?
女神が最後に言った言葉、魔王の干渉・・・。
まあ、要するに、目的地に飛ばそうとしたら、邪魔されて違うところへ辿り着いた、ってとこか。
俺、今、落ち着いてるふりしてるけど、内心、めっちゃビビってます。
だって、裸だよ・・・。
まだ生まれたママの姿なんだよ・・・。パパだけど。
と、しょうもないことはさて置いて、まずは状況確認。
森の中で裸。視界悪し。
・・・・・・・状況悪すぎ。
ガサガサと音がする。殺気を感じ、背中がゾッとした。
待てよ! ちょ、まてよ!
女神が言ってたよね、・・・生物凶暴って。
俺、丸腰だよ!!!!
やべえ!!!!
異世界全裸丸腰って、なかなかハードル高くない? ハードモードなの?
武器になるものはないか? 周りを見渡して、手頃なサイズの木の枝をとりあえず拾う。長さ50センチくらい、ちょっと長い? わからん。剣道の経験とか無いし。
右手と左手に長さの違う棒を持つ。何本か試す。40センチくらいの棒と比べて、振ってみる。長くて取り回しが悪いと、森の中だと木に引っかかるなと思い、最終的に30センチくらいの長さの棒を選んだ。
ガサガサ。音のする方を見て体が固まった。俺、こいつ見たことある!!!
ヴェロキラプトルってやつでしょ、映画で見た! ジュラシックで見たyo !!
1メートル20センチくらいの2足歩行のトカゲ!
草むらから顔を出す恐竜と目があった。縦長の瞳が俺のことを不思議そうに見ている。
でも、よく見れば、地球のヤツとはちょっと違う!
前足が鎌ですわ。刃渡り30センチほどの一本鎌。カマイタチではなく、カマトカゲ!
「のわー!!!!」
俺は奇声をあげて、脱兎のごとく逃げ出した。まずい、声を出すんじゃなかったか!!!
やばい!!!!
木の枝で勝てる相手ではない。
脱兎の如く逃げる!!!!
森の下草を飛び、太い幹をさけ、蔓草をかわしながら、爆走する。
しばらく走って気がついた。自分でも驚くほど体が軽い。パルクールばりの動きができる。走り、跳び、思うがままに体が動く。森の中を冷静に障害物を避けながら走っていく。
木々をすり抜けながら、ちらりと振り返ると、猛烈な勢いでトカゲが付いてきている!!!
1匹かと思ったら、離れたところにもう一体。横に気配を感じてそちらを見ればもう1体。右かと思えば、左にも気配。ざけんな、4体が囲んでたのかよ。逃げて正解。
距離は幸い縮まることなくなんとか逃げ続けている。不思議なことに、疲れない。これが女神の祝福か。
しばらくすると、森の木々が途切れる気配がした。前面が明るい。
俺は、そこへ一直線に向かう。
森を抜けたら、青空が見えた。
俺は唖然とした。
眼下に広がる海。
そう、そこは断崖絶壁。海へ張り出した崖だった。目を見開いて、急ブレーキ! 落ちたら死ぬ!
止まれ! 止まれ! 足を踏ん張って崖ギリギリで止まった。海までの高さ30メートル。打ち所が悪いと死ねる高さ。
シュン--
風の音がして、本能的にしゃがむ。
髪の毛を素通りして、鎌が通り過ぎた。脇腹を鎌が掠る。薄く血が滲む。
3匹が連携して襲ってくる。1匹は離れて観察。狩り慣れている。
振り返り、迫ってくるトカゲの位置を把握。俺は崖側に追い詰められている。
眼下の海。迷っている暇はない。
ーー 飛び込むしかない!ーー
瞬時に判断!!!
白波は岩があるから避ける。海の黒いところ。
深くなっているところ探す。
そこを見つけて踏み込んだ。
トカゲが俺を取り囲み、鎌で攻撃を仕掛けてくる。
首をよじって鎌を避け、崖のへりを蹴る。躊躇すれば殺される。
崖の淵に足をかけ、思い切り蹴った。
体が崖を飛び出し、背中から海へ落下していく。
周りがスローモーションになる。
トカゲどもは悔しそうにこちらを見つめるだけ。ザマアミロ。
体をよじって水面を見る。 もう眼前に海面があった。
激しい痛みと共に鼻に海水が入ってくる。
地球の海と違って、ちょっと出汁が効いてる感じがした。
が、味を噛み締めている場合では無かった。体はまだ海中深くに沈んでいる。
白い泡をかき分けて、なんとか水面に上がった。
周囲を見渡す。波が強い。
崖が目の前にあり、海を見る。海も安全とは言えない。早く陸地に上がらねば。
左手の遠くに浜辺が見える。
背後の沖合いで、ザパーンというものすごい音がした。
慌てて波間から振り向き、沖合を見ると、大きな影が空中に飛び出した。
遠くに巨大なサメのような鎧が水面から飛び出した音だった。鎧のようなサメが正しいのか。
サメは10メートルくらい飛び上がり、そしてさらにでかい音を立てて、海面に沈んだ。
顔が引きつる。海ヤバイ。
死にものぐるいで、砂浜まで200メーターくらい泳いだ。めちゃくちゃ怖かった。多分、世界記録を軽く超えてるくらいに速く泳げた。
慌てて砂浜に倒れこむ。
やべえな異世界。荒い呼吸がなかなか収まらない。
息を切らせながら、周囲を警戒する。危険な気配は今のところ無い。
砂浜はひとまず安全なようだが、砂浜は視界が通る。いつ襲われるか戦々恐々だ。
目立つ場所で休むと危険だから、と周りを見渡す。少し先にお手頃の岩場があった。
精神的疲労で重い体をひきづって岩陰に隠れるように座って一息ついた。
これからどうするか・・・。途方に暮れる。
こんな状況から、マジでなんとかなるのか?
食料とか見つけられるか?
そもそも地球と生態系が違う星で、何食えば良いのか。
食事問題まじヤベエ。
再生してすぐ死ぬとか。女神はアホなのか。
いかん、ボキャブラリーがヤバイに固定されてしまっている。
愚痴が聞こえたのだろうか、異変があった。
空からキーンという音が聞こえた。次の瞬間
!!チュドーン!!
と音がして、砂浜に真っ赤に燃えた隕石が突き刺さった。
「うお! びびったーーー」
慌てて跳びのき、息を整える。
縮こまりながら、覗き込み、恐る恐る近づいてみると、砂浜にできたクレーターの真ん中に白いコンテナがあった。40センチくらいの立方体で、クーラーボックスみたいな見た目をしている。
煙が上がっている。多分、熱いんだろうなあ。
それからやることがなくて、海水を手で汲んではちまちま箱にかけることを繰り返していた。ジュと音がしてしばらくは海水をかけては塩になって、また汲みに行く作業を繰り返した。バケツの代わりになるものを探す考えも浮かんだが、森に行くのが怖すぎる。トカゲ嫌い。
体感時間1時間くらい。もう大丈夫だろうと、箱をツンツンしてみた。うん、熱くない。
箱を持ち上げると、見た目よりは割と重く、持ち上げた瞬間プシューと音がして蓋が少し開いた。ちょっとびびったけど投げ出さずにそっと岩陰まで運んで開いてみる。
箱には手紙が1枚。
本が1冊、それから弁当箱くらいの大きさの鉄の塊。
まず手紙を読んでみた。
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拝啓 鉄男様
どうも女神です。お元気ですか。探すのに苦労しました。苦労したと言っても神なので余裕でしたが。
さて、今の状況に戸惑っていることでしょう。魔王がまさか女神領域まで干渉してくるなんて思ってもいませんでした。女神、驚きです。いよいよ危険な状況です。
さてさて、いま鉄男さんが、あ、文頭は「様」と呼んで今度は「さん」だなんて統一感がないな、とか思わないでくださいね。あ、ごめんなさい。脱線しました、てへぺろ。
今鉄男さんが居るところ、そこは、その世界では 絶望大陸、死の大陸とか呼ばれる人跡未踏の地の端っこですね。そこは2番目の魔王の居城があるところです。干渉の魔力を調べたら2番目の魔王の力を感じました。おそらく鉄男さんの存在に気づいて力を付ける前に城へ呼び寄せ殺すつもりだったのでしょう。幸い私の力と干渉して変なところに落ちたようですね、ある意味ラッキーです。
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・・・・女神よ。こっちは必死なんだよ・・・・。
魔王の支配地域とか・・・さらっと恐ろしいことを言うな女神。続きを読もう。